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サイコな結婚詐欺師は恋に仕事に子育てに今日も忙しい!
サイコな結婚詐欺師は恋に仕事に子育てに今日も忙しい!
専業プウタ
異世界恋愛ロマファン
2025年06月16日
公開日
1.4万字
連載中
リーザ・マラス子爵夫人はマラス子爵の第3夫人で2人の息子がいる31歳。首都に観光に行った時、マラス子爵に見初められ18歳で結婚した。彼を愛している訳ではなく、家の生活を助ける為の結婚。それでも彼が溺愛してくれれば満足できると思っていた。しかし、自分が彼にとって3人に1人の妻ということが気に食わず、自分に夢中な平民の男2人と他の家庭をこっそり持っている。「婚姻届は出そうとしたんだけど、もう結婚しているから出せなかっただけ。子爵は、私以外に2人の妻がいるのだから、私も同じ数だけ夫を持って良いはず」。ある時、旦那である子爵に対してどうしても我慢できないことが勃発し彼への憎しみが生まれる。そんな時、独裁国家だった自国エスパルが、帝国の領土となる。奴隷ではなく帝国民として受け入れて貰えること、能力が認められれば衣食住一流の生活が保証され帝国の首都で住めるとの発表にリーザは夫を捨て帝国の要職試験を受けに行くことを決意する。夫には離婚に応じて貰えず、息子を連れて子爵邸を脱出。リーザは子爵と離婚するために帝国の皇帝に見初められてしまおう作戦をたてる。私はよく未成年と間違えられるくらい若くて可愛い、息子にも良い生活をさせてあげたい。いざ、皇宮へ。

第1話 リーザ、身辺整理をする。

「この間、酒屋の奥さんと長く話し込んでいたでしょ。あなたのことを信じたいけれど、私は私だけを見てくれる人じゃないとダメなの」


精一杯の苦痛の表情と嘘泣き。

どう、こんな面倒な女と結婚生活なんて続けられないでしょ。


さあ、あなたから離婚を言い出すのよ。


「いや、あのオススメの酒を聞いていただけで⋯⋯」

私と9年の結婚生活を続けていると信じているミゲルな眠気まなこをこすりながら言ってくる。

今日、彼は大事な仕事があるのに、私は彼を困らせるため一睡もさせずに彼を責め続けている。


「酒も、女もやめられないのね。私はもういらないのね」

早く離婚を切り出して欲しい。

ミゲルと私は実は結婚をしていない。

なぜなら、私は彼と結婚する前にマラス子爵と結婚し彼の第3夫人となっている。


子供のためにも子爵とは離婚しておきたい。

こちらはしっかりと戸籍上の夫婦になっている。


ミゲルと別れなければならないのは身辺整理をするためだ。

そして、彼から手切れ金と彼自身から別れを切り出したという事実が欲しかった。


独裁国家として他国から危険視され鎖国状態だった我がエスパル王国が先月めでたく帝国領となった。


我々エスパルの人間はみんな水色の髪に、水色の瞳をしている。

その髪色と瞳の色はエスパルの人間特有のもので、見ただけで出身がバレてしまう。


奴隷扱いされるのではと震えがるエスパル国民の不安をよそに、皇帝陛下は私たちを帝国民と同様に扱うことを宣言した。

皇位に就いたばかりのアラン・レオハード皇帝陛下はなかなかの男だ。

この度、帝国の要職を総入れ替えすると発表した。


その試験は私たちエスパル国民にも受験資格があるらしい。

要職につければ、帝国の首都で豪邸を与えられ一流の生活ができるという。


それだけの条件では私は住み慣れたエスパルの地を捨てる覚悟はできなかった。

しかし、家族の教育費まで面倒見てくれると発表されたのだ。


私には12歳になるダンテと10歳になるレオという2人の息子がいる。

2人に最高の教育を受けさせたいという思いと、今の環境が2人の息子にとって必ずしもベストではないということ。

2人の子供の未来のために私は帝国に試験を受けに行くことにしたのだ。

しかし、私は帝国の調査能力というのを甘く見ていない。


この度帝国がなぜ、戦争を起こすこともなくエスパルを手中におさめたかを考えると万全を期すべきだと思った。

鎖国状態にあったエスパル王国だが、独裁者と呼ばれるクリス・エスパルは実は力を持っていない。


それは、国王がコロコロ変わることで国民も薄々気がついていた。

エスパル王国を私物化していたのは王国の宰相であるヴィラン公爵だ。


この度、ヴィラン公爵の数々の悪事が帝国により世界中に明らかにされた。

エスパルの機密情報がなぜ帝国に漏れていたのかもわからなかったが、ヴィラン公爵は断罪された。

そして、情報統制が解かれ自分達の国が他国からいかに危険視されているかを知った。


帝国にとって危険国家と呼ばれるエスパルを手にいれることに得を感じなかった。

それゆえに私たちは震え上がったがアラン・レオハード皇帝の宣言で一気に私たちは歓喜した。


「エスパル王国民は優秀な方が多いと聞いています。帝国をさらなる発展に導くため皆さんの力をお貸しください」

そう、皇帝陛下は私たちを危険視などしていなく期待していると言ってくれたのだ。


(この男、人の心のくすぐり方を知っている⋯⋯)

