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不老長寿は蜜の味?

 カルボナーラに到着したら、何やら不穏な空気が漂っていた。具体的には町の人達の顔が暗い。


「これはどうした事だ!?」


 ライアンが異常を察知し、人々に事情を聞き始めた。こういう空気には敏感なんだな、ハゲても正騎士か。


「まっ、まさかそんな事が!」


 やっぱりよろしくない内容だったみたいだ。


「どうしたんだぁ?」


 俺たちはライアンのそばに駆け寄って話を聞いた。


 簡単にまとめると、ライアンの主であるこの国の王が急に姿を消して、それと同時に隣国のトルトーネがピエロの引き渡しを要求してきたという。


「俺かよ!?」


「ソウタってそんな凄いの? 国が取り合うなんて、お姫様みたい!」


 男だけどな! やめて、私のために争わないで……とか言ってる場合じゃない。どうせ目当ては悪魔との契約だろう。


「トルトーネの王はあまりいい噂を聞かないね」


 ここに来て久しぶりに世界知識を披露する雄峰。


「増税を繰り返し、贅沢の限りを尽くして国民の生活を顧みない。不老長寿を求めているとも言われるが、そのためにピエロ引き渡しを要求しているんだろう」


 ライアンが真剣な表情で俺達に相談してくる。大体予想はつくけど。


「すまんがダイズは後回しにしてくれ。一緒に王城へ来て欲しい」


 雄峰によるとカルボネアの王には二人の娘がいて、王妃マリネは既に他界しているそうだ。王が行方不明となれば、第一王女マリネラが国の指導者となる。


「マリネラ王女が政治を執り行い、妹のマリナード王女が軍事の指揮を執る。まずマリネラ王女にお会いするのだ」


 マリネ、マリネラ、マリナード……なんか……いや、この非常事態に余計な事を考えてる場合じゃない。


「マリネ、マリネラ、マリナードってなんかゲームの呪文みたいだなぁ」


 おいやめろ、そうとしか考えられなくなっちゃうだろ! 次女が一番強そうとか言うな!


「すっぱそう!」


 それも今は控えておきましょうね、ティラミスちゃん。




 そして俺達は城に招待された。ライアンの顔パスである。本当に偉いんだな、ハゲのくせに。


「おお、ライアン殿。その方達が例の……どうぞ謁見の間へ」


 お城の豪華な内装に目を奪われつつ、王女様ってどんな人かな~なんて呑気な事を考えながら謁見の間へ向かった。


「ようこそおいで下さいました。私はカルボネア国王代理のマリネラと申します。既にご存知の事かと思いますが、現国王のペスカトーレ五世が姿を消しているため第一王女の私が代理をしております」


 ペスカトーレ! ペスカトーレ……なんだっけ、絶対何かの食べ物だペスカトーレ。あー思い出せなくて気になるううう!


「……という訳で、皆様には捜索をお願いしたいのです」


 やべっ、聞いてなかった!


「任せてください! 必ず探し出して見せますよぉ!」


 源三郎の目が輝いている。おそらく何か人助けだな? よし、探し物ならコイツに任せておけばいいから適当に頷いて話を合わせとこう。


 ところで王女様は金髪碧眼の美女だった。なんていうか、おとぎ話のお姫様って言ったらこんな感じ。美女でも、見るからに偉い人なオーラを放ってるとあんまり盛り上がらないよね。なんか凄く綺麗な絵画を見てるような気分で。


「では、マリナード王女の所へいくぞ」


 マリナード王女は軍事を取り仕切っているという事で、騎士達の集まる会議室にいるという。


「ソウタは珍しく発作を起こさなかったね」


 発作いうな!


「何か偉い人オーラが凄くて」


「あ、わかる!」


 何故かティラミスちゃんが同意した。


「よく来たな! わらわが第二王女のマリナードじゃ」


 えっへんと胸を張って偉そうに出迎えてくれたのは、十歳ぐらいの女の子だった。


 えーと、まあ確かに年齢は関係ないんだろうけど。


「……こんな小さい子で大丈夫なの?」


 思わずライアンに聞いて、言った後でとんでもない無礼だったと気付いた。しまったああ!


「わっはっは、さすがピエロじゃ。どいつも気を使って言わない事をはっきり言いよる。宮廷道化師ジェスターは国王をも笑いものにする事を許された存在だそうじゃが、かつての王族が重宝した理由が分かるのう」


 満面の笑みで許してくれるのじゃロリ姫。確かに、言わないからって思わない訳じゃない。周りの部下達が内心侮っているのを肌で感じる事もあるだろうし、色々とストレスが溜まってるんだろうな。


「心配はいらんぞ。トルトーネなぞにお主を渡したりはせぬ」


 そう言えばそんな話だった。


「はっ。では私はすぐにトルトーネ国境へ向かいます!」


 ライアンが姫に向かって敬礼をした。あれっ、俺達は何かを探すんだよな? ここでハゲ離脱ってこと?


「軍の指揮は任せたぞ。ライアンが一番高位の正騎士じゃからな」


 そんな偉かったのかよこのハゲ!?


「ソウタが立派な宮廷道化師になるまで守りたかったが、こんな事態だ、許してくれ」


 そう言って颯爽と部屋を出ていくハゲ。なに去り際だけカッコよくなってんの? もうちょっとお別れの挨拶とか……絶対帰って来いよな!


「それでは行こうか!」


 のじゃロリが剣を手に俺達に近づいて来た。行くって、どこへ?


「私達はマリナード王女と共に行方不明の国王を探しに行くんだよ」


 急展開についていけてない俺に、雄峰が説明してくれた。


 なっ、なんだってーーー!?

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