「関係?」
シェリルは不思議そうに俺を見て、頭をかしげる。
どうやら、シェリルはランリーとの出会いすら覚えていないようだった。
「ああ、昔、私が人間に誘拐された時に、シェリルに助けられたんだよ。これでも私は長老衆の娘でな」
「そんな事があったっけ?」
本気で思い出せない様子のシェリルに替わってランリーは話し始めた。
「まあ、私を助けたと言うよりも、ただ、人間を食いたかっただけかも知れないがな。私が食べられなかったのも、まだ小さいからと言っていたからな」
「今でも小さいけどな」
シェリルは鼻で笑う。
それを軽く流してランリーは言葉を続ける。
「ドワーフは大きくならないんだよ。それから、一年ほど一緒に旅をしたあと、別れたのだが、こいつが色々やり過ぎて、他の魔獣達からダンジョンに封じられると聞いて、私がダンジョンを造ってやったんだ」
「じゃあ、シェリルを檻に閉じ込めたのもランリーか?」
「檻? なんだそれは?」
ランリーは俺の言葉に驚いたようだった。あのシェリルを閉じ込めていた檻はランリーが作った物ではないのか。そうすれば、誰がシェリルを閉じ込めたのだろうか?
ランリーも同じ考えのようで、シェリルに尋ねた。
「お前さん、しばらく噂を聞かないと思えば、檻に閉じ込められていたのか? 誰に閉じ込められた?」
「まあ、ちょっとね。少し騙されて……もう、昔の事だから忘れちゃったわよ」
「魔獣のあんたを閉じ込めるなんて事、同じ魔獣以外にできるか? しかし、他の魔獣はお前さんがダンジョンに引きこもる事で納得したのだろう。誰だ、そんな事をしたのは?」
「ちょっと、美味しそうな人間に誘い込めれてね。気がついたらガチャンって鍵がかかって、その人間もいなくなってたのよ」
「つまり、お前さんは人間なんぞに閉じ込められたのか? 情けない」
「だから、言いたくなかったのよ」
しかし、魔獣であるシェリルを閉じ込めたのが人間だったのか。
外からしか開かない鍵がかかっていたとは言え、檻が壊せないと言うことは、檻自身にも魔法が付与されているのだろう。魔獣でさえ壊せない檻を作れるような魔法使いがいるのならば、よほど偉大な魔法使いなのだろう。しかしそんな人間がいるのだろうか? そしてそいつは何のためにシェリルを閉じ込めたのだろうか。
それまで深く考えていなかった疑問がふつふつと俺の中から湧き上がった。しかし、いくら考えてもそれに対する答えが出る物ではなかった。