「油揚げ見つかった?」
「いや、まったくそれらしいものはないな」
予想していたが、やはり油揚げは見つからなかった。
「これ美味しいよ!」
ティラミスちゃんはそこの店で買ったパニーニを食べてニコニコしている。俺も買ってみたけど美味いなこれ! ただのシマシマに焦げ目がついた焼きサンドだろとか思っててごめんなさい。
「名前のせいか、イタリアンな食べ物が多いね」
ピッツァを手にした雄峰が言う。確かにそうだな、元日本人の舌にはどれも問題なく美味い。食べ過ぎで太ってしまわないか心配になるけどたぶんゲームのお約束的に体型が後から変わったりはしないんだろう。そういうゲームたまにあるけど。
「ティラミスは楽しんでるけど、肝心の油揚げを見つけないとモヤモヤするぞぉ」
わかる。
「ならば、自分達で作ってみるのはどうだ? 作り方は分からないのか?」
ライアンの提案。油揚げが無いなら自分で作ればいいじゃない!
たまには良い事言うなハゲ!
「いいね! 油揚げってどうやって作るんだっけ、豆腐屋に売ってる事は知ってる」
「そうなんだ、作ってみたーい!」
ピョンピョン跳ねながら乗り気のティラミスちゃんのためにも、何としても作らなくては!
「油揚げは、固めに作った豆腐を薄く切ったものを油で揚げて作るんだ。まずは豆腐を作らないとね」
豆腐の作り方は知ってる。昔学校の授業で何故か豆乳から作ったからな。
「問題は材料だなぁ」
「大豆とにがりを探そうか」
大豆がないとお終いだけど、さすがにあるよな?(※大豆はアジアには大昔からあるのだけど……)
「にがりって何?」
何だろう? どうやって作るのかは俺も知らない。
「簡単に言うと、海水を煮詰めて塩を取り除いた後の水だよ」
へー、海水……海!?
海と言えば!!
水着回!!!!
「ソウタの息が荒くなっている。どうやら次の目的地が決まったみたいだね」
呆れたように言う詐欺師。スカしてんじゃねーぞこのシスコン!
「海行くの? 楽しそう!」
何やっても楽しそうなティラミスちゃん、純粋かわいい。
「そんな純粋な子に水着を着せて性的な目で見ようとしているピエロがこちら」
待ちたまえ、一体何を根拠にそのようなっていうか心を読むな。
「考えてる事が全部顔にでてんぞぉ」
うぐぐ、助けてピエロマスク!
「今更マスク被っても無駄だからね」
「水着を買いに行くのか? 当然だが装備できない水着は買うなよ」
水着も装備扱いかよ知ってた!
「あと、ちょうど海のモンスターを退治するクエストがある。忘れずに受けておけよ?」
クエスト?
……あー、そういえばそのためにカルボナーラに来たんだった。
とりあえず、まずはクエストを受けようという事で、ギルドに行く。
「私もクエスト受けたい!」
何にでも興味を示すかわいい。でも無理じゃないかなかわいい。
「お嬢ちゃんは冒険者かい?」
ドノヴァンに似た顔のおっさんが尋ねる。ギルドマスターはみんなこんなのか?
しかし、人間に化けた妖狐だと教えるわけにもいかないしどうしたもんかな。
「この娘は妖狐だが我々と同行しているのだ」
はいハゲ。
「なるほどね、モンスターでも冒険者になれるよ」
意外な答えが返って来た。言われてみるとゲームじゃモンスターが仲間になるのはよくある事だよな。
「ジョブやクラスはどうなるんだぁ?」
それな!
「フフフ、心配ご無用。ちゃんとモンスターのクラスがあるんだぜ! 冒険者になりたがるモンスターなんてピエロ並みに滅多にいないけどな」
隙が無いな。都合が良いから文句は無いけど。
そしてティラミスちゃんはジョブがモンスター、クラスがマスコットになった!
「え~、マスコットぉ?」
ティラミスちゃんは不満げだが、実に正しい。ペットとか言われたら新しい世界が開いてしまったかもしれない。
「もっと漆黒の殺戮者みたいなカッコイイのが良い!」
漆黒でもなければ殺戮者でもない美少女が中二病を発症している。
「まあまあ、クラスアップすれば九尾とかにもなれるから」
尻尾増えてる!? ていうかそれ妖狐限定だよね?
そんなこんなでクラーケン退治を引き受けた。
……人魚退治とかだったらどうしようかと思った。