『いらっしゃいませ。』
シャオはおかしそうに噴出すと靴を脱ぐ。彼女が居間に入ると珠は急ぎお茶を入れに台所へ飛んでいった。
『悪いね、…君が好きみたいで。』
二人で席に着くとシャオは口元に手を当てて笑った。
『ううん、かまわない。妹みたいで可愛い。』
珠がお茶とお菓子をもって現れるとシャオは珠に微笑んだ。
『ありがとう、珠。』
珠はそれに胸に手を当てると嬉しそうに微笑み、部屋の端に座った。
数時間してシャオが時計を見上げて頷く。
『今日で終わりか…もう随分上達したんじゃないかな?』
『そうか…それならシャオのお陰だ。ありがとう。』
『いいや、雪久の勘がいいんだよ。発音もいいし、難しい言葉なしなら大丈夫そうだ。』
シャオは笑うと立ち上がった。ポケットを探り部屋の隅にいる珠の前に立つと手を差し出した。
『シャオさん?』
きょとんとした珠にシャオは手を開く。その手の中には小さな鈴があった。それを珠の手に握らせる。
『今日でここに来るのは最後だから。お守りにね。神社の前に出てた屋台で買ったんだ。珠にあげる。』
『いえ、そんな!』
『珠に似てたから買ったんだ。可愛らしい赤い鈴。』
困った顔の珠に雪久は頷く。
『貰っておきなさい。シャオがくれるというのなら。』
『よろしいんですか?』
珠の言葉にシャオは微笑み頷いた。
『もちろんだ、今日までお茶をありがとう。こんなに親切にしてもらったのは二度目だから。ありがとう。』
珠はくしゃくしゃに笑うと泣き出しそうに俯いた。
『ありがとうございます。シャオさん。』
シャオはハハっと笑うと珠を抱きしめた。
珠の涙と別れ、雪久はシャオを送って街中まで来ていた。
この辺りからシャオの住む家はもう少しあるが、ここでいいと彼女は笑う。
『今日までありがとう。シャオがいなかったらもっと大変だった。』
『いいよ、そんなこと。それより木綿子のことだけど…。』
シャオは少し伺うような顔をした。
『昨日、先生が