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第18話

カーテンの隙間から差し込む朝日を、ナディアはベッドに横になったままぼうっと眺めている。


「もう、朝……」


体を起こしてサイドテーブルの二段目の引き出しに入っている手鏡を取り出す。手鏡には目の下に隈ができた青白い顔が映っている。


「ひどい顔ね」


手鏡を戻し、サイドテーブルの上に置いてあるピンクサファイアの指輪を見つめる。優しく微笑むレイヴノールの顔が浮かんできて胸がチクッと痛んだ。



ソフィーと一緒に食堂に行くと、レイヴノールが先に来ていて、ナディアは一礼をしてから斜め前の席に座った。


「ナディア、おはよう。昨日は一緒に出かけられなくてごめん。今日は行けるから、午後からどうかな」


気まずそうな顔のレイヴノールが話しかけると、ナディアは俯いて押し黙る。ソフィーに睨まれたレイヴノールは首をすくめ、眉を八の字に下げた。


「えっと、ナディア、どうした?」


顔を上げたナディアは唇を噛みしめ、潤んだ瞳でレイヴノールを見つめた後、また下を向いた。

眉間に皺を刻んだソフィーは怒りの表情で、おろおろしているレイヴノールを睨みつける。


「何でもありません」


「何でもないって顔じゃ……」


ナディアはレイヴノールと目を合わせないまま黙々と食事を続けた。

レイヴノールは、ナディアの左手に指輪がないのを見て顔が青ざめる。

ナディアの背後で、ソフィーの髪や服が風に吹かれているようにゆらゆら揺れている。

レイヴノールは食事が喉を通らず、ナディアの食事が終わるまで泣きそうな顔でどぎまぎしていた。


「お先に失礼します」


席を立つナディアに、レイヴノールは声をかけた。


「ちょっと待って。もしかして、昨日のこと、誤解してる?」


「誤解? 何がですか?」


今まで見たことのないナディアの冷たい眼差しに、レイヴノールは心が折れそうになりながらしどろもどろで話を続ける。


「街で俺を見かけて、それで」


「私が見ていたことを知っていたのですか?」


「知っていたのではなく、知り合いから聞いた、というか」


ナディアはレイヴノールから目を逸らし、眉を寄せた。


「意味がさっぱり分かりません」


「あっ、えっと、その、とにかく! 俺が昨日街にいたのには理由があって、ナディアが見ていた時に一緒にいた子は昔馴染みの子で、誤解されるような仲じゃなくて」


「二股じゃないんですか?」


疑いの目を向けるナディアから思ってもいなかったことを言われ、ショックを受けたレイヴノールは口をあんぐり開けて固まった。


「主君! どういうことじゃ!」


「待って、ソフィー」


怒りが抑えきれずレイヴノールに掴みかかるソフィーをナディアは止め、レイヴノールと向き直る。


「本当に違うのですか?」


「本当に違う! 誤解も誤解! 案内したい場所があるって言っただろう。そこで全部話すから、一緒に出掛けてくれないか?」


ナディアは頷き、レイヴノールはほっと胸を撫で下ろす。納得できていないソフィーはずっとレイヴノールを睨み続けていた。



馬車で街の方へ向かう道すがら、レイヴノールはナディアが誤解しているであろう件について話をした。


「昨日街にいたのは、ギルド関連の仕事関係者から呼び出されて、ギルドの拠点で会っていたからなんだ」


「ギルドに行く時はローブを着られるんですか?」


「ああ。黒のローブはシャノワールの特徴みたいなものだから」


「そうだったんですね。じゃあ、あの女性は?」


真剣な眼差しを向けられ、レイヴノールも真剣な表情で答えた。


「孤児院で一緒に育った昔馴染みで、旧友みたいなものだよ」


