そこは取り調べ室なのか、拷問部屋なのか俺には区別がつかなかった。
陽の光も入らない薄暗い石壁で囲まれた部屋。入口はカギ付きの厚い扉が一つ。どんなに叫び声をあげても外に聞こえないだろう。
そんな部屋の壁に俺ははりつけにされた。壁に腹をつけるようにして右手と両足を鎖につながれる。
俺は首を後ろにねじり、部屋の様子をうかがうと、頭からすっぽりと布を覆った人間が二人現れた。
ひとりの手には、馬に使うような鞭を持っていた。
「お前はなぜ、この街を襲った。どこの差し金だ」
「俺は街を襲ったんじゃない。街を救ったんだ」
鞭が床を叩く音が部屋に響く。
「正直に言わないと、床ではなくお前の背中でこの音を響かせることになるが、それでもいいか?」
「正直に言っている。俺は街を襲ってきた猿のボスをテイムして、山に帰らせたんだよ。あいつらは街の連中に魔柿を奪われた上に、意味も無く攻撃されたから怒っただけだ。ヴァッ!」
鞭で俺の背中が叩かれた。鋭い痛みの後、叩かれたところが熱くなる。
「嘘をつくな。あんな猿どもになんの知恵があるというのだ。お前があの猿どもを操って街を襲わせたのだろう」
「何の為に俺がそんな事をする必要があるんだ」
「その理由を聞いているのは私だ!!」
そう言うと、また俺の背中に鞭を打った。
服が裂け、肌がヒリヒリする。たった二発だけで、痛みが脳を貫く。
脂汗がじわりとにじむ。
「違うんだ。俺の話を聞いてくれ」
「うるさい! お前は私の望む答えを吐けば良いだけだ!」
そう言って、俺は力任せに鞭を何度も打たれた。
あまりの痛さに、吐く息はうめき声しか出ず、必死で息を吸う。
絶え間ない痛みに頭がおかしくなりそうだった。この痛みから逃れらるなら、死んだ方がマシだと思うくらいに。
「何をしてるんだ! 私の領地でこんな野蛮なことは許さないぞ!」
扉が開けられる音と同時に、張りのある若い男の声が部屋に響いた。
「これはオックスフォード様。いや、これは……」
「言い訳は無用だ。今すぐ、その男性を解放したまえ」
俺は背中越しに、男達のやりとりを聞きながら、これでこの痛みから、解放されるのかと思い、気が抜けた途端、意識を失った。
~*~*~
次に俺が目を覚ましたとき、ふかふかなベッドに清潔なシーツの上にいた。
そしてベッドの隣でシェリルアが心配そうに、俺の右手を握っていてくれたのだった。
「シェリル……」
「良かった。大丈夫?」
俺は上半身を起こすと、背中に痛みが走ったが、どうやら薬を塗られているようで包帯を巻いていた。
心配そうに涙を浮かべるシェリルの頭を優しく撫でた。
「ああ、なんとか……ごめんな。心配をかけて。それより、シェリルは大丈夫だったか?」
「ええ、ずっと檻に閉じ込められていただけで、いつ抜け出そうか考えてたら、解放されて、ここに連れてこられたの」
「そうか。シェリルが無事で良かった。それで、ここはどこなんだ?」
壁には大きな絵が飾られて、装飾の施された椅子やベッドの家具。床は毛の高い絨毯が引き詰められており、警察どころか、普通の家でもない様子だった。
薄汚れたシーツのかかった固くきしむベッドでしか寝たことのない俺は、ちょっと居心地が悪かった。
「ここは、あの男の家みたいよ」
「あの男って?」
俺がシェリルにそう、尋ねたとき、ドアが開かれた。
「目覚めたようだね」