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第96話  獄紋娘は三位の香り


 少し、考えてみよう。

 勢いで決めてしまうのも悪かないが、どうも状況は思った以上にシリアスらしい。

 いくら魔族で寿命が長いといえど、知らない男の奴隷になるとまで言い出すのは普通じゃないし、イオンさんの獄紋に至っては、どう見たってワケありだ。


 俺としては、美人で魔族であるシャマシュさんが来てくれるというのは、夢のようだと言っていい。

 イオンさんも獄紋あるし、気が強そうというかツンとした印象があるが、間違いなく美人だ。

 これがこの世界に来た最初のころであったならば、一も二もなくOKしていただろう。


 だけど、今は違う。ディアナとマリナと出会ったころとは違う。

 俺はもうこの世界に少なくない責任みたいなものがあるし、いろんな人たちとの縁も深めてしまった。

 だから――シャマシュさんとイオンさんが厄介者になるとまでは言わないにせよ、なにかトラブルの種になったり、元々いるメンバーと軋轢があったりする可能性も考慮しなければならないのだ。


 うーん……。


「……いくつか確認しておきたいことがあるんですが」


 俺の言葉にシャマシュさんはパッと顔を輝かせた。


「その気になってくれたのか? なんでも聞いてくれ。答えられることならなんでも答えるぞ」


 チラリと覗く八重歯が、大人びた彼女の印象を柔らかいものにする。

 象牙色アイボリーの髪から、薄くシプレ系の香水の様な甘い芳香が立ち昇り、鼻孔をくすぐる。

 この香りは天然なんだろうか。魔族というだけあって、人間とは臭腺が違うのかな……。

 なんていうか、男を惑わす香りだ。悪い女だな。


「まず、一番重要なところなんですが。獄紋って精霊石で取れるっていうか、浄化? できるってことですけど、浄化して獄紋消せたらもう無罪放免なんですか?」


 これは大事なところだ。

 獄紋がとれても、「それはそれ、これはこれ」でまた捕まってしまうのでは意味がない。

 この質問に、力強く頷くシャマシュさん。


「うん。それは当然だよ。本来は祝福を失っている時点で罰は受けているということなのだから。獄紋は精霊石で祓えばそれで無罪放免さ。……おっと、悪いイオン。もちろん君が冤罪だというのはわかっているよ。あくまでこれは一般論でだな」


