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油揚げを求めて

「ソウタの発作は置いておくとして、実際モンスターが金品を要求するというのは不思議だね。何か理由があるのかい?」


 発作とは失礼な! 美少女を見た健全な男子はこうなるものだろ?


「お金がないと人間の食べ物が食べられないじゃない。人間に化けて町で食べ歩きをするのが夢なの」


「ああ、なんて可愛らしい夢なんだ! そんな夢ならいくらでも叶えてあげるよ」


「クララちゃんに言うぞぉ」


 ななな何を言ってるんだ、くくクララちゃんはかか関係ないだろ。


「一緒に行ったら美味しいもの食べれる?」


 なんと、妖狐の美少女は仲間になりたそうにこちらを見ている!


 仲間にしまぁぁあす!


「モンスターを連れて行くのかぁ?」


「私は構わないけど、ライアンは?」


「悪さをしないなら構わないだろう」


 誰か反対するかと思ったら、全員すんなりと受け入れた。俺が言うのもなんだけど、大丈夫か?


「よし、一緒に美味しいものを食べに行こう!」


 俺の言葉に笑顔を見せる妖狐ちゃん。なんて可愛い笑顔だろうか!


「やったー! 私、食べてみたいものがあるの」


 何を食べてみたいのだろうか?


 しかしこの子もずいぶん人懐っこいなかわいい。ここまで全てが妖狐の罠だったとしたら、とんでもない強敵だかわいい。こうして疑っていても抗えない魅力があるぞかわいい。


「何が食べたいの?」


「油揚げ!」(※妖狐と言えばこれ)


 さすが妖狐! 本当に油揚げが好きなんだなかわいい!


「油揚げって、この世界にあるのかな?」


 雄峰がライアンに尋ねた。言われてみれば、このどこかで見たようなファンタジー世界に油揚げがあるのだろうか? 妖狐がいるのもおかしいけど。


「聞いた事もないな。少なくとも私はカルボネアで目にした覚えはない」


 だよねぇ。このハゲが食べ物に疎いだけって可能性もあるけど、油揚げが普通に存在したら目にした事ぐらいはあるはずだよな。とはいえ存在しない物の名前を知ってるはずはないし。


「どこで油揚げの名前を聞いたんだぁ?」


「お母さんから聞いたの。町には色んな食べ物があって、油揚げは特に美味しいって」


 ほほう……そのお母さんがどうしているのかは、聞かない方が良さそうだな。雄峰と源三郎も察している様子で、俺達三人は無言で目配せし合う。


「君の母親はどうしているんだ?」


 空気を読まないハゲ。こいつよく城に仕えてられるな?




 彼女の話によると、母親は既に亡くなっているらしい。知ってた。(※まったくデリカシーのないハゲだ)


 生前の母親から聞かされた話を自分で試してみたくて、老婆に化けて旅人を待っていたそうだ。俺達はその記念すべき最初の獲物だったという訳で、不慣れな彼女は人を騙す演技も、人を襲ったり脅したりする方法もよく分かっていなかったのだ。


「……ところで、君の名前は?」


 そうだ、名前を聞いていなかった。


「私はティラミスだよ!」


 そこで俺のリクエストに応えるのかよ!


「よろしくね、ティラミスちゃん。俺はソウタ」


 俺達は自己紹介をし、油揚げを求めて共に旅する事を誓ったのだった。


 あれ? 俺達の旅の目的ってなんだっけ。




 しばらくして、カルボナーラに到着した。道中、特に危険な事もなくモンスターを退治しながら進んだ。ちなみにライアンはずっと防御スキルを繰り返していた。


 いや、助かるんだけどね? 気分的にね?


「油揚げはあるかなーっ?」


 目をキラキラさせながら走り出すティラミスちゃん。


――きゃーっ、モンスターよー!


 そりゃそうだ。慌てて駆け寄った。


――まさか、ピエロか!?


 またそれか。


 いや、これはチャンスだ。大道芸でも披露してティラミスちゃんから注意をそらそう。


「レディースエンドジェントルメン!」


 何も言ってないのに即座に口上を述べて注意を引く雄峰。源三郎がティラミスちゃんをさりげなくライアンの後ろに隠す。


 そして俺は、玉乗りとジャグリングの複合技を披露して見せた。




「駄目だよ、人間に化けなきゃ」


「ごめんなさーい」


 芸で誤魔化した後、ティラミスちゃんが耳を伏せて謝った。はいかわいい。


「さあ、気を取り直して油揚げを探しに行こう!」


 俺達は気合を入れ、町の探索を開始した。


 目的はただ一つ、油揚げを見つけるのだ!

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