「え? ここがどこか知っているのか? シェリル」
「ええ、ここはドワーフの里よ」
シェリルは平然と答えた。
ドワーフの里? ここが俺達の目的地? なんで、あのダンジョンにドワーフの里に行く魔方陣があったんだ?
俺は混乱していると、真っ黒な金属のドアが音もなく左右に開いた。
そこには俺の胸くらいしかない、背の低い人物が二人、そこに立っていた。
墨のように真っ黒な髪の頭は少し大きく、五等身くらいのバランス。鼻が大きく、指が長い。あの白骨死体を見つけたときにシェリルに教えてもらったドワーフの特徴そのものだった。
どちらも男性で、手には何か持っていた。片方は短い槍を持って、警戒している。もう一人は俺が見たことのないものだった。例えるならば小さいボウガンだ。二人の様子から、それも武器なんだろう。警戒している空気が俺にも分かった。
その緊張感の中、シェリルはあいさつをするようにドワーフの二人に話しかけた。
「ランリーはまだ生きてる?」
「長老に何の用だ?」
「あはは、あの子、長老になってるの? じゃあ、まだ生きてるのね。良かった。それであの子、どこにいるの?」
「止まれ!」
ドワーフの二人を無視して部屋の外に出ようとしたシェリルは止められた。
シェリルはそれをチラリとみて無視して進もうとする。それを槍で牽制するドワーフの男。その姿から子供のように見えるが、真剣な表情に俺は彼女を止めようとした時、シェリルが静かに言った。
「邪魔をすると……食べるわよ」
シェリルがドワーフ達を見る目は、捕食者のそれだった。
俺達はドワーフに左腕と沈まない船の製作を
「シェリル! 止めてくれ。ドワーフの二人も武器を下げてくれないか? 俺達に敵対の意思はない。このままだと、二人の無事を保証できないぞ」
「ふざけるな! お前達こそおとなしくしろ!」
俺の言葉にドワーフは逆上して、槍の穂で軽く俺の肩を突いて来た。
突かれた所から血が少しにじんだ。それはかすり傷だが、ドワーフたちが本気だと言う、警告だった。
「傷つけたわね……」
地を振るわすような声が響いた。
まずい!
俺がそう思った瞬間、シェリルは巨大な銀狼の姿になり、槍を持ったドワーフに襲いかかった。
「苦しんで、死ね!」
俺はロクに動かない金属の左腕を盾にして、ドワーフとシェリルの間に割って入った。
それに気が付いたシェリルは慌てて、止まろうとするが、勢い余って俺の左腕を噛んでしまった。
「え! マックス。ごめんなさい、ワタシ……そういうつもりじゃ……」
「俺は大丈夫だから、落ち着いてくれ」
俺はそう言って、狼狽する銀狼を優しく鼻をなでてやると、少し落ち着いたようだった。
俺はドワーフ達を見ると、シェリルの姿に腰を抜かして震えていた。
その後ろから、新たなドワーフが現れた。
「お前達、命拾いをしたな。さっさと私を呼ばないからだ。アホどもが」
腰を抜かしたドワーフたちと同じくらいの体形、地面まで付くほど長い黒髪を三つ編みにした女性がそこにいた。長老と言うからどんなおばあちゃんかと思ったが、見た目は十才くらいの可愛い女の子だった。
「久しぶりだな。シェリル」
それが、シェリルの旧友ランリーだった。