「そんなフォローいらないわよ、シャマシュ」


「そ、そうか。とにかく獄紋は精霊石で洗えばそれで終わりだよ。イオンは自由になれる」


 ふむ。

 要するに賞金首なんだな。

『おたずね者』でさえなくなれば、追われる理由もなくなるってわけだ。

 つまり、イオンさんをメイドに使っていいとか、シャマシュさんを奴隷にしていいというのが、獄紋を祓う『金貨100枚』の対価ということになる。

 そう考えると話は実にシンプルだ。

 金貨100枚ってのは、ちょっとした金額ではあるが、奴隷の金額としてはそう高くないと思う。

 マリナの金額が金貨60枚で、奴隷としては安い方だったということを考えると、魔族が金貨100枚というのは、お買い得なはず。


「イオンさんは、賞金首になって金貨目当てのハンターに追われてる感じなんですか? さっき、僕に出会った時も警戒してましたもんね」


 とはいえ、ワケありのワケの部分の内容次第だ。

 金貨100枚でお買い得であるならば、逆に今度はワケありの部分になにか問題が孕んでいると考えたほうがいい。


「……それは」


 シャマシュさんが言いよどむ。

 やはり問題があるのかと思ったが、意外にもその句を継いだのはイオンさん本人だった。


「シャマシュいいわ。私が、自分で言う」

「言うったってイオン。いいの……?」

「いいのよ。これが大精霊様の思し召しだって言うのなら、信じてみるしかないじゃない」

「でも…………」


 イオンさんの、諦観とも決意とも取れる複雑な表情。

 やはり、深い事情があるようだが――


「アヤセさん。この出会いが大精霊のお導きによるものであるならば、私たちの出会いはきっと意味のあるものなのでしょうね」


 よくわからないことを言う。牽制なのだろうか。


「僕としては出会いに大精霊もへったくれもないように思いますけどね。出会いを意味のあるものに変えるかどうかは、本人たち次第でしょう?」


 なんでも神仏が関わっているという考え方は、あまり好きじゃない。

 実際に大精霊のお導きみたいな、ある種の力が働いていた可能性もあるのかもしれないが、結局のところは証明出来ない事柄だ。


「そうね……。確かに、私には自分自身で運命を切り開く力がなかった。だから、騙されて陥れられて、逃げて逃げて、こんなところまで……」


「騙されたんですか」


「そう。私はバカで無邪気だった。……私だけが、自分だけの楽園で生きていたのね」


 ずいぶん抽象的に話す人だ。


「……ごめんなさい。おかしなことを言って」


「それはかまいませんけど……。大丈夫ですか?」


 顔面にまで及ぶ刺青でわかりづらいが、青い顔をして、唇を震わせている。


「アヤセさん。実を言えば…………私には、まだ追っ手が掛かってる可能性があります。獄紋とは関係なく」


 追っ手掛かっちゃってるんだ……。

 まあ、俺に出くわした時も、「どこの手のものです」とか言ってたしな。


「もう二年も前のことです。私は対立派閥の政治抗争に巻き込まれ都落ちしました。ここでシャマシュに匿われて、もう一年以上になります。国ではすでに継承の儀も終わり、兄が即位して私は死んだことになっている……はずですが。……詳しくはわかりません。祝福を失った時点で私は継承権を失っていますし、それどころか死んだことになっているはずですが…………」


「ちょ、なんか派閥とか抗争とか継承とか、なんかデカイ話になってるんですけど。結局、イオンさん何者だってことなんですか」


「ルクリィオン。それが、私の本当の名前。……イオンは偽名です」


「偽名だったんですか」


 まあ、そうか。当然の措置だな。

 おたずね者が本名丸出しってわけにもいくまい。


「そして……私の本当の名前は、ルクリィオン・アクアマリン・フォン・ハノークといいます」


 へぇ。ずいぶん、長ったらしい名前だ。

 元貴族かなんかかな。気の強い貴族のご令嬢ってやつか。


「……あ、あれ? あんまり驚かないのですね」


「え、そう?」


「お、おい旦那。なんでそんな冷静なんだ……? あんたもホンモノなのか? 皇族を名乗るなんぞ――」


 大親方はドン引きして、椅子から転げ落ちんばかりだ。


 有名な貴族なんだろうか。

 一番最後のハノークってのが苗字だとすると、ハノーク家ってところか。


 ハノーク。

 ハノーク……?

 あれ……どっかで聞いたことあるぞ……。


 ……って、この国の名前じゃん! ハノーク帝国じゃん。


「帝位継承権第三位。元……ですけどね」


 と、イオンさん。

 つまり……ホンモノのお姫さまってことだ。


 うーん……。

 とりあえずメイドとして使うってのは無理そうだな!




 ◇◆◆◆◇




 しかし……追っ手か。

 継承権を失ったとはいえ、イオンさんはホンモノのお姫さまだ。

 しかもただのお姫さまじゃない。皇帝のご息女さまだ。いや、もうお兄さんが即位したとか言ってたっけ。


 イオンさんは年齢的にまだ十代か、せいぜい二十歳くらいだろう。

 となれば、兄弟もそこまで極端に年上ということはあるまい。当然、その父親も。

 俺はこの世界、この国の、そういった政治事情に興味がなくて知らないのだけれど、前帝、つまりイオンさんの父親は若くして亡くなった……ということなのだろうか? すでに継承が終わったとか言っていたし。

