「ランリー様、父の行方が分かったって本当ですか?」
ここまで会ったドワーフ同様に幼い顔だったので、年が読みにくいが青年くらいの年だろう。
短く借り上げた黒い髪、キリリとした顔は険しかった。
「ハヤテ、こちらの方々がお前の父の作品を持って来た。これが死体のバッグに入っていたと言うんだ」
そういてランリーは金属製の腕を彼に渡した。先ほどランリーがしたようにまじまじと見た後に口を開いた。
「父の作品ですね。今どき火薬を使った作品を作るのは父くらいですからね。それで、父はどんな死に方でしたか?」
悲しむ事も無く、淡々と聞いて来た。
俺はダンジョンにあった白骨死体を思い出していた。骨には明らかな刃物の傷があった。誰かに刺し殺されたのだろう。それをそのまま言うべきなのか少し悩んだ。しかし、後日あの死体が見つかればすぐに分かってしまう。
「……死体には刺し傷があった。理由は分からないが、刺されて殺されたんだろう」
「そうですか。ありがとうございます。これで母も気持ちに区切りが出来るでしょう」
そう言ってその青年は深々と頭を下げた。そして、持っていた金属製の腕を俺に渡した。
「これは?」
「何かの縁です。あまり役に立たないかも知れませんが、お持ちください」
「いや、こんなスゴイ物をいただくわけには……」
精密に造られた売れば一財産出来そうな金属製の腕。拾いものならそのまま使おうと思っていたが、所有者の家族が目の前にいるのに使う訳にはいかない。
「こんな、時代遅れの物でよければ持って行ってください」
「え! これが時代遅れ?」
「ええ、この義手には銃が仕込まれているのですが、火薬を使うタイプなんですよ。火薬を使うなんて父くらいでしたからね」
火薬? 火薬って何だ? 銃はさっき説明を聞いたが、ここに来てから知らない言葉ばかりだ。もしかしてドワーフと言う種族は、俺達人間よりも進んだ知識や技術を持っているのではないだろうか?
「火薬って何ですか?」
「ああ、火薬は火をつけると爆発する薬のことです。その爆発力を利用して鉄の弾丸を飛ばすのが銃です」
弾丸? 一つ説明して貰って、一つわからなくなる。永遠に終わらない謎かけのようだ。
俺がぽかんとしている横で、シェリルは初めから理解する気など無い顔で座っていた。
「実際に使って見せた方が早いですしょう。ハヤテ、見せてあげなさい」
「良いのですか?」
「少しくらいなら私が許します」
「……分かりました。では準備をして参ります」
そう言ってハヤテは義手を持って部屋を出て行ったのだった。
その姿を見送って、ランリーに疑問を投げかけた。
「先ほどの話の半分も理解出来ていないんだが、あの義手自体、俺達人間に手が届かないほどの技術だと思うのだけど、何が時代遅れなんですか?」
「ああ、火薬は空気を汚すのですよ。ここは地中ですので空気は貴重なので、空気を汚すような技術はどんどん時代遅れになっているのです。初めにあなたたちに会った者が持っていた物は最新式の銃ですので、空気を汚さなくて、威力が高いのですよ」
空気を汚す? 空気なんてそこら中にある物だろう? 少しくらい汚れても関係ないだろう。しかし、ここは地中だと言っていた。それが空気に関係するのだろうか?
説明を受けても俺はよく分からなかった。