クラーケンはデカい。どれくらいデカいかと言うと、牛久大仏が触手を生やして攻撃してくる感じ。
「防御は任せろおおお!」
吠えるハゲ。いや、無理じゃないかなー? 盾は持ってるけど、今水着だよ?
「はああああ! 『騎士の盾』!!」
前にもこの展開見たぞ。ていうか戦闘のたびにこれしかしねえ!
ゴーレムとか雑魚敵相手ならいいけど、あの触手うねうねしてるクラーケンにやったら……。
「うおおおお! 変なところに吸い付くなああ!」
ハゲは触手に巻き付かれ、高々と持ち上げられた。いや、悠長に見てる場合じゃない。これ地面に叩きつけられたら普通に死ぬぞ!
「助けるぞ!」
俺と源三郎は武器を手に駆け出し、雄峰とティラミスちゃんは魔法の準備動作に移った。
目の前では水着を脱がされ、体中を触手に巻き付かれたハゲが裸体を晒している。
やる気が50減った!!
あのさぁ……タコはそういうのが好きなの? 真面目にやってくれない?
「やる気無くしてないで、助けるよ」
詐欺師のくせに聖人君子か!
『メガフレイム!』
『狐火!』
二人が巨大な炎を生み出し、ライアンを絡めとる触手を攻撃した。焼かれた部分が赤く変色する。
「クリスタルダガーの威力を見ろぉ!」
源三郎が素早く焼けた触手を斬り刻む。なるほど、タコは生より火が通った方が斬りやすいもんな!
俺も続いて触手を斬り付け……別の触手が俺を捕まえた!
「ぬわあああ! ヌルヌルするううう!」
おいやめろ、何故水着を脱がそうとする? どうせならティラミスちゃ……いや違うんだ、そんなエロ目的で連れてきたんじゃないんだからね!?
「ソウタ!」
助けてみんな! そういえばハゲはどうなった?
見ると、どうやらうまく救出できたらしく全裸で盾を構えていた。防御はいいから水着を着ろ。
何はともあれ、助けられた俺は水着を着た。一瞬で着れるから楽ちんだな! だからハゲも早く着ろ!
「焼いて斬ってを繰り返せば倒せそうだね」
うむ、何故か執拗に水着を脱がすだけで殺そうとして来ないから助かった。そんなに男の裸が見たいのか?
「行くぞ、『
大泥棒の数少ない攻撃スキルだ。旅芸人には攻撃スキルなんて一つも無いけどな!
『フレイム!』
仕方ないから炎の魔法で攻撃する。名前から分かる通り、雄峰の魔法よりレベルが低い。
『騎士の盾!』
わかったから水着を着ろ。
その後、タフなタコと十数分に渡る戦闘を繰り広げ、何とか倒す事に成功した。ほとんど焼けたからカルパッチョは無理だな。そもそもオリーブオイルがないけど。
「さて、次はにがりを作るか」
作り方が分からないので、雄峰が作るのを見ていよう。ティラミスちゃんは目を輝かせながら煮詰まる海水を観察していた。
「すごーい! これが塩なんだ」
雄峰が網で
作成したにがりを袋に詰め、口を開く雄峰。
「さて、ここからが問題だが……大豆はどうやって手に入れよう?」
えっ、大豆ってその辺に売ってるんじゃないの?
「町で店を巡ったが、大豆がどこにも売ってないんだ」
マジかよ、大豆の方が入手難度が高いなんて。
「ダイズなら聞いた事があるぞ。ひとまずカルボナーラに戻ろう」
ライアンが知っているらしい。なんか言葉に違和感があるような気がしたが、たぶん気のせいだろう。はっはっは。
こうして海を後にした俺達だったが、そういえば海水浴してないじゃん!
……まあ、あんな水着じゃ気分が乗らないからいいか。