「……それにしては、親密だった気がするんだけど」


ガタガタッと馬車が大きく揺れ、ナディアの呟きはレイヴノールに届かなかった。


「ナディア、大丈夫?」


「はい、大丈夫です」


ナディアは心にもやがかかっているような重苦しさを感じながらも、胸の内に留めておくことにして弱々しく微笑んだ。

レイヴノールはほっとした顔をして、窓の外に目を向けた。

いつの間にか街を抜けて、馬車は小高い丘の上を登っている。


「見えてきた。あそこが、俺のいたフェリチ孤児院だよ。フェリチは古語で幸せっていう意味なんだ」


「フェリチ孤児院、良い名前ですね」


丘の上にこぢんまりした修道院が建っていて、柵で囲まれた庭の入り口に、フェリチ孤児院と書かれたアーチ型の看板がかけられている。


看板の前で馬車を降り、レイヴノールの後に続いてナディアも看板の下を潜って孤児院の庭に入っていった。

ちょうど玄関ドアから3歳から12歳ぐらいの子供たちが、元気な声を上げて庭に出てきて、ひとりの少女がレイヴノールを指差しながら駆け寄って来た。


「あっ! レイにいちゃん!」


「大きくなったなあ」


レイヴノールが少女を抱き上げると、他の子供たちも寄ってきて、あっという間に囲まれた。ナディアの周りにも子供たちが集まって、不思議そうな顔で次々問いかけてきた。


「お姉ちゃん、だあれ?」


「レイにいちゃんの友達?」


「新しい先生とか?」


「あっ、えっと……」


肩、腕、背中に3人の子供たちを乗せているレイヴノールが、胸を張って子供たちへナディアを紹介した。


「俺の奥さんだ!」


子供たちはえーっと驚きの声を上げ、ナディアを好奇心溢れる瞳で見上げてきた。


「みんなー、何でそんなに集まって…って、レイ、来てたの?」


玄関ドアから、赤茶色の髪をサイドに分けて三つ編みにしているエプロン姿の小柄な女性が出てきて、レイヴノールに手を振った。


「ネリ! さっき着いたんだ」


笑顔を浮かべて手を上げるレイヴノール。ネリはすっとナディアに目を向け、値踏みするように下から上と目線を動かした。


「ネリ、妻のナディアだ。ナディア、俺の旧友で、今ここで院長をやっているネリだ」


「よろしく、です」


「宜しくお願いします」


会釈をするナディアをちらっと見て、ネリはすぐにレイヴノールを見上げた。


「とりあえず、中に入りなよ。ほら、レイと話があるからみんな下りな」


ネリに言われ、レイヴノールの髪を引っ張ったり、頬をペチペチしたり、腕にぶら下がったりしていた子供たちは「はーい」と返事をして他の子供たちのいる所へ走って行った。



孤児院の中は仕切りがほとんどなく、外観に反して広く感じられた。また、吹き抜けになっている二階の天窓から差し込む光が院内を照らしているおかげで、自然の明るさに柔らかく包み込まれている神聖な雰囲気がある。


玄関から入ってすぐ、子供に合わせたサイズの椅子やテーブルが並べられている広々としたダイニングルームがある。その向かいには0歳から2歳の子どもたち用の部屋もあり、ベビーベッドと床で遊べるようにカーペットが敷いてある。年長の子供たちが順番に面倒をみてくれているとネリは説明した。

1階の奥には厨房があり、キッチンツールも食器類もきれいに整頓されていた。厨房の勝手口から出ると食糧倉庫があり、野菜や果物、小麦粉などがそれぞれ箱一杯に詰められている。

厨房の隣は院長用の執務室兼寝室の小部屋があり、その向かいにはふかふかのソファーが向い合せに並んでいる応接室がある。


2階に上がると、二段ベッドが5台置かれている寝室があり、壁際には子供サイズの衣装ケースがずらっと並べられている。寝室の向かいには雨の日でも子供たちが走り回れるほど広いプレイルームがあった。


