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第2話 懐かしい仲間との再会

ハーモニーヘイブンの街に入ると、すぐに冒険者ギルド「クロスロード」が目に入った


三階建ての立派な建物で、魔物の国の重厚さと人間の国の優雅さを併せ持つデザインだった


「立派なギルドね」

ゾルガは建物を見上げて言った


「ああ、俺たちのギルドより大きいかもしれない」

レオンも同感だった


「すげーな、これが新しいギルドか」

ザックが目を丸くした


「建物だけでも相当な費用がかかってそうだ」

トムも感心していた


四人が建物に近づくと、入り口で一人の大男が待っていた


身長は3メートル近くあり、額の中央に巨大な一つ目があった・・・サイクロプス族だ


上質な服を着ており、明らかに身分の高い人物だとわかった


そして、レオンの顔が驚愕に変わった


「まさか・・・モノ?」


大男の顔にも驚きが浮かんだ、そして次の瞬間、彼は大きな笑顔を見せた


「「うはははは!レオン!本当にお前だったのだな!!!」」


モノキュラスは豪快に笑いながら近づいてきた


「「久しぶりじゃないか、相棒!!!」」


「「モノ!!!本当にお前だったんだな!!!!」」

レオンも嬉しそうに叫んだ


「知り合いなのですか?」

ゾルガが驚いて尋ねた


「ああ」

レオンは興奮したまま説明した


「昔パーティを組んでいた仲間なんだ・・・でも、まさかここのギルドマスターだったなんて!」


モノキュラスはゾルガたちに振り向いた


「おっと、自己紹介が遅れたな!俺はこのギルドのマスター、モノキュラス・グランドストーンだ・・・でも、みんな『モノ』って呼んでくれ!」


彼の口調は、とても貴族とは思えないほどフランクだった


「初めまして、ゾルガです」


「俺はザック!」


「トムです!」


「おお、噂の奥さんと、護衛の方たちだな!」

モノは目を輝かせた


「いやあ、レオンが結婚したって聞いた時は驚いたぞ!しかも、こんなに美人の嫁さんを貰ってるなんて、羨ましいじゃないか!」


「モノ・・・」

レオンは苦笑いした


「相変わらずだな」


「うはははは!そうそう、副マスターも紹介しないとな・・・きっと驚くぜ!!!」

モノはギルドの中へ案内した


ギルドの中に入ると、受付カウンターの向こうから一人の女性が立ち上がった


人間の女性で、長い金髪と緑の瞳を持っていた

気品のある美しさで、明らかに良家の出身だとわかった


そして、レオンの顔が再び驚きに変わった


「まさか・・・エリナ?」


女性もレオンを見て驚愕の表情を見せた


「レオン!?本当にあなたなの?」


「どうだ、驚いただろ!!!」

モノが嬉しそうに叫んだ


「そうだな・・・」

レオンは複雑な表情をした


「昔、パーティを組んでいた仲間です」

エリナが説明し


「昔の仲間!?」

ゾルガは驚いた。


エリナと名乗った女性が近づいてきた

その動作は洗練されており、貴族的な教育を受けていることがうかがえた


「レオン、本当に久しぶり!元気だった?」

彼女の目には涙が浮かんでいた


「あなたが魔王国に行ったって聞いた時は・・・心配で心配で」


「エリナ・・・」

レオンは戸惑いながら答えた


「僕も元気だよ。君こそ、こんなところで副マスターをしているなんて」


「ちょっと待てよ」

ザックが口を挟んだ


「つまり、お前ら三人は昔仲間だったってことか?」


「そうそう!」

モノが説明した


「俺たちは『光の翼』ってパーティを組んでたんだ


レオンが剣士、エリナが聖騎士、俺が魔法戦士、それにもう一人仲間がいたんだよ」


「もう一人?」

ザックが興味深そうに聞いた


