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第一章~帝国侵攻~

神話・現代

原初この世界には海だけがあった。

そこに星の海を渡って創世神ユリシアが訪れた。

ユリシアは空を創り星と海を分かつと、星の海に浮かぶ月の一つを砕いて海へと降らし大地を…

ルナリア大陸を生み出すとそこに降り立った。


ユリシアの子ら〈天空の民〉は父を助け、

森を山を河を、そこに生きるものを創造し、導き、穏やかなる秩序を築いた。


だがやがて、ユリシアはふたたび「星の海」へと旅立つことを決め、天空の民もまた、父たるユリシアに従い、この世界を去った。



残された地上の民

エルフは森と海と地下に隠れ、

ドワーフは山を穿ち続け、

人間は平原に小国を築き、争い、滅ぼし、また築いた。


それは、幾千年も続く果てなき混沌の歴史――。


やがて、大陸南方では異界より降臨した女神の導きにより、

民が治める「共和国」が興り、長い平穏が訪れた。

しかし北方では、諸侯が乱立し、麻のごとく乱れ絡み合い、絶えぬ戦が続いていた。


今から百年前――

大陸北方の火山半島に、一人の男が生まれた。名は〈アイゼンハルト〉。


鉄を鍛え、火薬を生み、

知と力と鉄の意志をもって諸侯を屈服させた彼は、

北部を統一し、死後もその覇業は娘に受け継がれ、

ついに中原を併呑し、〈鉄の帝国〉を築き上げた。


人々はアイゼンハルトを太祖「鋼帝」と称え、

その偉業を讃えた。


しかし、統一から十年――

帝国の栄華に呑み込まれてなお消えずに燻り続けた熾火が今、燃え上がろうとしていた。


大陸歴669年 黄葉月/九の月

中央山脈により分断される大陸南部と中原を繋ぐ

唯一の山岳回廊を守護する「共和国の盾」スクトゥム王国に、〈鉄の帝国〉が宣戦を布告。

第三皇子率いる帝国軍が、国境の大河・ドナ河を渡ろうとしていた──

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