机が窓際に設置されているのも多分、
ぷかりと煙を吐き出すと窓の外から声がした。
『
雪久がちらりと顔を覗かせるとそこにいたのは名簿にあった
『あれ?…えと。』
『ああ、小鹿先生の代打なんだ。君は日奈木瑪瑙さん?』
『はい…ああ、そうなんだ。もしかして
瑪瑙は何かに気付いたように瞬いた。
『ああ、そうだが。何故知ってる?』
『フフ、小鹿先生に以前聞いたの。若くてえらい顔の良い男が助手にいるって。見た感じそんな風だけど、優しそうでよかった。』
『そうか。』
雪久は煙草を吸い瑪瑙をじっと見る。さっきは授業にいなかったからサボりか今来たかのどちらかだろうか?けれどそれを聞くほど教職についてもいない。
『入ってきたら?そこでは人目につくだろうし。』
雪久は指で煙草を挟むと中へ入るように動かした。
『そうね。そうしたい所だけど、さっき撒いてきちゃったのよね~。』
瑪瑙は頬をぷくっとさせると後ろを振り返った。
『何の話だ?』
『護衛…面倒臭い人でね…ってか、ああいる、じゃあね先生。』
そう言うと急ぎ行ってしまった。その少し後を屈強な男が取り乱し現れた。
『ああ!こんにちは!』
『こんにちは。』
黒いスーツに身を包んだ男はいかにもな護衛に見える。多分瑪瑙は彼から逃げているんだろう。
『先生ですか?お嬢様を…瑪瑙様を見ませんでしたか?』
『何かありましたか?』
『ええ…あの若く見えますが先生ですよね?』
男は雪久の容姿に気づき怪訝な顔になったが説明するとホッと息を吐いた。
『ああ、そうでしたか。失礼しました。お嬢様を送ってきました護衛の
猿渡は背筋を正すと頭を下げた。
『こちらこそ、続木です。』
『それでですね、瑪瑙様は学校に着いたと思ったら私を撒いてしまわれて…。』
そう言うと猿渡はうな垂れた。どうやら瑪瑙というのはじゃじゃ馬らしい。
『まあでも、学校にいるのであれば我々の目もあるし大丈夫では?』
猿渡は何か心当たりでもあるのか苦笑した。
『そうですが…そうですね。では私は車で待機いたします。失礼します。』
また姿勢を正しく礼をして彼は行ってしまった。
その数分後、部屋のドアががらりと開き、瑪瑙が入ってきた。
『もしかしてそこで聞いていた?』
彼女は後ろ手にドアを閉めるとにこりと笑う。
『フフ、先生は何でもお見通しね。それで小鹿先生の腰はどう?』
『うん?君は何か知っているのか?』