ヒュドラ討伐のニュースは瞬く間に世界中に広まった
異種族混成チームが強大なモンスターを倒したという話は、各国で大きな話題となった
『ハーモニーヘイブンの最強3豪傑』
ドラコ、ガレス、マリアはそう呼ばれるようになり、一躍有名人となった
それに伴い、各地から新しい冒険者たちがギルドにやってきた
人間、魔物、エルフ、ドワーフ、様々な種族の冒険者がハーモニーヘイブンを目指した
「今月だけで新規登録者が100人を超えました」
エリナが嬉しそうに報告した
「すげぇな!」
モノが感嘆した
「最初は50人しかいなかったのに」
ギルドは大繁盛し、永劫の迷宮の調査も飛躍的に進歩した
多様なパーティーが協力し合い、ダンジョンの深層に挑むようになった
受付嬢チームも大忙しだった
「ルナリアちゃん、この依頼書の計算お願い!」
オルリアが慌てながら言った
「わかりました」
ルナリアが冷静に対応した
「セシリア、新人の案内をお願いします」
ゾルガが指示した
「はい!」
セシリアが元気よく答えた
忙しくも充実した日々が続いていた
・・・・・
そんなある日の午後、ギルドに一人の男性が現れた
サイクロプス族の立派な身なりの男性で、モノによく似ていた
「兄さん!!!」
モノが驚いた
「久しぶりだな、マグナス」
男性は深刻な表情を浮かべていた・・・その男性はモノの弟、マグナス・グランドストーンと言い、ハーモニーヘイブンの共同責任者の一人である
「どうしたんだ、そんな顔をして」
モノが心配した
「実は・・・」
マグナスは周囲を見回した・・・
「重要な話がある、皆を集めてくれないか」
ゾルガたちも緊張した
マグナスの深刻な表情は、何か大きな問題が発生したことを物語っていた
「わかった」
モノが頷いた
「すぐに主要メンバーを集める」
やがて、ギルドの幹部たちが会議室に集まった
モノ、エリナ、ドラコ、ガレス、マリア、そしてゾルガとレオン
「で、何があったんだ?」
モノが尋ねた
マグナスは深いため息をついた。
「実は、両国の政府から連絡があった」
彼は重々しく切り出した
「永劫の迷宮の深層で、とんでもないものが発見されたらしい」
「とんでもないもの?」
エリナが聞き返した
「古代文明の遺跡・・・そして、封印された何かだ」
マグナスの目は恐怖を宿していた
「調査チームが派遣されたが、全員行方不明になった」
会議室に重い沈黙が流れた
「つまり」
レオンが確認した
「我々に調査を依頼したいと?」
「そうだ」
マグナスが頷いた
「しかし、これは今までとは次元の違う危険性がある、断ってもらっても構わない」
ドラコが口を開いた
「どんな危険だろうと、俺たちが引き受ける」
「ドラコ・・・」
ガレスが驚いた
「俺たちは最強3豪傑だろう?」
ドラコが珍しく笑顔を見せた
「仲間を見捨てるわけにはいかない」
「そうですね」
マリアも同意した
「今度こそ、全種族の協力が必要かもしれません」
ゾルガは胸の高鳴りを感じた
新たな大冒険の始まりを予感していた
ギルドが一つになった今、どんな困難も乗り越えられるはずだ
「では、詳しい話を聞かせてください」
ゾルガが前に出た
「ありがとう」
マグナスは安堵した
「君たちになら任せられる」
「実は・・・」
マグナスが説明を続けた
「事の発端は一週間前に遡る、永劫の迷宮の第25階層で、冒険者たちが“古びた豪華な装飾がされた書物”を発見したの知ってるだろ・・・その書物には“古代文字”が書かれていたのだ」
「古代文字?」
エリナが興味深そうに聞いた
「ああ・・・」
マグナスが頷いた
「とても古い時代の文字で、我々には読めなかった。そこで、エドワードさんと相談し、それぞれの政府に解読を依頼したんだ」
モノが身を乗り出した
「それで、何が書いてあったんだ?」
マグナスの表情がより深刻になった
