ディアナは小躍りでもしそうなほどのテンションで、グイグイと抱きついてくる。
経験値の低い俺に、このアクシデントは対処不可能!
鼻腔をくすぐる石鹸の香りと、密着した身体のその柔らかさで、早くもノックアウト寸前だ。
助けを求めるように、みんなを見る。
視線がぶつかる。みんな、俺とディアナのことを見ている。
凝視していると言ってもいい。
一番広い部屋といっても、所詮は宿の一室。密談をしていたから密集状態。なんとも言えない居た堪れなさだ。
唯一の救いは、部屋が薄暗く、そこまで視線を強烈に感じるほどではないって事か。
ディアナが出した薄明かりの光精霊が二つ三つ浮かんでる程度だからな。
「運命ッ……! これは運命なのです……」
うわごとのように俺の耳元でつぶやくディアナ。
しかし、さあ……どうしよう。
どうすればいいんだ? これ……。
心の準備ができていなかった。まさか、いきなり抱きつかれ「運命の人」だとか言われるとは……。
俺が固有職のことを打ち明けたからか、それともスキルのことを打ち明けたからか。
どちらかがディアナの琴線に触れたらしいのは間違いない。
しかし「運命の人」か……。
本当のことを言えば、うれしい。
すこし困惑もしてるけれど、こんな風に言われてうれしくないわけがない。
だが――
俺は、多少の名残惜しさを感じながらも、両手でディアナの肩を掴んで引き離した。
ディアナがキョトンとした顔で俺を見詰めてくる。
「ほら……みんな見てるから」
「関係ないのです。抱きついちゃダメなのです?」
「いや……うーむ」
ダメ……かな?
いや、別にダメじゃないかな?
俺がちょっと恥ずかしいだけで、やわらかくてあったかくて、むしろ推奨したいくらいだけど、でもしかし、だがしかし。
「じゃあ次はマリナが抱きつきたいであります! 姫ばっかりズルいであります!」
マリナが立ち上がり堂々と宣誓する。
なんて男らしいやつだ。騎士だから正々堂々としてるんだろうか。
「おお、じゃあ私も立候補したいな。先輩奴隷方に倣って」
シャマシュさんまで……。
え、なにこれ? 奴隷によるご主人さま籠絡イベントかなにか?
いや、シャマシュさんとはまだ奴隷契約してないけど。
嬉しいっちゃ嬉しいけど、レベッカさんが真っ白い顔して見てるのがなんか怖いんですけど!
「ちょっと! なんなのです、いったい! ご主人さまは私のご主人さまなのです!」
ディアナがマリナに歩み寄り文句を言う。
「姫はドクセンヨクが強いのであります。主どのはマリナのご主人様でもあるのであります。そこだけは絶対に譲れないのであります」
「なっ! マリナのくせに!」
マリナも負けじと言い返し、終いには言い合いになる二人。
マリナは最初のころと違って、今ではわりと言いたいことを言うようになっていて、特にディアナとは毎日いっしょにいる仲だけあって、かなり気易い関係だ。
もちろん、マリナはディアナに対して常に一線は引いているけど。
「ハハハ、愛されてるなぁアヤセくん。まあ、別にいいじゃないか全員抱いてやれば」
「いやらしい言い方しないで下さいよ、シャマシュさん……」
だが、そうだな……。
ちょっと抱きしめるくらい軽いスキンシップの範疇なのかも……。
でも、シャマシュさんみたいな肉感的な美女を抱きしめてしまってもいいのだろうか。後でおっかないオジサンがやってきて、「ワシのスケになにしてマンネン」とか言い掛かりをつけてくるんじゃなかろうか。
シャマシュさんが、今だにやり合っているディアナとマリナを横目に呟く。
「なんだったら――」
おずおずと両手を広げ、
「ホラ……私から抱きしめてくれたまえ。思う存分。なんだったら、それ以上のコトにまで発展してもいい……。ベッドもあるし…………」
妖しく舌で唇を湿しながら、上目遣いでにじり寄ってくるシャマシュさん。
なんてこった、ただのエロ女じゃないか。イオンさんはなにをしてるんだ。
見ると、イオンさんはベッドの縁に腰掛けて、手で顔を覆って縮こまっている。が、指の隙間から覗いているのがハッキリ見えている。
