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第108話  聖騎士は上級職の香り


 神官ちゃんはいつもの服に、マントを一枚引っ掛けただけの出で立ち。まさにおっとり刀で駆けつけたという感じだ。


「神官さま!」

「ああっ、ジローさん! みんなも! よかった……無事だったんですね」


 無事も無事。

 息せき切って駆けつけたら、みんなで笑って酒盛りしてたのだ。


 神官ちゃんがその場に崩れ落ちる。

 きっと、ディアナから「まじヤバイ」とかいう通信が届いて、馬に乗ってか、それとも魔法的手段かで飛んできたんだろう。

 それなのに、この有り様だ。

 いやまあ、無事に終わってるんだから、なんにも問題ないんだけどさー。


「まあま、神官さまも一杯どうぞどうぞ」

「ふぇ……? は、はい。いただきます」


 神官ちゃんは見た目はちびっこいが、実年齢はアレだし飲酒もOKだろう。

 のどが渇いていたのか、生ぬるいビールを一気にあおる。

 おっ、さすがイケル口ですな。


「ぷはー。ありがとうございます、ジローさん。それにしても……ディアナさまの話では、ヒトツヅキ級のものが湧いたということでしたけど……。倒した……ということなんですか? もう全部終わって……?」


「はい。ここのメンツで。運もありましたが」


 運はかなりあった。

 いや、あんなのが湧いた時点で運がないとも言えるか。

 つまり不幸中の幸いというやつだな。


 神官ちゃんが「すごいです……すごい……」と呟きながら、部屋を見回す。

 みんな、可愛い神官ちゃんを肴に飲んでいる(ように見える)。

 神官ちゃんの視線が、ある一点で固まる。


「――ッ!? 魔族!」

「……ん?」


 シャマシュさんに気付いて、神官ちゃんはバッと身構えた。

 おお……やはりエルフとは謎の対立があるのかな。

 そのシャマシュさんはというと、角をさすってボンヤリしちゃってるけど……。それなりに飲んでるようだし、酔うとヘロヘロになるタイプなのか。


「どうして魔族が? それに……そちらの方は……獄紋……?」


 シャマシュさんの隣には、獄紋を惜しげもなく晒したイオンさん。たしかに初見では、かなり強烈な取り合わせと言えるかもしれない。


 これは説明するしかないだろうな。

 神官ちゃんには、イオンさんの獄紋も祓ってもらわなきゃならないし。


 さすがにイオンさんの正体については秘密にしたほうがいいだろうか。指名手配かかってる可能性も残ってるし。

 神官ちゃんは秘密にして欲しいと言えば秘密にしてくれるのかもしれないが、そうは言っても公務員。国に雇われてるような感じなんだろうし、チクられる可能性もなきにしもあらず。

 いや……そんなこと言ったら、すでに「ルクリィオン姫が獄紋を祓いに来るかもしれないので、その時は報告すること」みたいな秘密のお触れが国から出てるなんてこともありえるのか?

