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第7色 バズれ!正義のライブ配信

裏路地からの帰り。

駄菓子屋・うずまき商店の奥の座敷。

オレンジ色の蛍光灯の下、ハルトとナナちゃんはちゃぶ台の前に座っていた。


「俺、ぜってーこのままじゃ駄目だって思う!……LIVE配信しようと思う!」


脳裏に、さっきのナナちゃんの言葉が浮かぶ。

(あたしの手作りには使ってないよ……絶対に!)


花バァはお茶をすすりながら、二人を見つめる。

「いつもバズるだのパズルだの、何だか分からんけど……お前にしかできないんだったら、やってみな、ハルト」


口調は軽いが、その目はあたたかい。

少しだけ背中が伸びたハルトに、花バァは静かにうれしさを感じていた。

(まあ、学校もバイトもサボってるが……たまには役に立つか)


そのとき、ナナちゃんが口を開いた。


「……私も、配信……出ていいかな?」


ハルトは少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になった。


「いいね!ナナちゃんも出よう!めっちゃバズらせよう!」


ナナは一度深く息を吸い、花バァの顔をそっと見る。

「ちゃんと、話すね」


スマホを手に取り、配信アプリを操作するハルト。

画面が切り替わり、LIVEが始まった。


「うぅーす!こんばんは!ハルトです!

今日は、最近流行ってるキラキラアクセサリーの件で、やべぇの見つけたかもなんで、配信してまーす!」


勢いよく始まった配信。

ちゃぶ台の向こうで、花バァは湯呑み片手に見守っている。


「でさ、あのアクセ。最近キラキラしなくなったって噂あるじゃん?

最初は俺も、またネットのガセでしょ〜って思ってたんだけど、

今日、商店街の裏に行ったら、床がやばかったんよ!」


ハルトは熱を帯びた目で、画面を見つめた。


「なんかキラキラした粉みたいなのが落ちてて、しかも、変な匂いもして……。

アレ、本物じゃないって。俺、思ったんだ。

これって、もしかして偽物が出回ってんじゃね?って!」


「みんな、どう思う?最近、アクセとかで変な噂とか聞いてない?」


コメント欄が次々に流れ始める。


《港の近くだけど、最近夜にトレーラー走ってるの見たよ。関係ある?》

《ハルトめっちゃ坊主じゃん笑》

《この前、友達が買ったブレスレット変って言ってたー》

《俺おんなじパーカー持ってる。うけるw》

《さっさと家帰れやw》

《星光石ってそんな安いもんじゃないよね?》


リスナーの反応は様々だが、確実に“波”は生まれている。


「今日はさ、海キラリの店員のナナちゃんが、話したいことあるって言ってたから、一旦代わるね!寂しがんなよ〜!」


スマホの前で、ナナが一歩前に出る。

「あっ、、あの……こんばんは。海キラリでアクセサリーを作ってる、ナナといいます」


「今日、話したいのは“まだはっきりしないこと”なんです。でも、気になって仕方ないから、聞いてほしくて…」


「ハルト君が言ってた粉、粉末状の鉱石で、“星光石”みたいなもの、かもしれません。でも……わたし自身、まだ確かなことは言えません」


「わたしも、使ってた一部の商品にこれが混ざってた可能性があるんです。でも、手作りのものには、絶対に混ぜてない。それだけは…信じてほしいです」


ペコリと頭を下げ、ハルトとアイコンタクトをし、バトンタッチ。

「お喋りブルー!ハルトに代わりました!ナナちゃんありがとね!みんなも、聞いてくれてありがとう!他に情報あったら、DM飛ばしてね!拡散よろ!」

盛り上がるコメント欄

《ナナちゃんめっちゃ可愛い!》

《ハルトそこ代われ》

《ナナちゃん信じるよ!》

《なんで、こんな粉が出回ってるんだ!》

《見た目で分からないの難くね?》

《ブルーって何?笑》


ナナちゃんの気持ちが通じたかは分からないが、噂は信憑性を持って広がっていくはず。

ハルトは手応えを感じ、配信を終えた。


「終わったー!今日めっちゃ盛り上がったくね!?これで噂もっと広がるっしょ!目指せ1万回再生!」


「私、、ちゃんと言えた、、かな?」


花バァはそっと湯呑みを置き、2人をみる。

(おや、2人ともキラキラしてるじゃないか。これがいい方向に行けばいいねぇ)


「正義のライブ配信」は、静かに波紋を広げ始めた。



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