目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

ジュエルの特性チェック

「よほど、信頼していらっしゃるのですね?」

「あいつの作った装備に、何度助けられたか」


 ジュエルを活用できるヤツなんて、コナツをおいて他にいない。 


 シーデーはメンテナンスをして、サピィは食後の入浴へ。


 俺は、ジュエルのエンチャントが残っている。


 フィーンド・ジュエルのグレードは、現在4種類確認されていた。


 二ミリ以下の【種状シード】、二ミリ以上五ミリ以下のものを【破片チップ】という。

 一センチ以下は【三角デルタ】と呼ばれ、三センチ以下でようやく【標準スクエア】と言われているそうな。


 以前、強化されたミノタウロスが落としたのは、【スクエア】だ。


「すごい量だな」


 大きさは【チップ】が数枚、標準のミノタウロスは【デルタ】を落とした。

 あとはすべて、【シード】のグレードである。

 数え切れないし、数えたくもない。



「これ全部エンチャントか。面倒だ」


 いっそ、全部を色で仕分けた。カラーごとに分けて瓶に詰める。


「あ、そうだ。エンチャントしていない装備と区別しないと!」


 すっかり、エンチャントの力と、ジュエルの力を混同していた。これはうっかりである。


 エンチャント前後で、瓶を分ける。


「これでよし。いくぞ、【エンチャント】ッ!」


 ルビージュエルの入った瓶に、エンチャントを施した。


 瓶詰めのルビーに、炎の力が宿る。


「よし、見分けはつくな!」


 エンチャントすると、宝石の中に炎が灯っているのが見えた。


「他も試そう」


 サファイアだと氷の結晶が、エメラルドだと小さな竜巻が、トパーズだと稲光が。アメジストだと、色自体が光っている。


「これは発見だな!」


 だが、疲れがドッと出てしまった。


「いかん、危うく寝落ちするところだった。まだまだ」


 その後、数度エンチャントを続ける。



 翌朝、俺は眠い目をこすりながら、コナツの元へ。


「ほら。どれもエンチャント済みだ」


 エンチャントを済ませたジュエルを、コナツへ渡す。


 どの宝石も、グレードが最も低い【シード】タイプだ。

 大きさは、植物の種ほどしかない。


 ジュエルのグレードは、種状の【シード】、破片程度の【チップ】、きれいな三角形をした【デルタ】、四角形の【スクエア】の四種類が確認されている。


「ありがとよ、ランバート。すげえ。こんな小さいのに、帯びている魔力が溢れ出てきそうだ」


 エンチャントを使ってみてわかったことがあった。

 宝石にエンチャントを流し込むと、ほぼ永続的にエンチャントがかかったままになる。

 エンチャントレベルを三〇以上挙げた恩恵だと、スキル表に書いてあった。


「初心者向けだからな。このサイズにした。不満なら、もっと大きいジュエルを用意する」


 ジュエルの大きさには、扱える適正レベルがある。

 よって、俺は小さめのジュエルを提供したのだ。

 試験も必要だし、なにより素人が扱えなければ意味がない。


「とんでもねえ。十分だ。弟子に作らせるには、このくらい小さいヤツから試した方がいいだろう」


 コナツにも弟子がいる。

 アイテムにジュエルを仕込む作業は、弟子にさせるらしい。

 コナツは、俺たちパーティ用の装備作りに専念するそうだ。


 今のところ、ダンジョンに変わった様子はない。

 俺は初心者向けダンジョン往復することにした。

 ギルドの依頼と、ジュエル集めのために。


 もっと上のダンジョンを目指してもいい。しかし、今は【ランペイジ商会】の名前を覚えて必要がある。そのために、ジュエル付き装備を増やすことにしたのだ。


 何より、ジュエルの特性を知る必要があった。


「ひとまず、コナツが作った試供品を試すか」


 まずは、赤い石をはめた炎のエンチャントを施す。


「ルビーのロッド。おらあ!」


 適当に、ウルフを殴った。


 炎の加護を受けたロッドに胴を殴られたウルフが、黒焦げになる。


 胸部プロテクターに同じジュエルをはめてみた結果、体力の最大値が上昇した。


 ミノタウロスのドロップ品であるバルディッシュで、片っ端からゾンビを切り刻む。バルディッシュには、氷の魔法をエンチャントしている。


「おらららああ!」


 列を作っているゾンビを、氷のエンチャントでまとめて貫いた。突きにはもってこいかも知れない。俺が首にかけているネックレスにも、サファイアが付けている。これにより、魔力の最大値が高くなった。


「お嬢様、背後にゴブリンシャーマンです」

「承知」


 トパーズを付けた盾が、ゴブリンシャーマンの魔法を少々跳ね返す。


「我ながら、とんでもないパワーですね」


 ゴブリンの群れを火球で焼きながら、サピィがそう切り出した。


「エンチャントを施すだけで、ここまでとは」


 俺も、魔物をバルディッシュで撃破しながら返す。


「しかし、他のジュエルは、攻撃に確実性を感じないな」


 残ったアメジスト、パールに関しては、特性がわからない。


「パールは武器として使うと、相手に状態異常を起こします。このように」


 試しにサピィが、パールをはめた金属棍棒で大亀を殴った。


 殴られた亀が、仲間と同士討ちを始める。


「防具として使用すると、毒などの耐性が付きますよ」

「アメジストは?」


 俺が聞くと、サピィが棍棒を見せる。


 棍棒には、パールと同じくアメジストが付けられていた。


「装備の攻撃力が上がるみたいですね。もし、アメジストを付けないままだと、このとおり」


 今度は無印の棍棒で、サピィは亀の甲羅を再び殴る。棍棒が、根本から折れた。


「色々と特性がわかって、面白いな!」

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?