 獄紋を祓えるのはエルフだけなんだし……。


「どうしました? ジローさん?」


 神官ちゃんが小首を傾げる。

 頬が少し赤い。案外、酒に弱いのかもしれない。

 うーん。

 でもまあ、すでにイオンさんを見られてしまった。こうなったら信じるしかないか。

 そもそも、獄紋を祓うのだって、上への報告義務とかあるのかもだし。ちゃんと話しておいたほうが精神衛生的にもよかろう。

 ……いや、そもそも。今ここで説明する必要もないか。


「神官さま。ちょっと詳しい話は内密にしたいんで……今夜、宿は決まってますか?」

「い、いえ?」

「じゃあ、今夜……ちょっといいですか。他にも大事な話がありますので」


 俺は声を潜め言った。

 獄紋を祓うのも、そこでやってもらえばいいし。宿なら個室だしな。大部屋で取ってあるし、なんだったらもう一部屋取ってもいい。

 神官ちゃんもすぐにエリシェに帰るってわけでもないんだろうし。

 呼び出したのもこっちだし。


「え、えっと……それはちょっと……」


 両手でグラスを持って、チラチラとディアナを気にしながら、上目遣いで。


「……ジローさんのお気持ちは嬉しいですが、ディアナさまのお許しがないと、私は」


 なんてことを仰る。


「おーい、ディアナ。今夜ちょっと神官さま宿に来てもらうけど、いいよな」

「え、はい。かまいませんけれど」

「えええ、いいのですか」


 よし。シャマシュさんとイオンさんのことは、ちょっと全員で静かなところで意思統一のための話し合いをしたいからな。

 なんで神官ちゃんが驚いてるのかわからんが……。やっぱディアナって狭量なイメージあるからなぁ。


「それはそれとして神官さま。ちょっといいですか?」

「え? ……ええ、はい。もちろん」

「神官さまの魔法で怪我の治療ってどのくらいのことまでできるんです?」

「それは……程度によりますけど……精霊石があれば、ほとんどのものは治療できますが……」


 精霊石はさすがに必要か。だが、それくらいは想定内。


「だれか怪我をなさったのですか?」

「ええ。怪我……といいますか」


 チビチビと静かにグラスを傾けている、マルコの妹を見る。

 脚が悪いという妹。何年か前の崩落による怪我が原因で片足が利かなくなったのだとか。


 精霊石は奇跡の石だ。

 それ一つで、かなりいろんなことができる。

 若返りすら可能にするのだ。オリカの視力だってチャチャッと治してみせた。ちょっと動かなくなった脚を治療することぐらい朝飯前だろう。


 俺は別に特別優しい人間ではないが知り合ってしまったから、もう仕方がない。

 どうにかしてやれる手段が余裕があるのに、見なかったことにするような精神性は持っていない。良くも悪くも。


「あの子の脚を治してやってほしいんですよ。精霊石ならありますから」

「わかりました」


 神官ちゃんが一つ頷き、マルコの妹の横に座る。

 本人と二言三言、言葉を交わし、脚を触診する。

 なるほど、神官ちゃんはこの世界では医者でもあるんだな。高額医療専門だけど。


「ジローさん。これならば問題ありません。すぐにでも治療できますよ」


 俺はその言葉にホッと胸をなでおろした。

 期待を持たせて治せなかったら、ぬか喜びだからな。


 神官ちゃんに精霊石を一つ渡す。

 マルコがボーっとした顔で見ている。あ、こいつは状況を理解してないな。

 妹のほうも、酔ってるからかほとんど気にせずマイペースにお酒を飲んでいる。

 まあそうだろう。

 突然、前触れ無く精霊石を使って治療をしてくれるなんてことがあるはずがないのだから。酔った頭で、なにしてんだろ? と思う程度かもしれない。

 まあ、変に恩に着せるつもりもないし、いいんだけど。


 神官ちゃんが精霊石を片手に、祝詞を唱える。

 瞬間、カッとひときわ眩しい輝きがほとばしった。精霊魔法の輝きだ。

 一瞬、ざわめいていた室内が静かになる。が、酔っ払いどもはあまり細かいことは気にしないのか、すぐに元の喧騒が戻った。

 俺が躊躇なく精霊石を使ったのが珍しいのか、イオンさんが目を見開く。


「ど……どうですか? 成功?」


 おずおずと神官ちゃんに訊く。魔法の成功判定はよくわからない。


「はい。もちろん成功ですよ」

「おおっ」


 いまだにポカンとした顔の、マルコとその妹。