「魔法使いのアルバートだ」

レオンが答えた


「今は勇王国で宮廷魔術師をしてる」


「でも、あなたサイクロプス族ですよね?」

トムが疑問を口にした


「一つ目族って魔法戦士になれるんですか?」


「うはははは!そこが俺の秘密だったんだよ」

モノが豪快に笑った


「実は、俺は貴族の家に生まれたんだが、堅苦しいのが嫌でさ・・・身分を隠して冒険者やってたんだ」


「身分を隠して!?」

ゾルガが驚いた


「そうなんですよ」

エリナが複雑な表情で説明した


「私たちも最近まで知らなかったんです・・・モノが実はグランドストーン公爵家の出身だったなんて」


「公爵家!?」

レオン、ザック、トムが同時に叫んだ


「うはははは!でも、今でも俺は俺だ!!!堅苦しい敬語とかはやめてくれよ、仲間なんだから」


「そういえば、エリナも・・・」

レオンがエリナを見た


「ええ・・・」

エリナは少し恥ずかしそうに答えた


「私もシルバーソード伯爵家の出身なの・・・でも、モノと同じで、家を出て聖騎士になったの」


「つまり、貴族が二人もいるってことかよ!」

ザックが驚いた


モノとエリナは顔を見合わせて、少し気まずそうな表情を見せた


「実は・・・」

エリナが口を開いた


「私たちの家は隣り合った領土を治めているんです」


「そして・・・」

モノが苦笑いした


「俺たちの親父同士は犬猿の仲でな・・・領土の境界線やら、貿易権やらで昔からいがみ合ってるんだ」


「え!?」

レオンが驚いた


「それじゃあ、君たちは・・・」


「本来なら敵同士の家柄よね」

エリナが寂しそうに微笑んだ


「だから最初は、お互いの正体を知った時は大変だったの」


「でも、冒険者として一緒に戦ううちに分かったんだ」

モノが真剣な表情になった


「家の事情なんてクソくらえ!!!エリナは俺の大切な仲間だ」


「私もです」

エリナが頷いた


「モノは本当に良い人・・・家の違いなんて関係ないって思えるようになりました」


「だから何だ?」

モノが肩をすくめた


「俺たちは仲間だろ?身分なんて関係ないさ」


「紹介が遅れました・・・」

エリナはゾルガに向き直った


「エリナ・シルバーソードです・・・あなたがレオンの奥様・・・」


「はい、ゾルガです」

ゾルガは礼儀正しく答えたが、内心は複雑だった


「魔物と人間の架け橋になった方なのね・・・本当にお美しい」

エリナは心から感嘆した


「ありがとうございます」


「それにしても」

モノが感慨深げに言った


「まさかレオンが結婚してるとはな・・・俺たちが別れた時は、『一生独身でいる』なんて言ってたのに」


「そんなこと言ったっけ?」

レオンは困ったように笑った


「覚えてるわ!!!『恋愛なんて冒険者には必要ない』って」

エリナも笑った


「それが、こんなに素敵な奥様と出会って」


モノはゾルガを見た


「人生って面白いもんだな」


ゾルガは複雑な気持ちでこのやり取りを聞いていた

夫と昔の仲間たちの親密さが、少し羨ましくもあった


「実は・・・」

モノが声を潜め、ゾルガに向かって


「エリナが、君(ゾルガ)を推薦したんだよ『信頼できる優秀な冒険者で、異種族との協力に長けている』ってな」


「そうだったんですか」

ゾルガは驚いた


「ええ・・・」

エリナは微笑んだ


「レオンの人柄も知っているから、この仕事に最適だと思ったの・・・でも、まさか結婚していたなんて!」


「三年前に出会って、去年結婚したんだ」

レオンは説明した


「そう・・・おめでとう」

エリナの声には少し寂しさが混じっていたが、すぐに明るい笑顔になった


「きっと素敵な結婚式だったでしょうね」


「ああ、両国から多くの来賓が来てくれた」