「その内容が・・・問題なんだ、古代文明の記録によると、永劫の迷宮の最深部には古代都市の遺跡があり、そこには『世界を滅ぼす力を持つ兵器』が封印されているらしい」
会議室に緊張が走った
「世界を滅ぼす兵器・・・」
レオンが呟いた
「詳細は不明だが、その兵器は古代文明を滅ぼしたとも書かれている」
マグナスは続けた
「そして、封印が弱くなっているという記述もあった」
「それは大変だ」
ドラコが険しい表情を見せた
「そこで、両国政府は専門家の派遣を決定した」
マグナスが説明した
「魔王の国からは古代魔法の専門家が、人間の国からは古代文明の研究者が派遣される予定だ」
ゾルガが尋ねた
「その専門家の方々は、いつ到着されるのですか?」
「実は、もう到着している」
マグナスが微笑んだ
「君たちにとって、懐かしい顔ぶれだと思うよ」
・・・・・
翌朝、ギルドの前に馬車が二台到着した
一台からは魔王の国の使者が、もう一台からは人間の国の使者が降りてきた
「ゾルガ!」
最初の馬車から降りてきたのは、見覚えのある美しい悪魔族の女性だった
長い黒髪と紫の瞳、優雅な立ち振る舞いは以前と変わらない
「ライラ!」
ゾルガが驚きの声を上げた
「本当にあなただったのね!」
ライラ・ナイトシェイドは、ダークレイムのギルド「闇夜の爪痕」でゾルガがよく知る冒険者で、冒険者を引退してからは疎遠となっていた
噂では、魔法研究者として活動していると聞いていたが、まさかここで再会するとは思わなかった
「久しぶりね、ゾルガ」
ライラは優雅に微笑んだ
「あなたが結婚したと聞いた時は驚いたわ、おめでとう」
「ありがとう・・・でも、まさかあなたが古代魔法の専門家だったなんて」
「元々興味があったの、冒を引退してから、本格的に研究を始めたのよ」
その時、人間の国の馬車からも一人の男性が降りてきた
金髪で青い瞳の、知的な印象の人間だった
ローブを身に着け、杖を持っている
「まさか・・・アルバート?」
レオンが驚いた
「やあ、レオン」
男性は穏やかに微笑んだ
「久しぶりだね」
アルバート・ホワイトストーンは、かつてレオン、モノ、エリナと『光の翼』を組んでいた魔法使いだった・・・現在は人間の国で宮廷魔術師として活動している
「アルバート!」
モノが大きな声で近づいてきた
「本当にお前か!」
「モノ、相変わらず元気そうだね」
アルバートが苦笑いした
「エリナも美しいままだ」
「アルバート・・・」
エリナも感激していた
「まさか、あなたが派遣されるなんて」
旧『光の翼』のメンバーが再び一堂に会し、感動的な再会となった
ザックとトムも驚いていた
「すげぇ、レオンの昔の仲間がこんなにいたなんて」
「有名人ばっかりじゃないか」
ライラがゾルガに近づいた
「ところで、あなたの新人教育のことも聞いているわ、三人の受付嬢を立派に育てているそうね」
「いえいえ・・・まだまだ勉強中ですけど」
ゾルガが謙遜した
その時、ルナリア、オルリア、セシリアが現れた
「ゾルガさんは素晴らしい先生です」
ライラは三人を見て感心した
「これが噂の三人組ね。それぞれ個性的で良いじゃない」
「初めまして」
ルナリアが丁寧に挨拶した
「よろしくお願いします!」
オルリアが元気よく言った
「お会いできて光栄です」
セシリアも礼儀正しく挨拶した
アルバートも近づいてきた
「君たちが例の古代文書を解読したのかい?」
レオンが尋ねた
「ああ」
アルバートが頷いた
「僕が古代文字の専門で、ライラが古代魔法の専門だ、二人で協力して解読したんだ」
「それで、詳しい内容は?」
モノが身を乗り出した
ライラが厳しい表情になった
「とても深刻な内容よ・・・古代文明は『災厄の兵器』と呼ばれる超兵器を作り出した・・・それは一瞬で大陸を焼き尽くすほどの破壊力を持っていたそうよ」
「そんなものが・・・」
ガレスが息を飲んだ
「しかも・・・」
アルバートが続けた
