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第111話  帰路は夢の香り


「む……? ようやく起きたな。おはよう、アヤセくん」

「ん……。おはようございます、シャマシュさん」

「グッスリと良く眠っていたよ」

「そりゃあ……昨日は疲れましたからね。いろいろと」


 あの後、結局もう一部屋とった。

 リアルお姫様であるイオンさんに気を使ったというのもあるが、初日の夜だ。

 気兼ねなく、女だけで話したいこともあるだろうから。


 ……俺はというと。

 当然一人で寝ました。はい。

 シャマシュさんは、奴隷の初仕事ということでジャンケンの結果、俺を起こしにきただけです。はい。

 みんなの肌の温もりと柔らかさを思いだし、いまいち寝付けぬ夜でした。はい。


 昨日。

 シャマシュさんを抱きすくめた後、シャマシュさんは「ふわー」とアイちゃん的な奇声を発し、ものの数秒で頭からケムリを出してグッタリと気絶してしまった。一瞬現場が騒然となったのは言うまでもない。

 抱きしめた時は、その身体のあまりの熱さに、熱でもあるのかな? とも思ったが、初めての経験で、のぼせ上がっちゃったのが原因らしく、しばらく後にはちゃんと目を覚ましたんで良かった。

 その後、もう一周! もう一周! とうるさいディアナを抱きしめてから、神官ちゃん立会いの下、シャマシュさんが俺の奴隷になるという精霊契約を完了させ、すぐに俺は部屋から脱出した。

 もうあれ以上あそこにいたら魔獣殺しが野獣にクラスチェンジして、俺の魔剣が濡烏になっちゃいそうだったのだ。


 さて、今日はいろいろあったがエリシェへ帰る日だ。

 身支度を整え、宿の会計を済まして外に出た。

 宿の前では、昨日の朝と同じように、マルコが待ちかまえていた。妹さんもいっしょだ。昨日、そのまま鍛冶屋においてきたからな。

 酒の席の出来事とはいえ、昨日は半分くらい勢いまかせで妹さんの脚を治してしまったが、もちろん完全に無償でというほどお人好しでもない。本人次第ではあるが、ちょっとした頼み事をしようとは思っていたんで、本人から来てくれたのは好都合だ。

 ま、ほとんど善意の押しつけだったし、そこまでデカいことを頼むわけじゃないけどな。


 俺が外に出ると、マルコは一瞬笑顔を浮かべ、しかし言葉に詰まったのか、なにも言わずモジモジし出してしまった。

 そんな兄の様子に肩を竦めた妹さんが、ヒジでせっつく。

 ま、すでに知らない仲でもないし、こっちから話しかけるか。


「よう。昨日はけっこう飲んでたけど二日酔いは大丈夫か?」

「お……おにーさん……」


 おいおい、そんな熱っぽい目で見るなよ……。


「今朝、妹に聞いて……あの……俺……」

「そんなにビビらなくても、別に変な要求したりしないって」

「そ、そうなのか……? でも、俺なんにもしてないのに……。それどころか、おにーさんを騙して石だって売りつけたのに。それなのに、妹をモンスターから救ってくれて……脚まで治してくれて……」

