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第5話



第五話「誰?」


ジャングルの朝は、意外なほど爽やかだった。鳥たちの鳴き声が空に響き、クラスティーとサイドショー・メルは、深い緑の中を慎重に進んでいた。目的は、二つ目の赤いダイヤモンドの欠片。


前回の戦いで最初の欠片を手にした彼らは、その神秘的な力に驚きながらも、さらなる欠片を集めるために旅を続けていた。


「メル、今回はちゃんと地図も持ったし、虫除けも3本あるし、水もある! 完璧だな!」

「いや、テント忘れてるぞ」

「……またか」


彼らは小さな滝の裏に隠された洞窟を発見し、その奥で輝く第二の欠片をついに手に入れた。

クラスティーが歓声をあげる。


「やったーっ! これで二つ目だ! あと8個! 願いに一歩近づいたぞおお!!」


だがその直後だった。


「ハッハッハッハ!! やはり来たな、クラスティー!」


洞窟の外に、クラスティーそっくりの人物が立っていた。目の前にいるのは——


「……クラスティー……?」


「は!? おいおい、俺はここにいるだろ!?」

本物のクラスティーが叫ぶが、目の前の人物も全く同じ声で笑う。


「よくもここまで先回りできたな、私! いや、“俺”!」


「……誰だ、お前!?」


サイドショー・メルが警戒する。だが、驚くべきことにその人物は、まるで鏡のように、クラスティーの声・顔・動きまで完璧に模倣していた。


「うふふふふ……その人、クラスティーじゃないわよ」


脇から現れたのは、かつてクラスティーと番組を取り合ったこともある、アリアナ・アマゾンという女性冒険家だった。彼女は、知恵と変装、そして冷酷さで知られた有名な「お宝狩りチーム」の一員。


「これは“シャドウ・クラスティー”っていうの。あなたを模倣するようにプログラムされた冒険用アンドロイド。最新鋭よ」


「……なんだよその便利すぎる設定!!」


アンドロイド・クラスティーが勝ち誇った笑みを浮かべる。


「ありがたくその欠片、いただくぞ!」


そして彼は煙玉を投げ、欠片を奪って走り去った。



---


「……まじで盗られたーッ!!」

「落ち着けクラスティー! 本物のお前がいるんだ。追えばすぐわかる!」


ふたりはすぐに追跡を開始。メルは足跡を読み、クラスティーは森中に響き渡る笑い声を頼りに追いかける。


途中、罠にかかりそうになりながらも、なんとか敵の基地の入口を発見した。


「ここか……クラスティー(偽)が逃げ込んだのは」

「待てよ……あれ、なんかアリアナの部下が……おいっ!? 俺の顔して歩いてるやつが3人いるぞ!?」


「どうやら、君のそっくりロボを複数用意してるらしいな……これは厄介だ」



---


そして、基地内部。

アリアナたちは、奪った二つの赤いダイヤモンドの欠片を手にしていた。彼女のボスはまだ姿を見せていないが、部下たちは浮かれムード。


「やった! 本物より先に二個手に入れたぞ!」

「これでレジナルド様に勝てるぞ!」

「ついでにクラスティーの番組を乗っ取ろうぜ!」


その時だった。


——ドカーン!!!


基地の壁が爆発し、炎とともに本物のクラスティーが飛び込んできた。


「よお、そこの俺! 一緒に笑ってる場合じゃねえぞォ!!」


「ま、まさか……本物!?」「どれが本物!?」「え、あいつ今火の中に突っ込んで来たぞ!?」


混乱する敵部隊。サイドショー・メルは巧みに照明を壊し、基地の中を真っ暗にする。そこから始まる、クラスティーvsクラスティーの大混戦!


同じ顔、同じ声、同じ動き……だが、ひとつだけ違うものがあった。


本物のクラスティーは、「笑わせる」のがうまい。


基地内に残った部下が、クラスティーのギャグで吹き出した。


「やっぱり本物だああああ!!」


そして混乱の中、メルが欠片の入ったケースを奪還! クラスティーがそれを受け取る!


「ありがとよ、メル! んじゃあとは——」


——ドカァン!!


基地の裏口が破壊され、ついに現れたのは、アリアナたち冒険家グループのボスだった。


スーツを着た高身長の中年男。名をゴードン・ブラックアイという。


「……またお前たちか」


彼は静かに部下たちを睨み、低く怒鳴った。


「“クラスティー型ロボット”に、赤いダイヤモンド……貴重なリソースを使っておいて、たった二人の道化者に負けた……と?」


部下たちが震える中、彼は静かに言った。


「帰ってこい。次は……俺が動く」



---


その頃、ジャングルを脱出したクラスティーとメルは、二つの赤いダイヤモンドの欠片を見つめていた。


「やっぱり、そっくりでも“俺”は一人で十分だな!」


「いや、むしろ一人でも多すぎるかもしれん……」


星が再び、ふたりの上に輝いていた。だが、その影には、次なる強敵の気配が忍び寄っていた。


つづく




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