 それとも、なにか別の理由があるのか。

 そもそも、この国の帝位継承の形式がよくわからない。

 よくわからんが、追っ手を放ったのは実の兄とか姉とかなんだろう。

 となると、気楽に俺が匿うというわけにもいかないのだろうか。

 国を挙げての指名手配犯というわけではないようだが、追っ手、つまり暗殺者みたいのがやってきたりするのかもしれないのだから。


 だが、うちの屋敷なら結界がある。

 知らない人間が入ってくるのは不可能だし、うちの周りは田舎でレベッカさんの家くらいしかない。

 村人なんかに顔を見られたとしても、遠く離れた帝都のお姫さまの顔を知っている人がいるとは考えにくい。

 なんだったら、変装したっていい。髪の色変えるだけでも、だいぶ印象違うだろうし、ヘアカラーなら薬局でいくらでも買える。

 少なくとも、こんな洞窟で世間と没交渉な生活を続けるよりは、どれほどマシかわからないだろう。


 条件を並べてみれば、簡単に「俺が守ってやる!」とか言い出すような勇者でもないが、それほど悪くない話のようにも思える。

 まあ、さすがにうちで匿うなら、それ相応の仕事はしてもらいたいが、ガチのお姫さまだし多くは期待できないだろう。

 うちのなんちゃってお姫さまのディアナでも、家の仕事なんてからっきしなんだからな。

 ……となると、やはりシャマシュさんとの関係性がキモになるのか。


 魔族の奴隷を金貨100枚という格安で手に入れられる代わりに、刺客に追われているお姫さまを匿ってくれ。

 つまり、こんな注文だ。一口で言えば。


 リスクは……ある。

 あるが、どうだろうな。


「大親方、どう思います?」


 とりあえず、この場で唯一の第三者である大親方に訊いてみる。


「旦那。その顔はもうとっくに決断しちまってる人間の顔だぞ」


 おっと、そんな顔に出てたかな。詐欺師の天職が形無しだな。


「いいかげん、旦那もお人好しだな。獄紋背負わされて生きるってのは確かに気の毒だと思うが、金貨100枚は簡単に出せる額じゃねぇ。それに……この姫様はおそらく本物だぞ。ルクリィオン姫の話は俺も聞いたことがあるからな」


「ほう。それはどういう」


「ああ、どっかの聖騎士だか将軍だかといい関係になって、駆け落ちしたとかってな。こんな田舎にまで伝わってくる話だし、眉唾もんだと思ってたんだがな。実際に本人がこんなとこにいるんじゃあ、あながち嘘ってわけでもなかったのかもしれん」


 駆け落ちか。

 まあ、行方不明者に仕立てる口実としては悪くないってとこだな。

 なぜ、獄紋を背負うハメになったのかまではわからんが。


「駆け落ちなどしておりません。……私にはそんな行動を起こす勇気はありませんでした。ただ、私の淡い恋心と、彼の誠実さを利用されただけ……」


 イオンさんが口を開く。どうやら、そういう相手はいた模様。

 利用された……か。

 うーん……。ちょいちょい重い感じだなぁ。

 いや、当人の境遇考えれば当然なんだろうが。


「……イオンさん。僕は、あなたの境遇については詳しく知らないにせよ、同情するところもあります。だから、この話を受けてもいいかなと考え始めてるんです。ですが、あなたがもし復讐したいとか考えているのであれば、この話は無しにしてもらいます」


「……え、復讐なんて――」


「ないならいいんです。僕はあなたを今よりマシな状況で匿うことができますし、信用できる仲間もいます。あなたにとっての幸せがどういうものかは別にして、今より多少はマシな状況にはできるでしょう。……でも、復讐をしたいなら別ですよ。それは不幸になるだけです。誰にとってもね」