彼は弱冠12歳の皇帝だが、危険民族と呼ばれる我々を受け入れる器のデカさと恐れを知らない男気がある。

相当な美少年らしいし、12歳にして帝国中の女を抱きつくして世界進出してきたのだろう。


そして、クリス・エスパル国王陛下はエスパルを帝国の統治下に置く条約をアラン・レオハード皇帝と締結。

正直、うん、その方が良いよと思った。


クリス・エスパルは国王の器じゃないんだよ、男気満点アラン皇帝陛下に面倒みてもらうのが良い。


首都に遊びに行った時にマラス子爵に見初められた。

愛のない結婚などしたくなかったが、彼が実家への援助を約束してくれたのだ。


私の家は貧しく体の弱い母の薬も買えないほどだった。

だから、私は彼との結婚を承諾した。

彼から一途に溺愛されれば、私もそのうち彼を愛せると期待した。


その期待はすぐに裏切られた。

私が迎え入れられたのは第3夫人としてだった。

マラス子爵には他に2人の妻がいた。


貴族出身の美人で気が強い第1夫人。

家柄の良い裕福な商人の家を実家とする第2夫人。


彼は調子の良い時は第1夫人といて自分の心を満たし、お金に困ると第2夫人に擦り寄った。

自尊心が満たされない時は、貧乏で平民出身の私の側にきた。


私は程なく妊娠したが、マラス子爵を愛することは難しく彼の血を引く子供を愛せるか不安だった。

しかし、生まれてきたダンテを見た時、私はこの子のためなら死ねると思うほど愛おしいく感じた。


ダンテが2歳になった時、私のお腹にはもうすぐ生まれるレオがいた。

ダンテは生まれてきた時だけはマラス子爵家の跡取りとして丁重にお祝いされた。

第1夫人も第2夫人も娘が2人ずついたが、男の子がいなかった。


法律上は女でも跡取りになれたが、男尊女卑のエスパルでは考えられなかった。

女が当主になった時点で家自体が軽んじられてしまうからだ。


それなのに、ダンテが2歳になる時には何のお祝いもなかった。

実家への援助も1年ほどで、自分に割り当てられたわずかな予算からするように言われた。


「ダンテはあなたの子じゃないのだから、お祝いなんてする必要ないわ」

着飾った第1夫人がマラス子爵にしなだれかかるようにして囁いていた。


「やっぱり、そうなのかな。時期がおかしいんだよな⋯⋯」

マラス子爵が口元に手を当てながら考えている仕草をする。


私は結婚してすぐ妊娠して、ダンテが早産だったため出産時期がおかしいと他2人の妻から嫌味を言われ続けていた。

でも、ダンテは100パーセント子爵の子だ。


「2歳で言葉1つ話さないのよ、下賤な平民の男の種でしょ」

第1夫人のその言葉に、私は咄嗟に柱の影に隠れたが手の震えが止まらなかった。


それでも、ダンテが生まれた時に喜んでくれた子爵の次の言葉を待った。

「そうだよな。俺の子なら賢いはずなんだよ。」


気がつくと大きなお腹を抱えて、首都にある子爵邸を飛び出していた。

エスパルはとても閉鎖的な国だった。


国自体も閉鎖的だが、隣の村に行けば誰も自分を知らない。

その代わり、村全体での結びつきは強く村の中では誰もが自分を知っている。


私は、マラス子爵の元では子供を育てたくなかった。

だからダンテの手を取り、どこか暮らせるところはないかとエスパル中を大きなお腹で彷徨った。

実家に帰ろうと思ったが、心配をかけたくなかった。


実家にとっては私は貴族に見初められ結婚した幸せで可愛い自慢の娘だ。


エスパル中を回ってたどり着いたのは、結婚前に1度だけ両親を連れてきたエスパルのリゾート地だった。

私は結婚前に1度だけ来た時に、ここでジルベールと会った。


ジルベールはつかみどころのない男だった。

私が結婚するというのに、口説いてきた。

まあ、私は可愛くて村中の男が私を好きだったから、彼もつい口説いてしまったのだろう。


両親が部屋で休んでいる間、過去に一度だけ訪れた彼の家をノックした。

「もしかして、リーザか?」

一瞬、驚いた彼だったが部屋に招き入れてくれた。


「実は、親戚の子を連れて旅行に来ていたんだけどお金を盗まれちゃって一晩泊めてくれない?」

咄嗟についた嘘に自分でも驚いた。

ダンテが話さないからと言って言葉を理解してないとは限らない。

親戚の子扱いして傷つけてしまったらどうしようと動揺した。


「もちろんだよ。会いたかったよ。リーザ!」

ここ2日ほとんど何も食べず彷徨ってしまっていた。


ダンテとお腹の子をお腹いっぱいにする必要もあるし、しっかりと休ませなければならない。

ジルベールが私のお腹を見つめているのが分かった。


「最近太っちゃって⋯⋯」

これから生まれてくる子の存在も否定してしまったようで私は苦しくなった。


このお腹の子にも聞こえていたらどうしよう。

私は子爵邸で散々失われた女の自信を取り戻すことを優先してしまった。


ジルベールならチヤホヤしてくれると思ったのだ。

彼はこの男尊女卑の国には珍しく、彼は女はもてなすものと思っている。

「実は結婚の話もなくなっちゃったんだ。」

私は彼の出してくれた食事をダンテと食べながら言った。


「それで、ストレスを太り?なら、俺と結婚しよう」

なぜだか、引き出しから婚姻届が出てきた。


「そうだね、結婚しよ」

私は、婚姻届にサインをした。

「他の欄は私が埋めて提出しておくよ。証人欄とか適当にお願いするね」


私が笑顔で彼に言うと、彼も微笑んだ。

私の隣で人形のように座るダンテの瞳にジルベールの姿が映っていた。



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