夕方に俺達はなんとか隣の街に到着した。
お金の心配はなかったため、俺達は空いている宿に飛び込んだ。
助かった! これで野宿をしなくてすむ。これで野宿をするような危険はなくなり、一安心だった。
そうなると、急にお腹が減ってきた。
「よし、メシを食いに行こう」
「やった!」
狼の姿なら尻尾をぶんぶん振り回しそうな勢いで、シェリルは俺の提案に賛成した。
ここは港町だ。やはり魚介類を食べよう。
俺は市場に行き、食材と調理方法を選ぶと料理してくれる店へと入った。
白身魚、赤身魚、貝類、海老に蟹。豊富な魚介類が並んでいた。
「シェリルは何を食べる?」
「この魚とこれと、あと蟹!」
鯛と一メートルほどのマグロそれにでっかい蟹を指さした。
それは取れたてで素人目に見ても美味しそうだったが……
「シェリル……これって一人で食べるつもりじゃないだろうな?」
「え!? お金足りない?」
「いや、お金は足りるからいいが……まあ、いいか」
鯛は塩焼き、マグロは煮付け、蟹は茹でることにした。
俺の前にはアジフライと海老フライが出てきた。
六人テーブルに山と並べられた料理の数々。そしてたくさん頼んだからサービスとしてくれたクラゲのサラダものっている。
「いただきます」
美味しそうに食べ始めるシェリル。鯛もマグロも骨が硬いはずなのに、骨ごとボリボリと食べる。
あいだにクラゲのサラダをはさみ、どんどん食べ進め、残りは蟹だけになった。
それも、ハサミを引きちぎり、殻ごと食べ始めた。
「おい、それってソフトシェルなのか?」
脱皮直後の蟹はまだ甲羅が柔らかく、そのまま食べられる種類もいる。
俺は蟹を触ってみたが、普通に固かった。
「平気だよ」
そう言ってバリバリと音を立てて食べるシェリルを見ていると、山で見かけたクラブジラの子を思いだしていた。
蟹の魔獣を助けて、蟹を食うのか。まあ、この蟹は喋らないからいいか。
俺達はこの世界にいる色々な動物を大きく分けて四つに分類している。
俺達人間と会話が出来ないが、特に悪意を持って襲いかからないものを『動物』。
動物と同じように会話が出来ないが、悪意を持って人間に襲いかかってくる『モンスター』。
そして、会話が出来る者で人型に近い者を『亜人』。そうでないものを『魔獣』という。
基本的に食料として市場に出回るのは動物だが、種類によってはモンスターも食材になる。
「ところで、ドワーフの所へはどうやって行くんだ?」
「彼女は確か、あと山を二つほど越えた所にある霊峰ストーンハンマーマウンテン略して、SHMに居るはずよ」
おい、なんで略した? まあいいか。山二つ越えて行って帰ってくるとなると、最低でも十日くらいみないといけないな。この街でしっかりと装備を整えよう。
この後、買い物をして、早めに宿に戻って休むか。
そんな事を考えていると声をかけられた。
「こんにちは。ちょっとすみません。先ほどドワーフって聞こえたのですが」
そこには身なりの良い若い男性が立っていた。
長い金色の髪。髭は綺麗に剃られ、優しげな品の良い顔立ち。値段の高そうな仕立て服を身につけていた。後ろには付き人らしい人間が三人もついていた。
貴族か?
俺はその姿を見て、思わず身構えた。