 不遇な人を、ほんの少しマシな生活にすることまでなら、俺でもできる。

 だが、それ以上の望みを叶えられるほど大人物でもない。


「……まあ、いずれにせよ金貨100枚は僕にとっては大金です。仲間とも相談したいですし、とりあえずは保留でもいいですかね、シャマシュさん」


 この話は、基本的にシャマシュさんから持ち込まれた話だ。

 イオンさんは、シャマシュさんの庇護下にあるようだし、決定権はシャマシュさんにあるはず。


「ああ、かまわない。私としても、突然無理な願いを口にしてしまったと思ってはいるんだ」


 シャマシュさんも無理は承知の願いだったのだろう。

 だが、彼女は自分の価値を知らないのか、実際のところ魔族の奴隷は金貨100枚では格安だ。

 実際確かめたわけではないが、どうもエルフと同じように寿命が長く、いつまでも美しいままのようだし、なにより魔法が使えるだろう。人間の魔術師の奴隷なんかでも、かなり高価だと聞く。

 まして、魔族自体もこのへんでは珍しいらしいしな。


 まあ、完全に人身売買みたいで気が引ける感じもあるが、いまさらでもある。

 奴隷なんていうから悪い。ちゃんとした雇用契約を結ぶってだけだ。社員登用だ。

 魔族さんは、きっと良い働きをしてくれるだろう。

 ひょっとするとあっちのほうの相手だってしてくれるのかもしれない。

 本人は、褐色の肌は相手にされないとマリナみたいな事を言っていたが、残念! 大好物です。

 マリナより少し線が細く大人っぽいシャマシュさんは、マリナやディアナにはない大人の色気がある。

 無自覚にフェロモンも撒き散らしているし、俺が管理下に置いたほうが良さそうだ。こんな天然兵器をこんな辺境に追いやるのは資源的にもMOTTAINAI。


「基本的には前向きに考えていますから、楽しみにしていてください。…………ところで確認なんですが、シャマシュさんは本当に僕の奴隷になってもいいと考えてるんです?」


 ここはしっかり確認しておこう。

 言葉のアヤとかでは困る。

 実際に奴隷契約を結ばなかったとしても、引っ越してきてもらうとか、少なくともなんらかの契約は結んでおきたい。

 さすがに、屋敷でエルフのディアナと一緒に住むのは無理じゃないかという予感があるが。


「もちろんだとも。私の願いを聞いてくれるのなら、私の全身全霊をもって君の期待に答えよう。それが契約というものだ。……なんなら君の子供を産んだっていい」


「ブッフォ! ゴホッ、ゴホッ! なに言ってんですか、突然」


 リアルでお茶噴いた。

 奴隷になるってのは嘘じゃないようだが、献身を通り越して、すごいところに突入しちゃってるよ!

 やっぱり天然兵器だった!

 口調とか理知的なのに、すごいストレート放ってくる。


「ん、私は本気だぞ。出産は女の喜びだろう。確かに性急ではあるが、こういう気持ちになったのは初めてなんだ。なに、迷惑であるならば、私一人で育てよう。もちろん、一人では子供は作れんから、その……相手だけは少なくとも一度くらいはしてほしいものだが――」


「ちょ、シャマシュ! 一体どうしちゃったっていうの!? まるでアホ女じゃない!」


 よく言った! イオンさん!


 だいたい、なんでこんな急に好かれちゃったんだ、俺は。

 魔剣持ちってのは魔族の琴線に触れたのか?

 それとも、「こいつは金持ちだな。既成事実を作るしかねぇ……」というアレなんだろうか。


 まあ、どういう思惑があるにせよ、俺にとってはそう悪い話ではない……と思うけど、やっぱりちょっと慎重になったほうがいいかも……。

 俺がそんなことをモヤモヤ考えていると、



「あ」



 と、シャマシュさんは突然変な声を出した。

 そして、ガタンと立ち上がり、部屋から出て行ってしまう。

 いかん、俺がすぐにOKしなかったから、恥をかかせたのかな。

 いや、そんなOKなんて出せないでしょう。出したいけど、出せないでしょ。


 なんにせよ、彼女はエキセントリックだ。

 やっぱ魔族ってちょっと普通と違うのかなぁ……。


 部屋を出ていったシャマシュさんは、数分で戻ってきた。


「なにが起きたのか理解できないが、まずいことになった」


 部屋に入ってくるなり、そんなことを言う。

 その表情には深刻な焦りが浮かんでいる。


「今さっき、理が反転した。今までにない規模だ。この坑道でも時々モンスターは湧くが、いつもとは深度が違いすぎる。なにが起きたのかわからないが、ここにいるのは危険だと思う。イオンも準備して」