……ああ。イオンさんはガチの温室育ちのお姫さまだっけ。
ちょっとタダレた感じが出すぎたかもしれない。
昨夜、レベッカさんがすっかりその気になって、エレピピまでOK出してきたけど、二人からすれば、いっしょに暮らしている俺の奴隷であるディアナとマリナは、当然、すでに俺のお手付きであるという考えがあっただろう。
そして、それは当然のことだ。
まあ、ディアナに関しては多少事情が複雑なので、そうでなかったとしてもまさに「事情があるから」なんだけど、マリナに関しては本当に「なんで?」だろう。正真正銘の「俺の奴隷」なんだから。
実際には、最初のころに手を出そうとして失敗したという経緯があるにはあるが、それももう何ヶ月も前の話。
だからもう、こうなったら我慢する必要ないんじゃなかろうか。
思い切ってタダレきってしまってもいいんじゃないか。
そういうアレがムクムクと湧き起こってきてしまう。
だいたい、本人がOKだったら悩む必要ないじゃない……。
ほら、こんなに柔らそうな
いやまあ……そうだとしてもさすがに、今日ここで! っていうつもりはねーけどさ。
「ね、ねぇジロー……」
終始無言だったレベッカさんがおずおずと口を開く。
黙ってずっとこっちをガン見してて、けっこうプレッシャー感じてたんだが、ついに怒られるのだろうか。
お姫さまの前でなにやってんの! と叱られるかも。
レベッカさんはなんだかんだ言っても、イオンさんのお姫さま時代を知っている人だし、俺の何倍もこの世界の身分差について実感を持っているだろうから。
と、思ったりしたのだが、違った。
だいぶ違った。
「順番なら……最初に出会った私が最初でも……いいんじゃないか……なぁー? なんて……」
「え、えええええ」
「私もジローに抱きしめてもらいたいかな……なんて……。あー、えっと。ほら、今日、私がんばったし。たくさんモンスター倒したし…………天職も新しくなったからさ…………ね?」
ご褒美って……。そんなんでいいのか、レベッカさん……。
そりゃあね、俺はいいよ! いいに決まってるけどさ!
それに、もはや順番なんかどうだっていいんだけどさ! てか、そもそもディアナからくっついて来ただけであって、別に俺が「順番に抱いてやろう」的な発言したわけでも、雰囲気出したわけでもないんですけど!
しかし、俺も男だ。
ディアナもマリナも、レベッカさんなら文句はあるまい。なんたってタイチョー殿なんだから。
よよよよよし。やってやらぁああああ。
さすがに、ここまで求められて逃げるわけには行かないぜ。
「……ダメ?」
「いえ。僕でよければ」
俺は、ベッドの縁に座るレベッカさんの手を取り、立ち上がらせた。
そして、立ち上がらせたその勢いのまま――
思い切って、両腕でギュッとその身体を抱きしめた。
「あっ……」
耳元で小さな吐息が漏れる。
熱い、レベッカさんの身体。その確かな熱量が触れ合った肌から伝わってくる。
震える背中。
首筋に掛かる少し濡れた赤髪。
控えめに俺の背中に回された指先がたどたどしく背中に触れる。
じんわりと火照る体から、レベッカさんの緊張が伝わってくる。
抱き合うと、お互いどんな表情をしているのかはわからないが……。
いや、正直、俺もいっぱいいっぱいだ。
ただ抱き合うだけで、これだけの情報が体から体へ流れてくるとは思わなかった。
「あーーーッ!」
「タイチョーどのが! ついにその気になったであります!」
ディアナとマリナが騒ぎだす。
いや、最初からこっちガン見してたけど、俺の思い切った行動に一瞬放心していたようだ。
「いやはや、いいね。実にいいね。すごくいい。見てるこっちがドキドキするな!」
シャマシュさんは吐息を荒くして、抱き合う俺とレベッカさんの周りをぐるぐる回る。
イオンさんはさっきと同じように顔を隠したまま、だいぶ前のめりになっている。
エレピピはこっそりマリナの後ろに並んでいる。
神官ちゃんは、ニコニコと嬉しそうにお茶を飲みながら、こっちを眺めている。