 まあ、パッと見、なにしてんのかよくわからんからな。

 説明したほうがいいんだろうな。


「マルコ」

「え、うん? おにーさん、なにしたんだ? 今」

「見たことないのか? 精霊魔法」


 見たことないはずはないだろう。

 ギルドに神殿が併設されていて、ミスリルの精錬をやったりしてんだし、怪我人が出ればあそこのエルフが治したりするんだろうし。


「そりゃ……あるけど……。でも、え? いまの精霊魔法なのか? 妹に、どういう……?」


 ちんぷんかんぷんなマルコ。察しが悪いな。

 ちゃんと宣言してから妹の脚を治すべきだったのかな。いや、それはそれでなんだかな。断られても面倒くさいし。


「ま、とにかくこれでお前の妹の脚は治ったはずだ。神官さまに感謝しろよ」

「えええ、ジローさん。石を出したのはあなたなのに……」

「魔法なしではただの石ですよ」


 さらにポカンとしたマルコ。

 酔っ払ってもうなにがなんだかわからんのかもしれない。酒の席でやらないほうがよかったかな? いや、酒の席だからいいのか。


「妹さん。脚、治ってるはずだ。動かしてごらん」

「……え? そうなんですか? そういえば、え、え……なんで。でも、うん。なんか、さっきから少し脚が熱いかも……?」


 言いながら、イスに座ってブラブラさせていた脚を動かそうとする。


「あれ? あ……動く。動くよっ!」


 驚きの表情と共に、想像してたよりもギャンギャンと激しく脚を動かす妹。

 さらにそのまま立ち上がり「治った! 治った!」と、そのへんをウロウロと歩き始めるではないか。

 さらには、ピョンピョンとスキップまで。


 なるほど、魔法だ。文字通り。

 筋力がどうのとか、神経がどうのとかそういう瑣末事はすべてぶっ飛ばした。

 治した・・・のだから、もう治っている・・・・・のだ。

 すごい。


 そんな妹の様子を、あんぐりと口を開けて見ているマルコ。

 妹にどんな声を掛けるのかと思ったら、そのまま泡を吹いてひっくり返ってしまった。


「お、おいっ!」

「うぃ~……妹が歩いてる……ぐるぐる歩きまわってる…………」

「だめだこれ」


 ただでさえ飲み過ぎで撃沈寸前だったのに、妹が歩きまわってパンクしたか。

 彼女の脚を治したのは、行きがかり上のことだが、マルコとはそれとは別に例の金属のことで話があったんだがな。ま、それは明日でもいいか。


 ドワーフたちの飲み方が凄いからか、酒も早々に尽き、しばらく後、飲み会はお開きになった。

 時間は夜の8時ちょっと過ぎ。

 けっこう飲み過ぎてしまった。

 だが、これからまだ大事な話が残っているのだ。


 うわばみのディアナと、未だに元気いっぱいのマリナ、うっとり顔のレベッカさんと、吐いて顔面蒼白なエレピピ、全くシラフにしか見えないエトワと、ジットリ暗いイオンさん、ずっとニヤニヤしているシャマシュさん、さらに神官ちゃんを連れて宿に戻った。

 部屋にベッドを一つだけ追加してもらう。単純に一つしかもう入らなかっただけだが。

 まあ、並べて詰めて寝ればどうにでもなるだろう。俺は別の部屋を借りてもいいしな。




 ◇◆◆◆◇




 お風呂から出て、全員でベッドに腰掛ける。

 みんな眠そうだ。今日はかなり運動した上に酒盛りもやったからな。


「改めて、みんな今日はおつかれさまでした。それで……えっと、まず……なにから話しましょうか」


 話すことはたくさんある。

 シャマシュさんのこと、イオンさんのこと、これからのこと。なにより俺自身のこと。


「そのまえに、ジローさん……私からいいですか?」


 神官ちゃんが手をあげる。

 俺が頷くと、レベッカさんの前に立った。


「レベッカ。手を」

「え、神官さま、なに?」


 レベッカさんが、小首を傾げながら神官ちゃんに手をとられる。

 両手でレベッカさんの手を握り、そして、花が開くように表情をほころばせた。


「おめでとうレベッカ。新たなる才能の萌芽を感じるわ」

「え……それって……?」

「そう。クラスチェンジよ。どんな天職を授かるかはわからないけど、クラスチェンジでは必ずより珍しい天職になると言われているわ。どうする? 今すぐやる? 授かっちゃう?」


 おおおおお! レベッカさんもクラスチェンジか! いや、クラスアップだ!

