『そうかも。フフフ。』
その姿に
『あら、ここでもかまいませんよ?』
『いや、二階で。そいつの面倒をみてやってくれるか?』
『ええ。勿論。』
雪久は階段を上がった。二階は物がなくがらんとしている。窓を開けると煙草を銜え火をつけた。窓辺に座り静かに降りてくる夜の空を見つめる。
『恋…か。』
ふとお嬢様に恋焦がれている
雪久は壁にもたれると煙草の火を見つめた。ジジジと燃えつき灰になるそれを灰皿に落として反芻する。
ふと階下で物音がして雪久は溜息をつくと、窓の外を眺めた。
一階、片づけを終えた
『聞こえちゃうわ。』
真舌は少し苛立ったように菊の足元に手を伸ばすと着物を持ち上げた。
『菊ちゃん、俺が酔ってないってわかってて…どうして雪久を誘うかなあ?』
『あら、誘ってはないわよ。あなたがザルなのは
『それはそうだけど。でも解せないな。友人だなんて。』
白い太ももが露わになって真舌の指が食い込んだ。
『あら、やきもち?』
菊はしれっと言葉にすると微笑んだ。それを真舌が鼻で笑う。
『そんな簡単なものじゃない、嫉妬だ。』
『…フフ、可愛いのね。』
真舌は菊に顔を近づけると唇を触れさせた。
『悪い女だな、菊は。』
菊は触れた唇にもう一度押し付けるとフフと笑う。
『違うわ、いい女なのよ。』
『ハハ、違いない。』
真舌がシャツを脱ぎ捨てる。
『ねえ、聞こえてしまうわ。』
『そう思うなら静かにすればいい。』
吐息が漏れる中で衣擦れの音が部屋に響き渡る。汗と混じった匂いがして二人の影がゆっくりと揺れた。
快楽は人を駄目にすると祖母に言われたことを菊はふと思い出した。自分の上にいる男がたまらなく愛しいのは快楽のせいか、それとも愛しているからか。
子供のようにはしゃいだり、くだらないことで嫉妬するような男は今までにいなかった。
事が切れて真舌が横に寝転がると菊の頬に優しく触れた。
『…無理矢理だったね。』
『いいわよ、別に。』
菊は起き上がると着物を直す。ふと足についた赤い手の痕に指を伸ばした。