目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第20色 町をキラキラさせる!

彩海商店街に、ふたたび活気が戻っていた。


ナナちゃん、ハルト、花バァが立ち上げた「星光石フェス第二部」──

それは公式イベントが台無しになったあと、商店街の人たちが自分たちの手で祭りを取り戻すための、ささやかだけど本気の反撃だった。


「照明こっち! ハルトくん、スマホで回して!」


「よっしゃ! 今、配信5,000人超えてるぞ!」


商店街のあちこちで、シャッターがガラガラと開く音が響き出す。

露店、手作りの飾り、光るおまんじゅう(?)、ピンク色に輝く星光キャンディ。


「星光石がなくたって、輝けるさ!」

「うちは特製うどんに金粉かけたよ!」

「イカ焼きに、色塗ってみたぞ」

「キラキラしてれば、それでいいんだよ!」


それぞれが思い思いの「輝き方」で、商店街の祭りを再起動していた。


そんな中、花バァは竹箒を高く掲げて叫んだ。


「掃除開始だよォッ!! オーラは足元から生まれるんだ!」


竹箒がカツンと地面を打つ音が響き、キラキラした偽物のかけらが風に舞い散った。

その背中には、まるで朝焼けのような温かい金色のオーラがゆらゆら揺れている。


花バァはふと商店街を見渡した。


そこには笑顔があり、涙があり、人々が互いに影響し合いながら動いている。

そして彼らのまわりには、赤、青、緑、オレンジ、ピンク、白――

まるで空に浮かぶ虹のように、多彩な色の光が舞っていた。


「……こりゃまた、すごいねぇ」


花バァは目を細めてポケットからサングラスを取り出す。

一枚かける。眩しい。

さらにもう一枚。まだ足りない。

そして、三枚目。


「三枚目っ!?」

隣で見ていたハルトが声をあげた。


「三連サングラス!? やばすぎるってババァ、それもう“オーラ対応ゴーグル”じゃん!!!」


「眩しすぎるオーラはありがたいけど……年寄りの目には刺激が強すぎんのさ」


涼しい顔でつぶやく花バァに、ハルトは腹を抱えて笑い出す。


「くっ……あはははは! 配信中! 今の映ってた!! ババァ天才すぎる!!」


コメント欄が一気に盛り上がった。


「三連サングラス伝説爆誕w」

「もう花バァが彩海市長でいいよw」

「うちのばあちゃんにも竹箒持たせたい」

「この町、やばいことになってる……w」


ナナちゃんがスマホの画面を見て、吹き出した。


「なんか、もう……負ける気がしないね」


「っしょ!? “本物”って、やっぱ面白いじゃん!」


花バァは三重サングラス越しに商店街を見渡し、にやりと笑った。


「キラキラってのはね、重ねるもんなんだよ。

 サングラスも、オーラも、人生も──ってね!」


その言葉に、またコメントがどっと溢れた。


「名言きた」「座右の銘にします」「これ小説化希望!」


──そのときナナは、ふと商店街の隅にある掲示板に目を止めた。


そこには、小さな袋に入った黒タグ付きの偽物星光石が一つ、ひっそりと置かれている。


「……置いていくんだね」


ナナちゃんはそっとその下に、「本物を信じる」という紙切れを貼った。


すると、風がふわりと吹き抜け、


商店街中のオーラが一瞬にして広がり、色が混ざり合ってひとつの光となって天へのぼっていった。


「……虹?」


ハルトがつぶやいた。


花バァはにっこり笑い、


「若いもんは、まぶしいねぇ。目がしぱしぱするよ」


三重のサングラス越しの視線が、町をやさしく包み込んでいた。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?