「ちょっと、今度はなんなのよ、シャマシュ!」


「私にも詳しいことはわからないんだ、イオン。こんなことは初めてで……。ふふ、今日は初めてのことがいっぱいだ。……いや、笑っている場合じゃないんだが」


「ふざけてないで! ちゃんと説明してよ」


「イオン。魔族とエルフ族にはね、この世界に漂う精霊力や魔力の濃度が感知できる能力があるんだ。だから、モンスターが湧いた時はいつもすぐに私が倒していただろう?」


「うん」


「それでね。今、その魔力濃度が未だかつてないほど急激に圧縮して、その後、膨れ上がった。そんなのが、この山全体で起きてる。これは、モンスターがそこら中で湧きはじめているってことなんだ。それに……ちょっと考えられないレベルのやつも湧いたようだ」

「考えられないレベルって……?」


「私でも、そう感じたことがないほど濃密に圧縮された魔力。そうだな……この感じは――」


 そこでシャマシュさんは一呼吸入れた。

 もしかすると、その一言を告げるのを迷ったのかもしれない。


 人類にとっての災厄。回避不能の天災。


「……そう。『ヒトツヅキ』。二つの月の交わりで引き起こされる災禍と同じだ。…………それどころか。今のこの状態は、この山でアワセヅキとヒトツヅキがいっぺんに来ているようなものだよ」


 その言葉を聞いて、イオンさんと大旦那は顔を青くさせた。

 俺はまだヒトツヅキというものが未体験なので、どういうものなのか理解が及ばないが、この世界の人にとっては相当に深刻な話なのだろう。

 地球で言うなら、地震や竜巻、津波や火山の噴火などにあたるのかもしれない。

 つまり、


「は、はやく逃げなきゃ! なんでシャマシュそんなにのんびりしてるの!」


 血相を変え、慌てふためくイオンさん。

 確かに、すごい天災が迫っているというわりには、シャマシュさんは落ち着いている。

 いや、大親方もけっこう落ち着いているな。つまり、年の功ってやつか。


「のんびりしてるわけじゃないさ。ただ、どうしてこんな突然モンスターが大量に湧いたのか……。ヒトツヅキはまだ先だし、確かにルクラエラはモンスターが多い場所だが、それにしたって……」


「理由なんかいいでしょ! とにかく逃げるの!」


 立ち上がり、バッグに荷物を詰め始めるイオンさん。意外とテキパキしている。


「そうだな。……ああ、でもちょっと待ってくれ。もう客が来てしまった」


 シャマシュさんが答える。

 同時に、扉を激しく叩きつける音が聞こえてくる。


 モンスターの特性は、湧いてから『周辺で最も大きな魔力を持つもののところへ向かう』というものだ。

 つまり、外にはモンスターが来ているのだろう。

 それもそうだ、ここには魔族などという、いかにも強大な魔力を持ちそうな者がいるのだから。


「大丈夫、外に来たのはそれほど強いのではなさそうだ。……しかし数が多いな」


 数が多いらしい。


「ああ、僕も手伝いますよ」


 俺も戦うしかないだろう。

 魔族が強いかどうかはあまり関係がない。

 知らん顔して、「じゃ、おねがいしまーす」というわけにはいかないだろう。


「ああ、魔剣に認められるほどの男が背中を守ってくれるなら助かる。ついでに、私の力も見ておいてくれ。ふふふ、是非自分のものにしたいと思わせてみせよう」


 魔族の魔法か。確かにすごく興味ある。


 モンスターに、剣に魔法。

 ファンタジーだなぁ。


 剣を抜き、俺達は外へ飛び出した。



「……わたしを守って。……ザック」



 外に出る直前。

 うつむき、守刀を握りしめたイオンさんの小さく呟く声が聞こえた。



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