 確かにレベッカさんかなり沢山モンスター倒してたし、アルゲースだってトドメ刺してたからなぁ。

 そうでなくても、傭兵団時代の経験値みたいなもんもあるんだろうし。


 となると、なんになるんだろう。

 クラスチェンジと神官ちゃんは言うが、実質的なクラスアップだろう。これはアップと言い切ってしまうと、天職に「上」と「下」があるとオフィシャルに言ってしまうのと同じになるからだ。

 だから、実際には全く関係ない天職になってしまうということはないはず。

 となると、レベッカさんの「騎士」か「斥候」のどちらか、あるいは両方が上級になる……のか?

 いや、まてよ……騎士の上って、「聖騎士パラディン」?


 壁に立てかけてあるレベッカさんの剣を見る。

 聖剣アスカロン。

 可能性は高い……ような気がする。


「その前に……少しいいですか」

「はい。あ、ジローさんはクラスチェンジしたんですね。おめでとうございます。どんな天職に……っと、これはマナー違反でしたね」

「いえ、僕の天職のことは後で話します。それより……レベッカさんのクラスチェンジですが、もし『聖騎士パラディン』になった場合ってどうなるんですか?」

「……あ」


 そう。

 これは先に話しておいたほうが良いこと。

 女性の「騎士ナイト」はこの国で騎士として働くことができない。

 だが「聖騎士パラディン」は別だ。聖騎士は女性でも国で雇ってもらえる。しかも、かなりの厚遇でだ。

 聖騎士はかなり珍しい天職で、国でも毎年数人しか生まれず、そのすべてが基本的に国で働くことになる。

 傭兵団を率いていたアイザックみたいなケースはかなり珍しいらしい。

 レベッカさんのみならず、騎士天職の女性はみんな悔しい思いをしてきたのだ。騎士の天職があるにも関わらず、無能とみなされて。

 だが、聖騎士になれば、そのすべてが180度ひっくり返る。富も名声も手に入る。


 俺は、聖騎士になったレベッカさんをこんな場末の騎士隊に縛り付けたくないし、もっと華やかな場所で輝いて欲しいと思う。

 レベッカさんは優しいから、きっと騎士隊に残ると言ってくれるだろう。

 だけど、それは駄目だ。

 だから――


「神官さま。騎士の天職の人がクラスチェンジすると、実際ほとんどの人が聖騎士になるんじゃないですか?」

「え、ええ。クラスチェンジに至った方は少ないですが、おっしゃるとおり聖騎士の天職を授かる方は多いです」

「え? それ本当なの、神官さま」

「本当よ、レベッカ。あなたは高い確率で聖騎士の天職を授かることになるわ」


 やはりか。

 うーむ。


「レベッカさん。もし聖騎士の天職を授かったら――」


 先の言葉が出てこない。

 これを言ったらレベッカさんは傷つくのかもしれない。

 でも、言わなきゃならない。


「ジロー。私は国でなんか働かないわよ」


 言う前に撃墜されてしまった。実に察しがいい。


「でも……、レベッカさんだって騎士天職で悔しい思いをしてきたんでしょう? それが、聖騎士になれば、全部ひっくり返るのに、うちみたいな場末の騎士隊にいても、ほとんどメリットないというか……。給料だって出ないですし……。いや給料は、いずれは出そうと思ってはいますけども」


 だってそうだろう。

 友達だからって、一生の問題だ。

 草野球のチームに大リーガーを引き止めて腐らせるようなもんだ。


 だが、レベッカさんはやれやれと肩をすくめた。


「バカねジロー。そりゃあね、聖騎士ともなれば凄いわよ。お城に個室が貰えて、戦争にもほとんど行かないでいいし、近衛騎士だから皇族とも親しくなれて。国でもトップグループに属することができるでしょうね。……でも、ルクリィオン姫の話、聞いたでしょう? そうでなくても、アイザックのことだってあるのに。私がそんなところで近衛騎士なんて、やるわけないじゃない」