エトワはあまり興味がないのか、寝てしまった。
レベッカさんから体を離す。
熱く上気したレベッカさんの頬。潤んだ瞳。
俺に顔を見られるのが恥ずかしいのか、とっさにうつむき自分の髪で顔を隠した。
そして、小さく、ぎりぎり聞こえるかどうかという声音で「ありがと」と呟き、ふらふらとベッドに腰掛け、そのまま倒れこんでしまった。
そして、「う~」と唸りながら自分の体を抱いてバタバタと身をよじっている。
……ふぅ。緊張した。童貞にはハードルが高い。
しかし、俺の前には順番待ちの列が! 嬉しいような生殺しのような……。
「では、次はまた私なのです!」
「あっ、ズルいであります! 姫は二周目でありますから最後でありますよ!」
「ななな!」
ということで、次はマリナを抱きしめることになった。
うずうずと俺の前に立つマリナ。
マジかこいつ。
「で……では、今日は主どのを抱きしめてもいい日ということでありますので……」
いつ、そういうことになった?
てか、抱きしめたいと思ってたのか……?
爛々と輝くマリナの深紫の瞳。
期待と、ちょっぴりの不安がないまぜになった表情。
まあ、でも。
当然だけど、俺だって抱きしめたいという願望はあった。
――あり続けた。と言ってもいい。
ディアナに対してもマリナに対しても、一緒に住んでるくせに、そういう関係にはならずホームジェントルマンやってたんだから。
なんだったら、一気に野獣になって今日ここでアレコレしまくりたい、やりまくりたいという欲望だってなくはない。
当然だろう。男だったら。誰でも。
「主どのっ!」
こっちから男らしく積極的に抱きしめにいったほうがいいのかな? と、童貞臭いアレで躊躇していたら、マリナから抱きしめられてしまった。
フワリ――としたものではない。けっこうかなり力強くグッと抱きすくめられる。
「はわわわ……。あ、主どのぉ……。ハァハァ……」
マリナのくせっ毛が、頬を、首筋をサワサワとくすぐり、なんとも言えない感触。
ひと目をはばからないというかなんというか、グイグイと胸を押し付けてくる。
こりゃ、ヤバイ。健康になっちゃう!
「あ、あるじどのあるじどの……。…………ガブゥ」
「い!? いででででででで! 噛んでる噛んでる!」
感極まったというかなんというか、わけわからなくなったマリナが首筋に噛み付いてきた! 甘噛みとかじゃなく、けっこう辛噛み!
「あむあむあむぅ。あるじどのおいしいであります……」
「ちょ、ストップ! ストップ!」
マリナを引き離す。
やっぱり頬を上気させてご満悦の表情。
どうしてこうなった! 俺はマリナの教育方法をなにか間違えたのだろうか。
こんなのご主人さま失格だよ!
マリナは、ふにゃっとベッドに倒れ込んでしまった。
「……つぎ、あたし?」
「え……エレピピもやるの……?」
「当然」
レベッカさん同様、ベッドでミノムシになったマリナを横目に、エレピピが前に出る。
彼女は、今日は地味に住民の避難誘導を頑張ってくれてた。
「……じゃあどうぞ。あたしの身体、楽しんでいいよ? 若旦那」
ニヤニヤと含み笑いしながら両手を広げて見せるエレピピ。
眠そうな顔で挑発的なことを言ってみせる。けっこう経験豊富なのかもしれない。舞台女優やってんだし、枕営業とかあるのかも……。
「……ん? なんか失礼なこと考えてる顔。あたし、これでも騎士だからね。変なことしたことないよ」
「いやいや、これだって十分に変なことなんじゃないか?」
「……仕えるべき主さまは別でしょ? わかってるくせに」
「わからんよ」
とはいえ、エレピピも両手を広げて準備万端。
いまさら「お前はスルー」とか言えるわけもない。
「……そうだ。若旦那ちょっと……いい? ちょっと屈んで……。そう、それっ」
「むがっ」
わけもわからず屈んだところ、思いっきり胸に顔を挟まれる形で抱きしめられた。
「…‥どう? むかし、ママが教えてくれたの。男の落とし方なんだって」
「むがもが」
落とし方というか、呼吸が苦しくてホントに落ちそうなんですけど!
