潮風香る商店街。
「うぃーすババァ!商店街、人居なくてマジ平和じゃね?草なんですけど!」
"キラキラ青色好奇心"
変な犬のパーカーを来たバカガキ、もとい、ハルトが今日も元気にバイトに来た。
「きたね、バカガキ!お前のその犬は、いっつも死んだ目をしてるねぇ」
駄菓子屋の前、花バァの金ピカサングラスがハルトを捉える。
「えー、この犬超ー可愛くね?元気の有る服着たら、客もテンション上がるって科学的に証明されてるらしいよ!」
ハルトのお気に入り。何着かストックが有るらしい。
「どこで学んだんだ?また、"えすえぬえす"かぃ?」
「当たりー!!マジ秒で覚えたから、心理学マスターって呼んで!」
「お前は秒で頭悪くなってるよ!」
ポカっと花バァの伝家の宝刀、ガラケー殴り。
ハルトは、ダメージを負った。
ガラケーの耐久値がまた下がった。
「さっさと店の仕事しな!」
毎日、平和な繰り返し。うずまき商店は今日も元気に営業中である。
「おばぁちゃんー、10円ガムちょうだーい」
今日も可愛い"真っ白綿雲"達が店先にやって来た。
(可愛いねー。癒しだよ、この子達は。)
「このガム、新作の神ガムっすよー!噛むたびに味が変わるって噂のマジバズりフレーバー!食べてみー?」
ハルトは仕事しているようで、していない。
「何が、マジバズりだい。ガムに味変求めるんじゃ無いよ!甘けりゃいいんだよガムは。」
「えっっ!ババァ甘けりゃ良いって、それはセンスないって!昭和的思考!やばくね!?」
ハルトがおどける。
「バカだねぇ。昭和は甘くないんだよ!こちとら、平成も乗り越えて来てんだ、令和のバカガキが」
花バァとハルトの掛け合いを見て、子供達がキャッキャしている。
(まったく…このバカは役には立たないけど。この時間は嫌いじゃないねぇ)
そんな平和な日常に少し変わった出来事が?
「ねぇ、おばぁちゃん…この前パパに買ってもらったブレスレットねーキラキラしなくなっちゃったのー」
花バァは、サングラス越しに女の子の手元を見る。
ブレスレットの中心には星光石。白く濁ってる。
(……んー?妙だね。)
ハルトが覗き込む。
「あー、この石キラキラする奴じゃんー。あれ?光らないね?角度?」
首を傾げる。
「どれ、ちょっと貸してごらん?」
女の子から受けとって、指先で星光石の裏側を触ってみる。
(感触は…星光石だね。でも、なんだか…変なオーラを感じるねぇ)
人のオーラは見えるのに、物のオーラは見えない。そんな花バァの"第六感"でも、うっすら違和感を感じとった。
「ハルト、お前このブレスレット知ってるかい?」
目線が上を向き、ない頭で思い出すハルト。
「あっそれ多分知ってるかも!…確か、先週"海キラリ"で、限定色入荷!って売られてたかも!」
「ふ〜ん……そうかぃ、限定ねぇ…キラリなのか、腐りなのか…」
金ピカサングラスを掛け直し、"海キラリ"に目を向ける。
今日もナナちゃんが店先でオロオロしている。
「うぃーす。ナナちゃん!今日もドジっ子アイドルしてるー?」ハルトが冷やかす。
「うるさぃよ、、!ハルト君、、今日は真面目にしてるの!」
「"今日は"って、自覚あるのマジ尊敬するっす!草超えて森ー!」
もーって言いながら、ナナちゃんがハルトを追いかけ回す。
そんな平和なバカ話の裏で、花バァには引っかかるものがあった。
(星光石の色……前と違う。もしかして、あの時の……いや、まさかね)
ちりちりと、古い記憶の火種が灯り始めていた。
バカガキの声が響く彩海商店街。
だがその笑い声の裏には、じわりと忍び寄る「キラキラじゃない何か」の影。
そして、花バァの「目」が、それに気づき始めていた。