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第8話 待ち受けていた対立と、陰謀の発覚

ダンジョンの入り口には、予想外の光景が待っていた


正面には、魔王国の宰相・ゼガーティス・ダークロードが従者たちと共に立っていた


その背後には、グランドストーン公爵が率いる魔物族の軍隊が整列している


そして反対側には、シルバーソード伯爵が指揮する人間の軍隊が対峙していた


「これは・・・親父の軍隊じゃないか」

モノが青ざめた


「父上の軍も・・・」

エリナも震え声で言った


両軍の間には、明らかに緊張した空気が流れていた

まるで今にも戦闘が始まりそうな雰囲気だった


「魔王国の宰相だと・・・」

レオンが警戒した


「父上・・・」

エリナが困惑した


「親父・・・」

モノも同様だった


冒険者たちは戸惑った・・・両国が古代兵器を狙っているのは明らかだった


ゼガーティス宰相が前に出た

「諸君らの働きは見事だった」


彼は冷たく微笑んだ

「ダンジョンを攻略し、古代遺跡を発見した功績は称賛に値する」


冒険者たちは警戒した・・・宰相の言葉には裏がありそうだった


「そこで宣言する・・・」


ゼガーティスは声を大きくした


「「古代兵器と古代遺跡の技術の管理使用権は、魔王国が獲得する!!!!!」」


「「何だと!?」」

レオンが抗議した


その時、街の共同責任者である二人の男性が前に出た


「宰相殿・・・それは間違っています」

モノの弟マグナス・グランドストーンが毅然として言った


「そうです」

エリナの兄エドワード・シルバーソードも同調した


「古代遺跡の技術は、人間族と魔物族が共有で管理・使用するべきです」


ゼガーティスの目が険しくなった

「「無礼な!!!貴様ら如きが宰相である私に意見するか!!!!」」


しかし、二人の父親であるグランドストーン公爵とシルバーソード伯爵は、息子たちを咎めることなく、黙って様子を見ていた


マグナスが続けた

「この街は、魔物族と人間族がお互いに協力しながら発展させてきました」


「そして、この発展の切っ掛けを作ったのは、ゾルガ・レオン夫妻です!!!!」

エドワードが声を張り上げた


冒険者たちや街の住民たちから大きな歓声が上がった


「ゾルガさん万歳!」

「レオンさん万歳!」

「異種族協力万歳!」


その勢いに押され、ゼガーティスは苛立った


「「グランドストーン公爵!!!冒険者と住民たちを抑えろ!!!!」」

彼は命令口調で言った


しかし、グランドストーン公爵ゴライアスは鼻で笑った

「そこまでは、魔王陛下の勅命にはない、ただ、宰相の巡行を護衛しろとの勅命だ・・・」


ゼガーティスは顔を真っ赤にした

「貴様の進退がどうなっても良いのか?」


ゴライアスは豪快に笑った

「一卒兵から将軍となり、35年前の人魔大戦の功績で貴族になったが、俺には『貴族』は合わん・・・以前のこの集落のサイクロプス族の長で充分だ」


そして、彼は鋭い目でゼガーティスを見据えた

「それに、古代兵器と古代遺跡の技術の管理と使用は、魔王国が管理すると、魔王陛下がおっしゃったのか?」


ゼガーティスは少し考えてから答えた

「そうだ・・・」


彼は勅令の証明書を取り出して見せた


しかし、それを見たライラが突然叫んだ

「姉がそんな勅命などしない!!!その証明書は偽物だ!!!!」


周囲にざわめきが起こった・・・ライラの正体が明かされてしまったのだ


ゼガーティスは薄ら笑いを浮かべた

「折角、貴女の身分を隠していたものを・・・ライラ元第2魔王女殿下」


ライラは悔しそうに唇を噛んだ


ゴライアスが理解した

「あい分かった・・・但し、宰相に何かあった時に軍隊を動かそう・・・貴方は、街の共同責任者の2人と、街の皆を説得させれば良いでしょう・・・まあ、人間族には、魔王陛下の勅命は効かんのだがな」


