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第6色 裏路地と星の粉(やばいやつ)

今日のハルトは一味違う(多分)

ハルト(自称喋りのプロ)は昨夜の花バァとの会話で、ナナちゃんを助けたいと彼なりに思っていた。

海キラリの店先で、品物の陳列をしているナナちゃんに声をかける。


「うぃーす、ナナちゃん。元気してるー?」

手を止めて、目線を向けるナナちゃん。

「ハルト君…んー、あまり元気じゃない、、かも」少し間が開く。


「そっかぁ…。ナナちゃん…俺ってさ、結構馬鹿じゃん?だからさ、周りに迷惑かけちゃう時あるのね。それでちょーっとだけ落ち込んだりさ。」

「うん」頷くナナちゃん。

(どうしたんだろ?…ハルト君)


「うまく言えないんだけど、ババァやナナちゃんと話すといつも楽しいだよね!!仲間って言うか、そんな感じ!」


「わたしも、、ハルト君と話すと楽しいよ?」

ナナちゃん少しだけ笑みが戻る。


「何が言いたいかって言うとさ、仲間が元気ない時に力になりたいって思うんだよね!だから、ナナちゃんが困ってる事あるなら、頼って欲しいかなー?…ってさ!そんだけ!」


少し照れ臭くさそうに、駄菓子屋に戻ろうとするハルトを呼び止める。

「あっ、、ハルト君、、今日の夜…おばぁちゃんと一緒に来て欲しい所があるんだけど、、どうかな?」ハルトなりの気づかいが通じた。


「オッケー!ババァにも言っとくよ!」

小さくガッツポーズする。ハルトは少しだけ成長した。


──そんな日の夜、商店街の裏路地を3人が歩く。

ナナちゃんの案内でたどり着いたのは、古びた倉庫のような建物の裏手だった。


「このへん……前にトレーラーが何度も停まってたの。荷物、降ろしてたみたいで」

ナナちゃんが申し訳なさそうに口を開く。


「夜中の荷降ろしってのは、だいたいロクなもんじゃないのよ」

花バァが口をすぼめ、地面を睨むように見渡す。

「……ん? ちょい待ち」


ハルトがその声に振り返ると、花バァはしゃがみ込んで地面を指でなぞっていた。

「見てみな、これ……床に、キラキラ光るもんが混じってる」

懐中電灯の明かりに、細かな粒が反射して浮かび上がる。


「うわ、これ……ラメじゃね?」

ハルトがスマホを取り出して撮影を始める。


「…違うね。これは“星光石”の粉末だ」

花バァの声が低くなる。

「昔、偽石で一悶着あったときに見たことあるのよ。表面にだけ光沢を出すために、こんな粉を混ぜて固めるのさ」


「偽物ってこと?………わたし、知らなかった……本当に、知らなかったの」

ナナちゃんが唇を噛む。

「この粉、工場から回ってきたって言ってたけど……でも港の方にトレーラーが行ってたのも見た」


「港、ねぇ……」

花バァが立ち上がり、腕を組む。

「最近行ったよ。あの辺、警備緩くなってんのよ。観光資材の名目で出入り自由にしてるって話。つまり…あそこが流通の中継所か」


「ナナちゃん、この粉……店の商品に混ざってたりした?」

ハルトの問いに、ナナはゆっくりと頷く。


「何個か……最近入った分だけ。でも、あたしの手作りには使ってないよ、、、絶対に!」

少し黒いオーラが揺らぐ。


「ナナちゃん、信じてるってー!」

ハルトが笑って言う。

「そんで!この粉……SNSで広めたら、意外とヤバさ伝わるかも。何かはわからないけど、“怪しい粉”ってだけでも」


「証拠として押さえとこうかねぇ」

花バァが小さな袋に粉を少しだけ詰め、ポケットにしまう。


ナナちゃんの肩がふるふると震えていた。

「わたし、もっと早く気づくべきだった。…ごめんなさい」


「バカ言ってんじゃないよ」

花バァが静かに言う。

(黒に少しだけ"淡い緑"が混じってるねぇ。迷ってるけど、少しだけ受け入れてる証拠さね。)


「謝るのは、ぜーんぶ終わってからでいいんだよ。今は、動くときだ」


三人の影が、月明かりの下で一つに重なる。

どこかで猫の鳴き声が響いた。



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