そりゃあ、エレピピはけっこう豊かなお胸をお持ちですけどね!
「……ふふ。こうしてると小ちゃな子どもみたいね、若旦那」
「むぐぐご」
けっこうバカ力で抱きしめてくるエレピピ。
もっとソフトな感じじゃないと楽しめないよ!
引き剥がそうともがく。
「……あっ! ……ン」
こぼれるエレピピの吐息。
力が弱まったところを脱出する。
「ぷはぁっ」
「……もう。若旦那のえっち」
自分からやっておいて、両手で胸を抱きジト目を向けてくる。
俺は無実だ!
「さあ、いよいよ次は私かな? かな?」
シャマシュさんが両手の指を忙しなく交差させながら、前に出てくる。
なんでこの人はこんなにテンションが高いんだ? お酒飲んだからか?
「アヤセ君。私の種族はね、本来こういうのが大好きらしいんだ。私も祖母からはいろいろ聞かされていたが、今の今まで半信半疑でね。要するに、信じていなかったんだが……」
こういうのって……。
「胸の高鳴りが止まらないんだ。身体中が熱くて……まるで血が沸騰しているようなんだよ。今まで生きてきて、一度も感じたことがない感覚だ。この胸の痛みも、この甘い痺れも……。全部、全部きみにぶつけたくて堪らないんだッ!」
シャマシュさんが、両手を広げて襲い掛かってくる。
が、
「痛いッ!」
ガインッ! と透明な硬いなにかにぶつかり後ろにひっくり返ってしまった。
すぐに、呆然とした顔で起き上がり、その透明ななにかに触れる。
「…………」
「な、なんですかこれ」
俺も触ってみる。
透明な壁……のようなもの……?
「神官。これは君の仕業だろう。どういうつもりだい? 精霊結界なんて」
神官ちゃんはシレッとした顔で、お茶を飲んでいる。
よく見ると、結界? は透明ではなく、薄い桜色をしている。
神官ちゃんが、立ち上がり、さらになにかを呟く。桜色の結界の範囲がさらに狭まり、シャマシュさんを囲う。文字通り、結界に閉じ込められてしまった格好だ。
なんだかよくわからないが、助けてくれたんだろうか。
このままだと、シャマシュさんという淫獣に襲われて酷いことになると……?
「おい、冗談はやめてくれ。こんな結界、破ろうと思えば破れるんだぞ」
「こんなところで魔術を使って?」
神官ちゃんが口を開く。
そしてそのままツカツカと歩み寄り、まるでシャマシュさんに見せつけるかのように、ポフッと俺に抱きついてきた。
さらに、ペロッと舌を出して見せる。
「し……神官さま……!」
夢のエルフ! まさか神官ちゃんに抱きついて貰えるとは、まさしく感無量!
てか、いやホント神官ちゃん、ちっさい。
レベッカさんとかマリナとか、ちょっと大柄だから余計にそう感じるのか。
華奢で可憐な神官ちゃん。
それが今! 俺の腕の中に!
うおおおおおおお!