ネリはナディアに孤児院の中を案内しながら、レイヴノールの横にぴったりくっついて、ナディアよりもレイヴノールの方ばかり見ていた。ナディアは心のもやもやが増していくのを感じて胸をさするが、前を歩くレイヴノールとネリを見ていると、もやもやは消えるどころか余計に広がって重さを増していった。


一通り院内を見た後、ネリはレイヴノールとナディアを応接室に通し、ソファーに向い合せに座った。


「レイのおかげで設備も食事も充実していて、子どもたちはここを気に入ってくれているんです。夫人はご存じないかも知れませんが、他の孤児院の中には貴族の寄付を院長や従業員がくすねたり、寄付だけ受け取って子どもたちに還元しないどころか、虐待したり、働かせたり、挙句の果てには売りに出す地獄みたいな所もあるんです」


ネリは憎しみのこもった顔で、膝の上で握りしめた拳を震わせる。ネリの言う通りそんなにひどい孤児院があることを知らなかったナディアは恥ずかしさを覚え、俯いた。


「ネリは赤ん坊の時にひどい孤児院に拾われて、ケイドリック先生に助けられてここに来たんだ」


レイヴノールはこそっとナディアに耳打ちをした。


「ケイドリック先生、ですか?」


ナディアがレイヴノールに尋ねると、2人の囁き声が聞こえていたネリが答えた。


「あたしらが子どもの時の院長だよ。元司祭だったからか、穏やかで優しくて、薬の知識も豊富で、あたしらは本当の親みたいに思ってた」


「俺が男爵の爵位を授かった頃に、天寿を全うして亡くなったんだ」


レイヴノールは寂し気に言うと、ネリを見て微笑んだ。


「ネリがケイドリック先生の後を継いでくれて本当に良かったよ」


ネリは顔を赤くして、腕を組んでそっぽを向く。


「みんな、レイのギルドの加盟店で働くことにしちゃったからさ、あたしだけでも残っておこうと思ったんだよ」


「ネリが一番孤児院の存続を願ってたもんな。次期院長はネリしかいないってみんな言ってたよ」


ネリはちらっとレイを見て、頬をポリポリかきながら気恥ずかしそうに言った。


「あたしは子どもたちのお世話をしてるだけさ。事業を成功させてギルド作って、男爵にまでなったレイが支援してくれたおかげで、運営できてるんだよ。おかげで、建物もきれいになったし、子供専用の家具やおもちゃも用意してくれたから快適に過ごせるし。それに、食料も毎月支給してくれるから、子どもたちにもたくさん食べさせてあげられてる。あたしだけじゃ、孤児院は守れなかった」