「モンスターから救ってくれたのは、彼女たちだからな。そっちに感謝しろ。あとは、まあ……運が良かったんだな」


 そうだ、運が良かったとしか言いようがない。

 大精霊の思し召しというやつだな。


「まあ、それにもう俺は、昨日さんざんおまえから感謝の言葉聞いたから、もういいし」


 昨日は酔ったマルコからしつこいほど聞かされた。酔っぱらいに絡まれていたとも言えるが。


「それに……頼みたいこともある。妹さんの事で恩に感じてるんならな」


 俺はバッグから、ここの人が「シロ」と呼ぶ鉱石を一袋取り出した。

 一昨日、マルコから銀貨一枚で買ったやつである。

 地元では、クズ鉱物として捨てられているという話だが、俺の鑑定によるとけっこう珍しいものらしい。

 レシア・メタル群……とか出ていたっけ。レアリティAということなので、珍しいものなのは間違いない。


「これをこれからもできるかぎり回収して集めておいてくれ。時々、回収に来るから。まあ、余裕があるならエリシェまで届けてくれてもいいがな」

「えっ? でも、それ……」

「みんな捨ててるんだろ? 使い道なくて。だから、俺が買い取るからさ。おまえはできる限り集めてくれればいい。まあ、それほど出せるわけでもないけど」


 この鉱石は、川で砂金を取るときにいっしょに取れるという話だから、砂金採りのオッサンたちに上手く交渉して譲ってもらうようにしなきゃならない。けっこう、コミュ力が必要になるかもしれないが、元は捨てていたものだ。なんとかなるだろう。

 なんだったら、砂金と寄り分ける仕事を手伝う駄賃としてもらうなんてのもいいかもしれない。チマチマと手作業でやってて、かなり面倒くさそうだったし。


 それでまあ、一袋で銀貨一枚くらいでの買い取りならお互い悪くない取引だろう。

 銀貨一枚はだいたい1万円から3万円くらいの価値。マルコと妹なら、半月ぐらいならそれだけでギリギリ食えるはず。もちろん、いままで通り自分も砂金採りを続ければいいしな。

 この仕事がまともにこなせて信用できそうだったら、もっと別の仕事を頼んでもいいし、うちの支店をルクラエラに出すという手もある。妹を店員として雇ってもいい。


 なんにせよ縁だ。


「ま、とにかくやってみろよ。俺に恩を感じてるんならな」

「そ、そんなんでいいのか?」

「いいよ。……ああ、まだ家に在庫残ってるなら取ってくれば買い取るぞ。俺たちもう帰るから、すぐ取って戻ってこれるなら」

「すぐ持ってくるよ! ありがとうおにーさん!」

「じゃ、昨日の鍛冶屋で待ってる。早めにな」


 マルコと妹が元気に走っていった。

 昨日まで歩くこともできなかったのに今では普通に走れる。現代医療では絶対に成し遂げることができない魔法。

 俺が現代日本で、このことを公表したらどうなってしまうんだろう。

 ふとそんなことを考えた。




 ◇◆◆◆◇




 あとは、大親方のところに挨拶に寄って、帰るだけだが――


「ご主人さま。私と神官はちょっとギルドに顔を出してくるのです」

「なんか用事あったっけ」

「ここのエルフに少し」

「ああ……」


 こわーい笑顔で去っていくディアナと神官ちゃん。

 可哀想に。救援メッセージを既読スルーしたから、ヤキを入れられるんだな。

 精霊通信社会の闇を垣間見たぜ……。


「シャマシュさんとイオンさんはどうします? このまま帰るんですか?」


 シャマシュさんとイオンさんは目立つとあれなので、フードをかぶっている。

 シャマシュさんは魔族ゆえ、イオンさんは獄紋は取れたが王族ゆえ。

 さらにディアナもかぶってるんで、実に怪しい集団ができあがった。秘密主義の魔術結社みたいだ。


「帰る? とは?」


 シャマシュさんが小首を傾げて訊ねる。


「家に」

「家? とは?」

「ですから、坑道の」


 目元に涙まで溜めて、シャマシュさんが詰め寄ってくる。


「君は……なにを言っているんだ……? いっしょに、暮らすんだろ……? あれは嘘だったのか? 契約だってしたのに……?」

「いえいえいえいえ。そりゃあ言いましたけど! まさか昨日の今日でっていうわけにはいかないじゃないですか! そっちだっていろいろ支度とかあるでしょう」

「そんなものはない。このまま君の屋敷までいっしょに行く。私もイオンもだ」

「マジすか。いや別にそれならそれでも構いませんが……」


 引っ越しってそんな簡単なものだったっけ?