パァン! という音と共に、桜色の破片が飛び散り空中へと溶け込んでいく。
シャマシュさんが精霊結界を破ったらしい。
「ひどいひどいひどい! ひどいじゃないか順番だったのに! 私になんの恨みがあるっていうんだ」
順番なんか、もはやどうでもいいような気もするが、確かになんで神官ちゃんが突然こんな行動をしたのかは気になる。
謎……と言ってもいい。
見てたら参加してみたくなったのかな。エルフの考えることは人間にはわからないぜ。
「見ての通り、順番ということなら私のほうが出会ったのが先だからですよ。夢幻の大魔導師以来の固有職持ちで……。私が祝福を授けたんですから……」
「ぬっ……ぐぬ。……そういうことなら仕方がない」
「あれっ? ずいぶん物分かりがいいんですね」
会話を始める二人。神官ちゃんは俺に抱きついたまま。
「私は新参者だからな。おこぼれをいただけるだけでも御の字だよ」
やたらと低姿勢なシャマシュさん。これには神官ちゃんも困惑気味だ。
「私、魔族ってもっとワガママで性格の悪い種族だと思っていました。ちょっとイジワルすれば本性をあらわすと思ったのに……」
「そうなのか? 他の魔族は知らないが……私はこんなものだよ」
神官ちゃんも、魔族とはほとんど交流したことがなかったってことか。
「まあ、確かに私も聞いたことがあったよ。エルフはみんな私たちの肉感的な身体を羨んでいて、何かにつけ、突っかかってくるって。今回のもそれなのかい?」
瞬間。
ピキッという音と共に、神官ちゃんの気配が変わった。
「にに、ににに、肉体がなんですってぇ…………?」
「ん? 神官も気にしていたのか? そんなに……
「前言撤回! やっぱり魔族は悪です!」
俺から離れ、相対する神官ちゃんとシャマシュさん。
まあ……うん。神官ちゃんは掛け値なしに天使だけど、シャマシュさんとは属性が違いすぎるよな。同じ土台で勝負しようというほうが間違いだよ……。
まさしく天使と悪魔だ。どっちも需要ある!
だけど、いまにもケンカというか、天使と悪魔の終末戦争はじまりそう。
魔法合戦になったらこの辺りは焦土と化すぞ!
――なんて、さすがに二人ともいい歳こいた大人だ(見た目はともかく)。宿屋でドンパチ初めたりはしないだろう。
「まあまあ、神官さま。シャマシュさんも悪気はないんですよ」
「ジローさんは騙されているんですよ! あれは悪い女です。男をダメにするやつです!」
「う……まあ、確かにそういう感じは否定できませんが……」
というか、うちの周りにいる女性は全員そういうタイプな気がしてならない。
ズブズブに甘やかされて無限の安寧に沈み込められてしまいそう。まあ、そうなるといつか必ずツケを支払う時が来るのがわかっているから、そうならないってだけで。
「そんなことより神官。どさくさに紛れて私のご主人さまに抱きつきましたね」
「……え? ディ……ディアナさま……」
近くで成り行きを見守っていたディアナが、怒り顔で神官ちゃんに詰め寄る。
ディアナは騎士隊のメンバーには甘いけど、神官ちゃんにはけっこう厳しめだ。
「で、でも、ほら。あの魔族だって、すっかりその気で……」
しどろもどろに弁明する神官ちゃん。
ハイエルフってどんだけ偉いんだろ。ディアナにとって普通のエルフは全部子分みたいなもんなのかな。今日、姿を現さなかったルクラエラのエルフも、後でケジメ付けられたりすんのかな。
「あれはいいのです。私の妹奴隷になるのですし」
「そ……そうなんですか」
「ちょっとこっちに来るのです……」
ディアナに連れていかれて説教される神官ちゃん。実にシュールな絵面だ。
目の前には、さっきよりちょっとテンション下がっちゃったシャマシュさん。
さっきとは打って変わって、自分の白い髪をいじくりながらモジモジしている。
こうして、改めて見ても本当に肉感的だ。
薄明かりの下で浮かび上がる肢体が、たまらなく魅力的にその存在を主張してくる。
「……ど、どうするんだい? わ、私はやっぱり少しでもいいから、抱きしめて欲しいんだが……。だって……もう、そのつもりだったから……ちょっとだけでも、触れてもらわないと……きっと今日は寝付けない……」
うわごとのように呟く。いちいちエロくて困る。
俺は、一歩だけ近づき、右手でシャマシュさんの頬に触れた。
驚き見開かれ、すぐにトロンと蕩ける瞳。
耳の上の髪をかき上げるようにして、手を頭の後ろに回す。
そして、抱き寄せた。