ゼガーティスは憤った

「き、貴様・・・それでも魔物族の端くれか!!!それに、魔王国・七魔将の1人だろう」


ゴライアスは肩をすくめた

「魔王国・七魔将か・・・宰相、あんたも“その1人”なのだから、並外れた知略をもって、俺の息子たちを説得したらどうだ」


完全に追い詰められたゼガーティスは、怒りに震えながらゾルガとレオンを睨みつけた


「最初から貴様らがいなければ!!!!」


彼は最大呪文の詠唱を始めた


巨大な闇の魔法陣が空中に現れる


ゾルガとレオンも身構えたが、その時、巨大な刀を持ったシルバーソード伯爵・アーサーが割って入った


「天翔閃!」


彼の必殺剣技により、ゼガーティスの最大魔法は完全に打ち消された


「おいおい、手前の宰相を追い詰めるなよ・・・ゴライアス」

アーサーが苦笑いした


「知るかよ、宰相が勝手にした事だ・・・俺は正論を述べたのだ・・・アーサーよ」

ゴライアスが答えた


「俺らって、つくづく『貴族』に性が合わないな・・・・俺も、この地域の人間族の長に戻りたいぜ」


二人は顔を見合わせて笑い合った


ゼガーティスは混乱していた

「一体どうなってるのだ?」


ライラが前に出た

「ゼガーティス!!!あんたは一体何を企んでるの?」


ゼガーティスは誤魔化そうとした

「魔王国の為だ・・・」


しかし、追い詰められた彼は、ついに本音を吐いた


「そうだ!古代兵器と古代遺跡の技術を使って魔王国を乗っ取り、ついで勇王国を侵略し、己の帝国を作るのだ!!!!魔王も勇者王も、もはや時代遅れなのだ!!!!!」


その瞬間、アーサーが大声で叫んだ


「「おい!!!アレク!!!リリー!!!とうとう、ゼガーティスの奴が尻尾を出したぞ!!!!」」


「迷惑かけたな、アーサー・・・」


突然、移動魔法の光に包まれ、二人の偉大な人物が現れた


一人は光り輝く鎧を身に着けた金髪の男性・・・勇王国の覇者、勇者王アレクサンダーだった


もう一人は漆黒のローブに身を包んだ威厳ある女性・・・魔王国の君主、魔王リリアナだった


「ゼガーティス・・・」

魔王リリアナの声は氷のように冷たかった

「まさか、お前がクーデターを企んでいたとはな」


「姉さん・・・」

ライラが安堵した


勇者王アレクサンダーも剣の柄に手をかけた

「両国の平和協定を破り、世界を混乱に陥れる気だったのか」


ゼガーティスは完全に包囲された・・・


魔王と勇者王、そして魔王国・七魔将の1人、勇王国・六賢臣の1人に囲まれては、もはや逃げ場はなかった


「くそっ・・・!!!!」


彼は最後の抵抗を試みようとしたが、時既に遅し


冒険者たちの活躍により、世界を揺るがす大きな陰謀が暴かれたのだった


・・・・・


「観念しろ、ゼガーティス・・・お前の野望はここで終わりだ」

魔王リリアナが宣告した


「何故だ・・・完璧な計画だったはずなのに・・・」

ゼガーティスが呟いた


勇者王アレクサンダーが答えた

「君の計画には致命的な欠陥があった・・・人々の心を理解していなかったのだ・・・買収や脅しでは、私の臣下たちが“味方”になることなど出来ないのだよ」


「ち!!!役立たずの人間どもめ・・・」

ゼガーティスは悔しがっていた


アレクサンダーと、ゼガーティスとのやり取りに、複雑な気持ちで見つめるドラコ


「魔物族も、人間を利用・・・」


ドラコの肩を軽く叩き、無言で慰めるレオン


アーサーとゴライアスが歩み寄った


ゴライアスが説明した

「奴(ゼガーティス)の動きが不自然だったからな・・・そこで、魔王陛下に密かに報告していたのだ」


ライラも頷いた

「姉さんからも、ゼガーティスの動向を探るよう密命を受けていました」


「俺は、ゴライアスから、ゼガーティスの事を聞いて・・・アレクに報告したんだ」

アーサーも答えた


ゾルガが理解した

「つまり、私たちも最初から監視されていたということですね」


「いえ・・・」

魔王リリアナが微笑んだ

「貴女たちを監視していたのではない・・・貴女たちを守るために、警戒していたのよ」


勇者王アレクサンダーも説明した

「君たちの活動は両国にとって貴重な財産だ・・・それを利用しようとする者がいることは予想していた」


レオンが感謝した

「ありがとうございます・・・しかし、これから古代遺跡はどうなるのでしょうか?」


魔王リリアナと勇者王アレクサンダーは顔を見合わせた


「当然、両国共同で管理する」

魔王リリアナが宣言した


「そして、ハーモニーヘイブンの自治を尊重する」

勇者王アレクサンダーも続けた


マグナスとエドワードが前に出て

「ありがとうございます」

と、二人は深々と頭を下げた


こうして、大きな陰謀は暴かれ、世界の平和は守られた


ゼガーティスは魔王と勇者王により身柄を拘束され、厳重な監視の下に置かれることになった


そして、ゾルガとレオンの名前は、再び世界中に知れ渡ることとなった


今度は、世界を救った英雄として


古代文明の謎は解明され、新たな技術は両国の発展に活用されることになった


そして、ハーモニーヘイブンは真の意味での異種族協力の象徴として、さらなる発展を遂げていくことになる


物語は、新たな章へと続いていくのでした

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