 二人の場合、ほとんど隠れ家みたいなものだったから関係ないのかな。でも、荷物は少なからずあるだろうし、家具だって……そういうのは後でいいのか。


「あ、あの~……」


 イオンさんがおずおずと手を上げる。


「私はいくつか忘れ物取りに戻りたい……です」

「ですよね!」


 元お姫さまのイオンさんのほうが感覚が普通だよ!


 そんなこんなで、シャマシュさんとイオンさんは、忘れ物を回収しに家へ戻ることになった。二人が戻ってくるまで、大親方のところで時間をつぶすことにする。


 シャマシュさんとイオンさんが住んでいた、坑道の中に建つ家のことを思い浮かべる。

 シャマシュさんがデザインした不思議な形の家。悪い家ではないけれど、やはりあの薄暗く空気の冷たい場所で暮らすのは堪えただろう。

 新しい生活が二人にとって心安らぐものになればいいのだけど。


「おお、やっと来た! 寄らずに帰っちまったのかと心配になったぞ」


 大親方が店の前で待ち構えていた。


「どうしました?」

「急な話で驚くだろうが、頼みたいことがあってな」


 なんだろう。昨日渡した安来鋼ヤスキハガネをもっと売ってくれって話かな。かなり盛り上がっていたし。

 ……いや、それとも酒のほうかもしれない。

 まあ、どちらも商売としては悪くない。前向きに検討したいところ。


「聞きましょう」

「ワシをな、ダンナのところの専属鍛冶師にしてくれねぇか?」


 専属鍛冶師!? まさかの提案だな。


「えええ。なぜか訊いても?」

「一晩考えたんだがな。騎士隊やるなら装備はかなりの量が必要になるだろ? あれだけ戦えるんだ、きっとダンナの騎士隊はデカくなる。ちまちま注文出すよりは、自前で作っちまったほうがいい」

「え、いやそりゃありがたい申し出ですけど……」


 大親方が専属になってくれるなら、いろいろ捗るだろうけど、ペイできる感じがしないぞ。そもそも、騎士隊はまだ完全に趣味の活動でしかないのだし。


「なに、別に給金よこせとはいわねぇよ。老後の道楽みたいなもんだからな。それに、自分の食い扶持ぐれぇは自分で稼げる。工房を造るのも問題ねぇし、エリシェなら火の実も手にはいる。問題は鉄だが……」


