唖然としている俺を尻目に、シェリルはランリーが出て行ったドアに走り寄ると、鍵を閉めた。
「マッック~~~~~ス!」
そこから一足飛びに、俺に向かってダイブしてきた。
俺はベッドの上でシェリルを抱きしめ、気が遠くなるほどイチャイチャしたのだった。
~*~*~
どれくらい時間がたっただろうか。ぶしつけで乱暴なノックが響き渡った。
「おい、食事を持ってきたから、いい加減にここを開けろ」
その声はランリーだった。
ベッドの上で、満足そうに横になっているシェリルを置いて、俺はベッドから降りるとドアを開けると、そこにはランリーだけでなく、数人のドワーフがトレイに食事を持ってやってきた。
その食事の量は軽く大人十人分以上だろう。
ドワーフたちとシェリルと俺の分だとしても多くはないだろうか?
俺はそんなことを考えていると、ドワーフたちはテーブルの上に料理を置くと、ランリー一人を残して部屋から出て行ってしまった。
「ここの食糧事情はそれほど余裕はない。これで我慢してくれ」
「え!? この量を三人で?」
「いいや、君たち二人分だ」
俺はそう言われて、思い出した。
「暴食の魔獣」
ランリーはシェリルをそう呼んだ。
本来ならシェリル一人でこの量を軽く平らげてしまうのだろう。
「シェリル、全部食べちゃっていいぞ」
「何を言っている。手術明けの君こそ、栄養を取るべきだ。シェリルはどれだけ食べさせても満腹になることがないんだ。遠慮することはない」
「しかし……」
俺とランリーが話し合っていると、シェリルがベッドから降りてきた。
「何言ってるのよ。三人で食べましょうよ」
「え!? 今なんて?」
昔のシェリルのことを知っているランリーは驚きの声を上げた。
「だから、みんなで食べましょうよ」
「おまえ、自分が言っていることの意味を分かっているのか? みんなで食べると言うことはお前の取り分が減るって言うことだぞ」
ランリーはまるで、シェリルが狂ったのかと言わんばかりに、シェリルの言葉を解説する。
その言葉を聞いて、シェリルはそのかわいらしい頬を膨らませた。
「そんなこと分かってるわよ。馬鹿じゃないんだから。今はそんなにお腹がすいていないし、みんなで食べた方が楽しいじゃない」
「おまえ、どうかしたのか? もしかして血を抜きすぎたか? いや、それだったら余計、血を補おうと食欲が増加するはずだ。病気か? それなら勘弁してほしい。この街は地中の閉鎖空間なんだ。病気が蔓延しやすいんだからな。いや、そもそもお前は病気なんてかからないはずだな。じゃあ、なんでだ?」
ランリーはシェリルに話しをしているような、独り言を言っているような、そんな口調でブツブツと言っていた。
シェリルはそんなランリーを放っておいて、温かなキノコのソテーを口に運んだ。
「ブツブツ言っていないで、食べるわよ。せっかく温かい料理が冷めちゃうでしょう」
シェリルの言葉に押されて、俺たちは食事を始めたのだった。