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第22話 底辺テイマーは義手をつける

「準備ができました。実験室の方へどうぞ」


 ハヤテに連れられて行った所は、地中に造られた町外れにあり、大きくくりぬかれた空間。周りは石で囲まれて、あちこちが欠けていた。おそらく、ここで色々な武器などの実験をしているのだろう。


「大きな音がしますので、気をつけてください」


 ハヤテはそう言うと、義手を100メートルは離れている木の的に向けると、爆音が響き渡った。

 そして音が鳴った瞬間、木の的が吹き飛んだ。

 雷が落ちたのではないかと思う音に、俺は思わずビクっとしてしまった。

 そして独特な煙の匂いが鼻を突いた。


「な、何が起こったんだ?」

「向こうの壁を見てごらん」


 ランリーの言葉に俺は木の的の奥の壁に近づいた。そこには親指ほどの大きさの金属の塊が壁にめり込んだいた。俺はハヤテがいたところを見た。あんな所から、一瞬で飛び、その上この威力。最新式はこれよりも威力があると言っていたから、本当にプレートメイルを貫通するのかもしれない。


「これって、魔法じゃないんですよね。すごい! これは世界を変えるんじゃないのか?」


 俺は興奮したまま、ランリー達の所に戻った。

 ハヤテのような小さな身体で、魔法も使わず、こんな簡単に威力ある攻撃が出来るなんて。


「そんなたいした物じゃないですよ。弾がなくなれば使い物にならないし、連射も効かない。音が大きいから隠密攻撃が出来ない。水につかれば火薬は湿気て使えなくなる。弱点だらけだ。こんな物でよければあげます。」


 ハヤテは実の父親の作品にもかかわらず、苦々しい顔で義手を睨んだ。


「時間と材料さえあれば、もっと良い義手を造って差し上げますよ」

「これよりも!? どんな材料があれば?」

「後でメモをお渡しします。それよりも、この義手を上につけるのであれば、手術が必要ですが、どうなさるつもりですか? ランリー様」


 ハヤテの言葉に、ランリーはニヤリと笑った。


「私がつけてやろう。シェリルも手伝って貰うぞ」

「え、私?」

「そうだ。話を聞くと、お前の血は彼に合ったんだろう。ならば、少し血を貰うぞ」

「血? マックスの腕がどうにかなるなら、そのくらいなら別にかまわないけど」

「じゃあ、明日、その腕をつけてやろう。ところで、その腕のためだけに我が一族しか知らないはずの転移紋を使ってきたのか?」


 あの転移魔法は死体になっていたドワーフが使っていたものだったのか。

 とりあえず、俺の腕はなんとかなりそうだ。そう言えば、もう一つ目的があった。


「ちょっと聞きたいのですが、沈まない船って造れますか?」

「沈まない船?」

「はい、海にいるモンスターが漁場を邪魔しているので、退治したいのですが、船が沈められてしまって上手くいかないんです」

「ほう、沈まない船ですか? わかりました。あなたが手術を受けている間、データーベースを検索させてみます」


 また俺の知らない言葉が出てきた。しかし、もう、いちいち聞くのを諦めた。


「よろしくお願いします」


 そうして、俺は金属の義手をつける手術を受けたのだった。

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