「珍しいな、ネリがほめてくれるなんて」


「はあ? ほめてるわけじゃないし! 資金的援助は一番してくれるけど、ここに来る頻度はみんなの中で一番低いんだからね」


「仕事がありすぎて、ディランが解放してくれないからで」


「そういえばディラン! 全然顔見てないけど元気? レイのお守りで忙しいか」


いたずらっぽく笑うネリに、レイヴノールは口を尖らせる。


「お守りって何だよ」


「小さい時からいつもレイの傍にいてさ、レイの世話ばっかやいてるから母親みたいだったよ」


「母親? あんな毒舌な母親イヤだよ。今だって、毒舌すぎていつも言葉の刃に切り刻まれてるのに」


落ち込むレイヴノールを見て、ネリはアハハハハと楽しそうに声を上げる。

ナディアは2人と自分の間に見えない境界線があるように感じ、まるで観客になったかのようにレイヴノールとネリのやり取りをぼうっと眺めていた。

ネリはニヤッと笑みを浮かべ、ナディアに声をかけた。


「ごめんなさい、お茶もお出ししないで。あたし庶民だし、捨て子で孤児院育ちだから全然礼儀がなってなくて」


「いえ、お構いなく」


ナディアが硬い表情で返し、ネリはふんと鼻で笑うとレイヴノールに目を向けた。


「この後はどうするの?」


「ケイドリック先生のお墓に行ってくるよ。そしたら戻って来て、子供たちと遊ぶかな。ナディア、行こう」


レイヴノールが立ち上がり、ナディアに手を差し出す。ナディアは手を取り、部屋を出るレイヴノールの後に続いた。ネリはムスッとした顔で廊下に出た。


「ネリ、久し振りに話せて楽しかったよ。ありがとう」


レイヴノールに微笑まれ、ネリは緩む頬を手で押さえた。


「こっちこそ、いつも助かってるよ」


ネリはナディアに一歩近づき、勝気な笑顔を向ける。


「ナディア夫人、付き合いの長いあたしの方がレイのことよく知ってるので、レイのこと何でも話してあげますよ。気になったらまた来てくださいね」


ナディアの心のもやもやが、煮えたぎるマグマのようにボコボコと音を立て、体中を駆け巡っていき、頭に集結していく。こめかみがドクン、ドクンと脈打ち、頭が痛くなる。


「どうしました? もしかして怒ってます? 何か気に障るようなこと言ってしまいました? 礼儀も教養もなくてすいませんね」


(怒っている? これが怒りの感情なの?)


ナディアは痛みが増す頭を押さえながら、初めて抱く怒りの感情に戸惑う。


「ナディア、どうした? 言葉がきつく聞こえるかもしれないが、ネリはこれが普通なんだ。根は良いやつなんだよ」


レイヴノールの言葉に、心の中で煮えたぎっていたマグマが、火山が爆発する時のように溢れ出そうになる。耳元で太鼓を鳴らされているのではと思うほど大きな音でこめかみの血管がドックン、ドックンと激しく脈打つ。

レイヴノールの死角で、にんまりと笑みを浮かべるネリがタリアと重なり、ナディアは奥歯を噛みしめてぐっと堪えた。

ふうっと息を吐きだして気持ちを静め、なるべく余裕のある涼し気な笑みを浮かべられるよう気を遣いながら微笑んだ。


「ええ、分かっています。初対面でこんなに私のことを思ってくださるなんて、ネリさんはとても親切な方なんですね」


ネリははっと息をのんで唇をかみしめ、拳を握り締めた。


「さすがナディア。分かってくれて嬉しいよ。じゃあ、ネリ、また後で」


「失礼します」


去って行く2人の後ろ姿を、敗北感と虚無感が入り混じった表情でネリはじっと見つめた。



外に出ると、夏の訪れを感じる少し湿った空気と機嫌よく地上を照らす太陽の日差しがナディアの火照った体を包み込む。煮えたぎっていた心のマグマが自然のエネルギーに溶かされていき、清々しい気持ちになった。


レイヴノールは庭に出て孤児院の裏手に回った。孤児院の屋根より高く、枝葉が孤児院に影を作るほど大きな木の根元まで歩いて行く。そこには「ケイドリック先生」と記された小さな石碑が立っていた。レイヴノールは石碑の前に座り、ジャケットの内ポケットから大きめのハンカチを出して自分の隣に広げた。


「ナディア、良かったらここに座って」


ナディアは言われたとおりハンカチの上に座り、石碑と向き合った。


「ケイドリック先生の遺体はここにはないんだ。先生の遺言で、遺体を焼いて灰にして海に投げ入れて欲しいって言われて。みんなで泣きながら遺体を燃やして、ひとりずつ灰を持って海に投げた。お墓だけは作ろうってみんなで話して、ここに石碑を立てたんだ」


「まあ。そうだったんですね。どうしてそんなことを望まれたのでしょう?」


「一般的には土葬だし、死後に復活して神のいる天国へいけるから肉体は残しておかないといけないとか、肉体を傷つけることは故人への冒とくだとか言うけど、先生はそんなこと考えていなかった。