 そうか……それもそうだったな。

 どんなに高待遇だろうが、レベッカさんにとっては、片想いしていた相手の仇そのものなのだ。そんな場所で働けるわけがない。


「すみません、浅はかでした」

「いいのよー。私が隊に縛られて選択を見誤ると思ったんでしょう? ……ジローは優しいから」


 見透かされていて恥ずかしい。

 だが、そのとおりだ。


 この国でなくても、他の国で働くという手もあるだろう。聖騎士なら引く手数多なんだろうし。

 だが、レベッカさんもさすがに外国に行ってまでとは考えてないのかもしれない。というより、降って湧いたような話だ。また冷静になったら、別の選択肢が出るのかもしれない。今はまだ、俺が「騎士隊にこだわらなくてもいい」ということを、示してさえおけばいい。


「まあ、とにかくそれじゃあクラスチェンジしてもらいましょうよ。聖騎士じゃない可能性もありますし」

「う、うん。そうねー…………って神官さま?」


 神官ちゃんが難しい顔をして、チラチラとイオンさんのほうを見ている。

 そして、


「……ルクリィオン姫? ほんもの?」


 そう小さく呟いた。



 ◇◆◆◆◇



「つまり、神官さまはルクリィオン姫を知っていたんですか?」


 焦って訊く。ヤブヘビかもしれないが。


「いえ……遠目に見たことがあるだけです。ですが、駆け落ちしたと聞いておりましたけれど」

「まあ、それは話すと長くなることでして……。その前に、誓って欲しいんですよ、この事を口外しないと。めちゃくちゃなこと言ってるかもしれませんが」


 神官ちゃんににじり寄る。

 考えてみたら、神官ちゃんには精霊通信がある。

 こうしてる間にも「速報! 速報! ルクリィオン姫発見!」と電波飛ばされちゃう可能性があるのだ。

 まあ、実際にそれをやったらディアナかシャマシュさんが気付くだろうが、ジャミングできるとも思えない。


「あ、あの……ジローさん。わかりましたから、少し落ちついて、最初から説明してください」

「わかりました」


 神官ちゃんにイオンさんとシャマシュさんのことを説明する。

 嘘は交えず、そのままストレートに。今更、誤魔化しようもないからな。

 それに、これからエリシェで暮らしていくのに、神官ちゃんの協力は必ず必要になってくるのだ。

 説明はイオンさんにお願いした。本人から話したほうがいいだろう。


 イオンさんの口から紡がれる話に、神官ちゃんは驚いたり涙ぐんだりした。

 少なくとも同情的にはなってくれているようだ。


「なるほど……事情はわかりました。緋色の楔スカーレット・ウェッジのことはレベッカとシェローから聞いていましたから。……それに、今日の私は神官としてではなく、一人のエルフとしてここに来ています。大丈夫……ここでの話はすべて胸に納めておきますよ」


 神官ちゃんは、そう言ってニッコリと笑った。


 だが、秘密の話はまだこれからだ。すべて終わったら口外しないように、精霊契約をしてもらおう。神官ちゃんを信じないわけではないが、もし裏切りがあった場合、誰にとってもクリティカルすぎる。


「で、どうしますか? 獄紋……祓うのでしょう?」

「そうですね。……いや、先にレベッカさんのクラスチェンジからお願いできますか」


 別にどっちからでもいいんだけど。

 クラスチェンジのほうが簡単そうだし。ディアナでもできるくらいだからな。


 神官ちゃんが、レベッカさんの手を握る。

 いつもの眩しい光と共に、クラスチェンジはあっさり完了した。


「……どう? レベッカ」

「楽しみですね。やっぱり聖騎士なのかな」

「タイチョーどの凄いであります。マリナもいつかクラスチェンジできるでありますか?」

「……聖騎士になるの?」


 みんな期待でワクワクだ。


 レベッカさんが、無言で天職板を出す(見えないけど)。

 そして、静かに自らの天職を確認。

 見開かれるレベッカさんの瞳。


「ど……どうだったんですか……? いや言いにくいものだったら、言わなくても……」

「え、う、うん。そういうんじゃないんだけど、あはは……。騎士の天職がなくなって、クラスチェンジしてるのよ」

「はい」

竜騎士ドラグーンだって」


 マジか。



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