「その兵器は制御を失い、最終的に古代文明そのものを滅ぼしてしまった・・・生き残った古代人たちが、兵器を永劫の迷宮の最深部に封印したんだ」
「封印は永続的ではない」
ライラが警告した
「書物によると1000年ごとに封印が弱くなり、再封印が必要らしい・・・そして、前回の再封印から既に950年が経過している」
「つまり・・・」
ドラコが理解した
「あと50年以内に再封印しないと・・・」
「災厄の兵器が復活する可能性がある」
アルバートが深刻に答えた
会議室に重い沈黙が流れた・・・
マリアが口を開いた
「それで、調査チームが派遣されたけど、行方不明になったのね」
「そうだ」
マグナスが頷いた
「おそらく、古代遺跡の防御システムが作動したのだろう」
エリナが提案した
「では、私たちで調査隊を編成しましょう・・・今度こそ、全種族の協力が必要ですね」
「そうですね」
ゾルガも同意した
「ライラとアルバートの専門知識があれば、きっと解決できます」
ライラが微笑んだ
「あなたたちと一緒に冒険できるなんて、昔を思い出すわ」
アルバートも頷いた
「『光の翼』の再結成だね、今度は、もっと大きなチームで」
こうして、古代文明の謎を解明し、世界を救うための新たな冒険が始まろうとしていた
過去の仲間たちとの再会により、チームの結束はさらに強くなった
果たして、彼らは災厄の兵器の封印を確認し、世界を救うことができるのだろうか
永劫の迷宮の最深部には、どんな試練が待ち受けているのだろうか
・・・・・
その日の午後、ギルドの大会議室では重要な作戦会議が開かれていた
参加者は主要メンバーに加え、ライラとアルバートも含まれていた
「まず、永劫の迷宮の現状を確認しよう」
エリナが地図を広げた
「現在、第30階層まで調査が進んでいるが、古代遺跡は第50階層付近にあると推測される」
「第50階層・・・」
レオンが考え込んだ
「これまでで最も深い階層だ」
ライラが古代文書のコピーを見せた
「書物によると、古代遺跡への入り口には『三つの試練』があるそうよ・・・知恵の試練、勇気の試練、そして心の試練」
「具体的にはどんな試練なんだ?」
ドラコが尋ねた
「詳細は不明」
アルバートが答えた
「ただ、『真の協力なくして乗り越えることはできない』と書かれている」
「真の協力・・・」
ゾルガが呟いた
「まさに私たちが築いてきたものね」
モノが手を叩いた
「よし、じゃあチーム編成を決めようぜ、今回は大部隊で行くしかない」
最終的に、総勢25人の大調査隊が編成された。
戦闘班:ドラコ、ガレス、マリア、レオンとその他の精鋭冒険者
魔法班:ライラ、アルバート、エリナとギルドの魔法使いたち
支援班:モノ、ザック、トムとその他の支援要員
調査班:専門知識を持つ学者たち
「ゾルガさんは?」
ルナリアが心配そうに聞いた
「私は留守番よ」
ゾルガが微笑んだ
「あなたたち三人とギルドを守るのが役目」
「そんな・・・私たちも一緒に行きたいです」
オルリアが不満を示した
「危険すぎるわ」
セシリアが冷静に判断した
「でも、気持ちはわかります」
ルナリアが立ち上がった
「ゾルガさん、私たちに何かできることはありませんか?後方支援でも何でも」
「そうね・・・」
ゾルガが考えた
「緊急時の連絡役や、帰還時の治療準備などをお願いするかもしれないわ」
三人は真剣に頷いた
「任せてください」
ルナリアが決意を込めて言った
「がんばります!」
オルリアとセシリアも同調した
こうして、永劫の迷宮最深部への調査計画が固まった
明日の朝、25人の勇者たちは未知の領域へと向かう・・・古代文明の謎と、世界を脅かす兵器の封印を確認するために
ゾルガは窓から夕日を見つめながら、祈るような気持ちでいた
愛する夫と仲間たちが、無事に帰ってくることを
そして、この世界に平和が保たれることを
新人受付嬢たちも、それぞれの想いを胸に明日への準備を進めていた
彼女たちにも、重要な役割が待っているのだから