 チラッチラッとこっちを見る大親方。

 ああ、安来鋼を持ち込んだからな。ああいう鉄が手に入って、それで装備が作れるならってことかしら。

 あれってけっこう高いから、全部を安来鋼で……となったら普通に破産するぞ。

 いや、破産は言い過ぎか。でも、決して安いものじゃないのは確かだ。


「鉄ならなんとか用意できますよ。ただ、昨日持ち込んだレベルのは無理ですね。もう少し普通の鉄なら」


 大親方が鉄を再利用する技術をどれくらい持っているのかわからないが、素性の良い鉄という話であるなら、いくらでも持ってこれるだろう。

 というか、身内になるなら秘密を打ちあけて日本の素材をなんでも持ってきて渡してみればいい。研究してなんか作ってくれるかもしれない。


 素材そのものは、手に入れようと思えばけっこうなんとかなる。

 買えば高いが、拾ったり貰ったりする分にはタダ同然だからだ。

 このへんは現代日本は強い。


 鉄……そうだな。ナイフ作りの趣味の関係で知り合った解体屋からトラックやバスの板バネを格安で売ってもらえるから、それを持っていけばいいな。あれは良い鋼だし。

 鏡がもっとデカかったら、車一台まるごと持ってっちゃうところなんだが。

 まあ、鉄素材は重いから運ぶのが大変だけど、そこは苦労しなきゃならない部分か。


「じゃあ決まりだな!」

「はい、大歓迎ですよ! こちらこそよろしくお願いします。……で、しかし専属っていってもどうするんですか? エリシェで店を立ち上げるってことです?」

「そうだな。旦那はエリシェのどのへんに住んでんだ?」

「街からは少し離れたところですよ。森の中の屋敷です」

「そうか。まあ、なんにせよそこから便が良いところに工房を建てよう」


 工房を建てる……か。

 だんだん話が大きくなってきたが、夢があって良い。

 なにより夢の鍛造工房。ナイフ趣味者としては、自分の工房(厳密には違うが)を持てるなんて夢のような話。

 しかも、俺には鍛冶師の天職もある。

 大親方に教えて貰えば、自分で短刀くらいは打てるようになるかもしれない。


 というか、ん? 刀造りのノウハウは書籍がいくらでも出ているし、動画サイトを見れば作刀の流れだって見れる。

 てことは、日本刀がそのまんま作れるってことか? ドワーフ大親方の技術を以ってすれば、作れないはずがない。


 うわぁ、そうじゃん。刀鍛冶やれるじゃん。夢が広がるな!

 刀は日本で売るのは厳しいけど、商売のタネにはなるだろう。この世界でも綺麗な刀は受けるだろうしな。


 シャマシュさんの家も建てなきゃだし、これから忙しくなりそうだ!



 その後、シャマシュさんとイオンさんが戻ってくるまでの間に話を詰めた。

 基本的に大親方が一人でエリシェに来るらしいが、ある程度軌道に乗るまでは、弟子が何人か手伝うのだとか。場合によっては、エリシェで新弟子を取るのも検討するのだとか。

 工房の立ち上げも、ドワーフたちがみんなで造るらしい。

 ルクラエラからエリシェまでは馬車で数時間。距離的には大したことないからな。

 ついでに、シャマシュさんの家も建ててもらおうかな。


 鍛冶道具もすでにあるし、エリシェの顧客の仕事(主にメンテナンス)は大親方がやるようにするとのこと。確か、シェローさんの大剣も大親方の仕事だったはずだ。シェローさん喜ぶだろうか。

 俺が注文した騎士隊の装備は、大親方がほぼロハで作ってくれるのだそうだ。


「いえ、それじゃあいくらなんでも、僕にとって美味い話すぎますよ。タダでだなんて」

「若けぇもんがそんなこと気にすんな。ダンナは商人だろう? わしを使って儲けてくれればいいんだよ。専属ってのはそういうことだ」


 要するに、うちの店の新部門として鍛冶屋が加わったということになるのか?

 運営資金は大親方が自分で稼ぐと言っているが、さすがに収支が赤字ではやっていけないだろう。騎士隊の装備も作りながら、商売としてもプラスにしてかなきゃならないのか。

 まあ、鍛冶屋のノウハウないから詳しいことはわからないが、大親方は地域ナンバーワンの鍛冶師だ。

 どうにでもなるだろう。大事なのは宣伝だな。


「エトワ」

「はい、ボス」

「聞いてたな。大親方がうちの身内になるってことは、鍛冶屋のほうもお前が金銭的なことは管理することになる。やれるな」

「任せてください!」

「よし」


 あとは実際に工房ができてから考えよう。

 俺自身の商売のほうも、いよいよ規模を大きくしていく時が来たのかもしれない。

 エリシェでも知り合いが増えたし、神官ちゃんも後押ししてくれるだろうから、多少出処の怪しいものを売ってもなんとかなりそうだ。

 今までは目立つのを恐れて地味な商売に終始してきたが、本気で稼ぐつもりなら、出せる力はこんなもんじゃないからな。

 とはいえ、急激にものすごい品を売るのも危険だから、徐々に……だな。


 話が終わるころ、汗みずくで息を切らせたマルコがやってきた。

 腰のポーチから、例の鉱石が入った袋を取り出す。


「今あるの……これだけだけど……。次から買ってくれればいいから、この分はあげるよ」

「いいのか? けっこうあるぞ。4袋分くらいか」

「妹の脚に使ってくれた精霊石分には足りないけどさ、これくらいしか俺、出せるものないし……」

「そっか。じゃあ貰うかな」


 受け取るとズシリと重い。金と同じくらいの比重だろうか。

 使い道不明だけど、いつかなにかに使えるだろう。日本で謎鉱石として売るのはさすがに危険だろうが。ネットで聞いてみるくらいはいいかもな。


 またしばらくして、ディアナと神官ちゃんが戻ってきた。


「どうだった? 結局、なんで助けに来なかったって?」

「私から説明しましょう。どうやら、ここの神官は普段ほとんどモンスターとは相対したことがなかったそうで、突然の大規模発生で臆病風に吹かれたようです。そして、街の有力者と共に『護衛』という名目で避難していたと」

