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第6話 探偵部の挑戦

 あたしの名前は花染夢邦、世界に巨大隕石が雨あられとふってこないかなと思い始めている小学生である。ただ残念ながら天気はピーカン、たかだか天気の分際であたしをイラつかせるなんてふざけているわよね。


「おはよう縁和くん、今日もいい天気だね!!」


「あっ、よっす琴流、夢邦」


「おはよう…」


「うん、おはよう。なんか夢邦、お前元気なくないか?」


 この野郎、どんぐりみたいな顔しているくせになんか随分親し気になってるし……お姉ちゃんもまんざらじゃなさそうだし……


「別に、そういう日もあるってだけよ………女の子にはね」


 はぁぁぁぁ……切り刻んでやりたい…お姉ちゃんの心を奪った大罪で地獄の業火にくべてやりたい。もう面倒だから明確にあたし達の命を狙う敵ってことになってくれないかしら、お願いだから敵であってちょうだい…


 ああちくしょう、イチゴオレを飲まないとやってられないわ。


 そして放課後、グビグビとイチゴオレを飲んでいると妙な三人組がやってきた。こいつらは確か…6年のお間抜け三人組だったかしら?名前はマーとヌーとケーだったっけ?


「貴方がこの学校で最も賢いと言われている花染夢邦さんね」


「違います、あたしは初川真絹です」


「ああそうなの、間違えてごめんなさい」


「おい、何やってんだよ」


「おっかしいわねー、しっかり調べたんだけど……」


 息をするように嘘をついたあたしは再びイチゴオレを飲み始める。勝手に叔母さんの名前を使ったけれど減るものじゃないし、いいでしょうね。叔母さんあたしたちにゲロ甘だし。


 その数分後、三人が帰ってきた。心なしか憤っているような気がする。


「あんた嘘ついたわね!!とんだ恥かいたじゃないの!!!」


貴方達が卒業するまで誤魔化せると思ったのに残念だわ。


 怒りと屈辱が混ざった顔で三人組のリーダーと思しきマー…じゃなかった、確かえっと


「私は「6年2組の前崎真理子先輩ですよね、そっちの男は同じく6年2組の塗床主水先輩、で、一番奥にいるのが5年3組の毛田健斗先輩……学校非公式の探偵部なるものを作っているんでしたっけ」……よく知ってるじゃないの」


「ふふふ、俺たちも有名になったもんですね」


 別にこいつらに関わらず同じ小学校に通ってるやつの顔と名前は憶えているのだけど面倒くさくなりそうだからそれは言わないことにしておきましょう。


「で?何の用?まぁどんな用でもお断りしますけど」


「そう言わないでちょうだいよ。誇らしいことなんだから」


「そうそう、君も俺たち探偵部の一員にならない?」


 そっと差し伸べられた手をガン無視してあたしは席をたつ。


「ちょっと待ってってば!!良いだろ、僕たちは君みたいな賢い子が仲間に欲しいんだぞ」


「そうそう!!お願いだから!!ねっ」


 面倒くさい……今あたしはあんたらみたいなのに構ってる余裕はないのよ……縁和を合法的かつお姉ちゃんの気を害さないやり方で抹消する方法を考えないといけないんだから。


「どうしたの夢邦」


「お姉ちゃん、別に何でもないわ」


「ああ、貴女が琴流ちゃんね!!私は前崎真理子!妹さんを私たちの探偵部に勧誘してるんだけどなかなか首を縦に振ってくれなくて。貴女からも説得してくれないかしら?」


「えっ?そうなの夢邦?」


「そうなのお姉ちゃん、でもあたしって忙しいじゃない。だから断ってるんだけど「じゃあ私がなる!!お姉ちゃんだもん!!」……」


 お姉ちゃんは胸に手を当て誇らしげに、そして不敵に笑った。もっとも不敵なんてお姉ちゃんに似合わない笑い方をするものだから、随分と不格好なものだったが可愛いからよしね。


「どうする?」


「うーん、別にいいんじゃないかしら。夢邦ちゃんのお姉ちゃんってことはきっとこの子も賢いんだろうし…今は戦力の補強が必要よ」


「そーだな……でも琴流ちゃん、俺たちの仲間になるって言うなら試練に挑んでもらうぜ」


「試練?」


「そうだ」


「自分たちから誘ったくせにそんなこと…面倒なことね」


「やるぅ!!」


……でもまぁいっか。お姉ちゃんは楽しそうだし。


「ふんっ、高飛車なやつだ。僕たちの誘いに乗らなかったことを後悔しても知らないんだぞ」


「成金になれるかもしれない魅力的な情報があるんだけどなぁ」


「そうそう、後手に回っちゃ何も手に入らないわよ」


 ……………ふーーん。


「それでそれで、試練って何!!??殺人事件とか!!??」


「流石にそんな物騒なものはないわよ。主水、例のものを」


「おうっ。ほら、君にはこの暗号を解いてもらう」


 あたしの机に紙切れが置かれた。なんとなく覗いてみると、こんなことが書いてあった。


『五年生の教室にある。ロッカーの中で眠っている、モップをひっくり返してみて。組は、この暗号の中の丸の数が、示しているから分かったらいく』


「これ、暗号文?」


 真理子が楽しそうに鼻を膨らませている。


「ええ、貴方にはこの暗号を解いてもらうわ。まずはどの組に行くべきかをこの暗号から導いてもらうわ」


「モップの下にある暗号を見つければ次に駒を進められるぞ。

 やりごたえのある試練だから楽しみにするんだぞ」


「まぁそれが最後なんだけどな。どうしても分からなかったら大人以外の助けを借りることなら何でもやりたいようにどうぞ」


「二問目の方がメインの試練だからそこまではやれるようにしてね」


 三人から説明を受けたお姉ちゃんは半袖なのに腕をまくってやる気満々に拳を握る。


「よーし、頑張るぞ!!」


「ちなみに成金になれる手段って何かしら?」


「おっ?知りたいか?興味もったか?それはな」


 真理子先輩が鞄から何かを取り出した。カードのようだ。


「このキャミモンカードのアルティメットレア『ワンランスゥ』のカードをプレゼントよ!!」


 犬のしっぽが槍になってるキャラクターね……ああ、なんか見たことあるわ。うん、いらない。


「欲しい!!」


「お姉さん見る目あるわね。これを売れば1000円くらいにはなると思うわよ!!」


 安上がりな成金ねぇ。


「そんなにするの!!??」


「ええ、じゃ、頑張ってちょうだいね」


「うんっ!!頑張るね!!!」


 そっとお姉ちゃんたちから離れながらあたしは心の中で息を吐いた。


「まぁ、小学生にしてはよくできた暗号ってところかしら……でもちょっと不親切ね。特に二問目はあたしの勘が外れてなかったら普通小学生には解けないわよ」


 あたしがつけられていることに気づいたのは数秒後のことであった。 

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