目に見えない神は肉体を持っておらず、天国と呼ばれる精神的な魂の世界におられる。だから、神のもとへいくためには肉体は必要ない。肉体が必要なのは地上での生活の時だけ。魂が切り離された肉体は燃やして灰にしてもなんの罪にもならない。だから遺言で、『地上に自分の痕跡は遺したくないから、灰にして海に流してほしい』って仰ったんだと思う」


「ケイドリック先生のお考えは、ちょっと難しいですね」


「そうだね。先生は、神殿とは違う独特の信仰観を持っていたんだ。こんなこともよく仰ってた。神のおられる天国へ行くためには、魂が成長していないといけない。魂を成長させるためには、他人のために生きることが重要だって。自分のためだけに生きている人間は、魂は子供のように小さく、どす黒い色をしているらしい。シュペルツ侯爵はまさしくそれだろうな」


ナディアは、冷たい目で自分を見下ろす父を思い出し、頷いた。


「先生には復讐が全部知られて、止められたよ。そんなことのために神から与えられた人生を使うなって、自分の復讐心を満たすために他人を貶めることは、復讐したい相手と同じことをしているって言われたんだ。10歳の時にここに来てから復讐のことしか考えてこなかったから、最初は何で応援してくれないんだって怒りが湧いてさんざん口論したよ。俺は先生のこと親のように慕ってたのに、先生はただの世話役として接していたのかって思えて、ショックだった。結局、最期まで復讐を止めてきたんだけど、先生は息を引き取る前に言ったんだ」


レイヴノールは唇を震わせ、目を伏せた。


「殺したいほど憎くても殺してはいけない。法で裁いて罪を公にさらせばいい。約束してくれって先生は仰ったけど、その時の俺は殺すことしか考えてなかったから約束は守れないって言ったんだ。そうしたら、さ」


悲し気な笑みを浮かべたレイヴノールは、石碑にそっと触れた。


「神のもとへいく前に魂となって傍にいる、約束は守ってくれる子だと信じているって言われたよ。そんなこと言われたら、守るしかないじゃないか」


ナディアは胸がキュッと締め付けられる思いがして、石碑に触れているレイヴノールの手の上に、自分の手を乗せた。


「私も父の罪を公にして、法で裁いてもらいたいと思っています。殺してしまえば、今度はレイヴノール様が罪に問われます。それは嫌です。私にも復讐を手伝わせてください」


レイヴノールは目を丸くしてナディアの揺らぎない瞳を見つめる。


「でも、ナディアにとっては父親で、復讐を手伝わせるわけには」


「そんなの関係ありません。レイヴノール様のご両親の命を欲望のために奪った罪は、許せません」


「ナディア……。俺は君を幸せにしたいんだ」


レイヴノールは目を伏せ、呟く。


「私の幸せは、レイヴノール様が幸せになることです。それと、私のせいでレイヴノール様が命を落とさないように、復讐が終わった後に契約離婚をしてレイヴノール様のもとを去ることです」


レイヴノールは愕然として石碑に項垂れた。


「俺はナディアのせいで死んだりしないよ~」


頭を石碑に乗せ、『ケドリック先生』の文字を人差し指で撫でながら、内心で溜め息をつく。


(俺はずっとナディアといたい。でも、ナディアの気持ちも尊重しないと。先生、結婚って難しいですね……)


「レイヴノール様、さすがに石碑に抱き着くのは、ケイドリック先生に対して失礼なのでは」


「大丈夫だよ、先生がここにいるわけじゃないし。それにいたとしても、髭を触りながらほっ、ほっ、ほって笑ってるはずだよ」


ビューッと風が吹き抜け、青々と生い茂った巨木の葉を揺らす。その音が笑っているように聞こえ、ナディアは頭上でざわざわ揺れ動く枝葉を見て微笑んだ。レイヴノールは立ち上がり、うーんと両腕を突き上げて伸びをする。


「長々と話してしまったね。さあ、戻ろう。子どもたちが待っている」


ナディアは差し出された手を取って立ち上がり、頷く。2人の間をさあーっと心地よい風が通り抜けていった。


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