「酷い話なのです。私に本来の力があったら、恐ろしい目に合わせてやるのですけど」


 なるほど。まあ、そんなようなところだろうとは思っていた。

 すでに終わったことだからどうでもいいな。


「この件は、私から市長へと伝えておきます。神官といえども、なんらかの沙汰があるでしょう」

「そういうもんなんですか」


 まあ、エルフには強大な力があり、それなりの給料も社会的地位もあるんだろうから、それに見合った働きをしなきゃならないもんなんだろう。



 しばらくして、荷物をバッグいっぱいに詰め込んだシャマシュさんとイオンさんが戻ってきた。

 本当は、今すぐいっしょにエリシェへ来なくても、落ち着いたらでいいと思うんだが、すぐに行くの一点張りだったんで仕方がない。

 まあ、シャマシュさんとはもう奴隷契約を済ましたし、イオンさんも獄紋が取れたのだし、さっさとしてしまったほうがいいというのも一理ある。

 しばらくは、みんなでいっしょに屋敷で暮らせばいいだろう。


「では……これからご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願いします」


 イオンさんが改めて頭を下げる。

 陽の光の下で輝くイオンさんの美貌は、他の誰のものとも違う神々しさのようなものがあった。聖属性というか、水のように清らかというか……。

 うん、これがお姫さまパワーだ。本物はやっぱちげぇな。


 そんなことを考えていると、ディアナが半眼で睨んでくる。ディアナは心を読んでくるから困るな。

 そんなに睨まなくてもディアナのことを引き合いに出したわけじゃないヨ。

 ディアナも十分超然としてるヨ。


「こちらこそ不便な生活を強いるかもしれませんが、よろしくお願いします。屋敷では、お姫さまといえど働いてもらいますよ。うちはメイドが一人いるだけで、仕事はたくさんありますから」

「望む所です。私はただのイオン。あなたの好きなように扱ってください」

「じゃ、特別扱いはなしでいきましょう」

「わかりました」


 オリカには悪いが、彼女にはイオンさんの素性は内緒にしよう。

 いっしょに働くにあたって、死ぬほど恐縮してしまうだろうからな。


「シャマシュさんもよろしくお願いします」

「ああ。私にもなんでも言い付けてくれたまえよ、アヤセくん。私はもう名実ともに君の奴隷! なんだからな!」

「あっはい」


 シャマシュさんは、昨日の夜からあんまり変わらないハイテンションを維持している。

 もっと言うと、抱きしめた後から、俺を見る目付きが違うような気がするが、これは気のせいだろうか。


「あ、そうだ。シャマシュさんには魔術を教えてもらいたいんだった。僕、魔術師の天職あるんで」

「おお! 手取り足取り教えるぞ! 天職のないイオンでも、そこそこ習得できたからな。アヤセくんならすぐに大魔術師になれるだろう」

「大魔術師は大げさでしょうが、すこしは使えるようになると便利そうですね」


 大魔術師か……。ぜんぜん現実感ない話だけど、また一つ楽しみができたな。


 やりたいこと。

 やらなきゃならないこと。

 たくさんありすぎて、すでにパンク寸前だが、一つ一つクリアしていこう。

 不安が全くないってわけじゃないが、夢いっぱいだ。


 そうして、俺達はルクラエラを後にした。

 たった二泊三日の旅行のはずだったけど、激動の三日間になってしまったな。



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