藤田は雪久に会釈する。
『ああ、続木です。どうも。
『そうですか。あっ!』
藤田の傍から瑪瑙がするりと抜けて
それに藤田は少し残念そうに苦笑する。
『嫌われているようです…僕は楽しみにしていたんですが。』
『そう…。』
『ああ、気になさらず。』
はあっと溜息をつく藤田に雪久はフフと笑う。藤田とはすぐに意気投合し、すぐに砕けたように二人は会話を始めた。
『…ハハハ、そうか。小鹿先生の所の人でしたか。あっちで見ましたが相変わらずですね?』
『そうだな…あの人はいつもああだから。けどああして沢山の人に囲まれているのが当たり前のようにも見える。』
『うん、そうですね。』
藤田はそう言うと少し顔を俯かせて息を吐いた。
『うん?瑪瑙さんのことか?彼女の婚約者とは君ではないのか?』
『あ、ああ…ええ、そうです。でも嫌われている。』
『そうか?彼女はそうは言ってはいなかったように記憶してるが。』
雪久の言葉に藤田はパッと顔を明るくした。
『そう…ならいいんですけどね。』
『何か問題があるのか?』
藤田は壁にもたれると視線を上げた。
『多分、色々と誤解されてる。彼女の母上のこともそうだけど…。』
そういえば小鹿がそのようなことを言っていたのを思い出す。
『聞いてもいいなら聞くが。』
『うん、実は…。』
『小鹿先生にもお願いして、でも…まだわかっていなくて。』
『ああ、それは気に病むな。瑪瑙さんは知っているのか?』
『少し…僕がこうして調査していることは知りません。』
『ふむ…ではそれが原因で彼女が君を避けているわけじゃないだろ?』
藤田は苦虫を噛み潰すと苦笑した。
『ええまあ。…実際はちゃんと話したことがなかったんです。先日会食で一緒になった時に紹介してもらったんですが、不機嫌になってしまって。』
『何か言ったのか?』
『…。』
藤田が黙り込んだので雪久は顔の覗きこむ。
『で、何か…言ったんだな?』