レオンが答えた


「うはははは!俺も招待してほしかったぜ」

モノが残念そうに言った


「済まなかったな・・・」

レオンは苦笑い


モノが、場の空気を読んで口を開いた


「さて、詳しい話は明日からにしよう・・・今日は長旅でお疲れだろうから、宿の手配をしてある」


「ありがとうございます」

ゾルガは感謝した


「案内しますね」

エリナが前に出た


「街の中でも一番良い宿屋ですよ」


「俺たちも一緒に行くぜ」

ザックが言った


「そうそう、護衛だからな」

トムも付け加えた


宿へ向かう道中、モノが思い出を語り始めた


「いやあ、懐かしいな・・・レオンと俺とエリナで『光の翼』を組んでた頃は最高だったぜ」


「あの頃は毎日が冒険だったわね」

エリナも懐かしそうに言った


「でも、モノがまさか貴族だったとは・・・」

レオンが苦笑いした


「あの時、君は『俺は平民だ』って言ってたじゃないか」


「うはははは!バレるのが嫌だったんだよ・・・貴族だとわかったら、みんな遠慮しちゃうだろ?」


「確かにそうね」

エリナが同意した


「私も最初は身分を隠してたもの・・・」


「お前もかよ!」

レオンが驚いた。


「そうよ、でも、モノと違って、私はあまり上手に隠せなかったの・・・言葉遣いとか、作法とか、どうしても出ちゃって」


ザックとトムは、貴族同士の会話を興味深そうに聞いていた


「なあ、貴族の生活ってどんな感じなんだ?」

ザックが尋ねた


「退屈だぞ」

モノが即答した


「毎日同じような儀式とパーティーの繰り返し・・・俺には向いてなかった」


「私もです・・・」

エリナが同意した


「もっと人の役に立ちたくて、家を出たんです」


宿に到着すると、モノが振り返った


「明日、詳しいギルドの説明をするぜ!!!今夜はゆっくり休んでくれ」


「ありがとう、モノ」

レオンは感謝した


「お疲れ様でした」

ゾルガも礼儀正しく挨拶した


部屋に入ると(ザックとトムは隣の部屋)、ゾルガは窓から外を見つめていた

レオンが彼女の肩に手を置いた


「ゾルガ、もしかして気にしてる?」


「・・・少しだけ」

彼女は正直に答えた


「あなたとモノさん、エリナさんの間には、深い絆があったのね。それに、お二人とも貴族出身で・・・」


「確かにそうだ」

レオンは包み隠さず言った


「でも、それは過去のこと、今の僕にとって大切なのは君だけだ」


「私を愛してくれてるのはわかってる、でも・・・彼女はとても美しくて、あなたと長い歴史がある。それに貴族の出身で、私とは育ちが全然違う」


レオンは彼女の両手を取った


「君も美しいよ、それに、僕が君を選んだのは美しさだけじゃない・・・君の心、君の強さ、君の優しさに惹かれたんだ・・・貴族だろうが平民だろうが、そんなことは関係ない」


「本当に?」


「本当だ」

レオンは彼女を抱きしめた


「それに、モノもエリナも君を気に入ってると思う、明日からは大変になるけど、みんなで力を合わせて頑張ろう」


隣の部屋からザックとトムの声が聞こえてきた


「おい、トム。貴族ってすげーんだな」


「そうだな。でも、モノさんもエリナさんも気さくな人たちじゃないか」


「それもそうだ・・・レオンの仲間だから、きっと良い人たちなんだろうな」


ゾルガは夫の胸に顔を埋めた・・・確かに不安はあったが、夫の愛と仲間たちの存在を信じることにした


「ええ、一緒に頑張りましょう」


窓の外では、ハーモニーヘイブンの街が夜の灯りに包まれていた


明日から始まる新しい挑戦への期待と不安を胸に、四人は眠りについた


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