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第26話 底辺テイマーは沈まない船の設計図を手に入れる

 俺はひとつ、つばをゴクリと飲み込んだ。


「もう一つの条件とは?」

「簡単なことだ。お前さんは冒険者なんだろう。手に入れた素材を私達に売ってくれないか? この山は鉱物が豊富に取れるのだが、それ以外の素材がなかなか手に入らない。特に生体素材なんかは常に不足している。手に入れたらでいいから、優先的に持ってきて欲しい。素材さえ手に入れば、もっと良い腕も造ってやれるぞ」

「これよりも?」

「ああ、そんな物よりも強力で精巧で繊細で役に立つ腕を造ってやるぞ。今のままだと夫婦げんかしたときに心許ないだろう。私が造った腕ならシェリルなんぞ、ワンパンで倒せるぞ」


 ランリーは何度もワンツーをシェリルに向かって繰り出す。

 シェリルは腰に手を当てて、大きな胸を張ってフンっと笑った。


「昔も今も、ちび助のお前にワタシが倒せる訳がないだろう」

「フン、昔から何一つ変わらないお前とは違うんだよ。こちらの技術はずっと進化し続けているんだよ」


 頭一つ分以上ある身長差でにらみ合うふたりだった。

 その姿は本気でにらみ合っていると言うよりも、ふざけ合っているように見えた。

 しかし、シェリルをワンパンで倒せるほどの腕。ランリーが大きく言っているとして、その十分の一でも相当な戦力になる。

 それに、こんな俺でも、ドワーフ達の頼られるのが嬉しかった。


「分かりました。素材の方はどこまで期待に応えられるか分かりませんが、できる限り素材も持ってくるようにしますよ」

「よろしくな。それと、この街の事は他言無用でお願いします」


 こうして、俺は無事に左腕と沈まない船の設計図を手に入れた。

 手術後の様子を見るため、数日街に滞在した。

 その間、街を見て回って、ドワーフの技術力の高さに驚いた。

 山の中をくりぬいた街はここ以外にも上と下にもあり、そこにはエレベーターと呼ばれる昇降機で移動出来る。それは、背の高い建物にも使えて楽に移動出来る。

 そして、街中も馬車ではなく自動車と呼ばれる乗り物で動くことも出来る。

 しかし、食事に関しては俺達とそれほど変わらなかった。

 その分、お酒に関してはびっくりするほど種類も味も豊富だった。しかし、どれも度数が高かった。

 それをランリーとシェリルは水のように飲んでいた。


「しかし、お前さんに伴侶が出来るとはのう」


 ランリーは何杯目か分からないウイスキーをストレートで飲み干しながら、からかうように言った。


「いいでしょう。あんたはどうなのよ」

「私か? 旦那は三人、子供、孫、ひ孫を合わせて三十人以上の大所帯だよ」

「ふん、なかなかやるわね。でもマックスより素敵な人はいないでしょう」


 何かと張り合う二人を見て、俺は気になった。


「二人ってどういった関係なんだ?」

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