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にゃんにゃんにゃんこ

 ビールへ向かう俺達は、途中にいるデカいモンスターを警戒していた。


「なんというモンスターなのじゃ?」


「シュヴァルツ・カッツという名前だそうですね」


 なんかかっけぇ! この世界にそんなモンスターがいて良いの? 世界間違えてない?


「なんか聞いた事があるなぁ?」


 知っているのか源三郎? いや、雄峰じゃなくお前が? マジで?


「……」


 そして雄峰は考え事をしている様子。こういう時は大体知ってるけど黙ってるパターンだ。理由は確証がないか、単に面白がってるかのどちらかだ。その両方という事も多い。


「シュヴァルツ・カッツか……ティラミスは知っておるか?」


 妖狐のティラミスちゃんに振る。確かにモンスター世界で名が知られているとかいう事もあるかも知れない。


「うーん? ごめんね、知らないや」


 ですよねー。




 しばらく進むが、デカいモンスターなんて影も形も見えない。プリン・ア・ラ・モードも3メートルぐらいあったからな。デカいって言うからには相当なデカさだろう。


「あっ、ねこ!」


「うおっ、でけぇ!」


 ティラミスちゃんが指差した先には、体長1メートルぐらいある巨大な黒猫がいた。


「ふはははは、待っていたぞソウタ! 我こそはこの道を守るシュヴァルツ・サラトバッハ四天王が一人、シュヴァルツ・カッツ!」


 黒猫はなんと言葉を喋った!


「きゃーーー!」


 驚きの声を上げる女性陣。ああ、俺もビックリだよ!


「かーわーいーいーーー!!」


 違う悲鳴だった。ティラミスちゃんも可愛いのとか好きなんだね、食べ物にしか興味ないかと思ってたよ。


「なっ、何をする! 我はシュヴァルツ・サラトバッハしてん……にゃああああ!」


 女の子二人にもみくちゃにされるなんたら四天王。体中を撫でられている……うっ、羨ましくなんかないぞ!


「あーん、可愛い!」


 君達の方が可愛いよ。




 しばらく女の子達に撫でられて、ヨレヨレになったシュバなんとかはフラフラしながら逃げて行った。


「……まあ、あれが噂のモンスターらしいし、ビールの村に急ごうか」


 四天王って言うぐらいだからもう三匹いそうな気がするけど……と思っていると、道の端から物凄い速さで現れる黒い何か。


 そう、ゴ・〇・〇ピー・リ!


「ふはははは! 我こそはシュヴァ」


「嫌あああああ!」


 プチッ。


 あっ……。


「気を取り直して先に進もうか」


 雄峰の言葉に頷き、何も見なかった事にした。


 しばらく進むと、切り立った崖の上を進む道になった。覗いてみると底が見えない。落ちたら一巻の終わりだな、気を付けて進まないと。


「よくぞここまで来た!」


 頭上から低い声が聞こえる。見上げるとそこには真っ黒い身体をした一つ目の巨人が俺達を見下ろしていた。


 いつの間に!? 全く気が付かなかったぞ。


 これも四天王の一人か……前の二匹みたいなお笑い四天王では無さそうだ。


 俺達は真剣な表情で頷き合い、武器を構えた。


「我こそはシュヴァルツ・サラトバッハ四天王が一人、シュヴァルツ・リーゼ!」


 巨人はその巨大な足を上げ、俺達の前方の道に下ろした。


 ズルッ!(※あっ)


「あ」


 底の見えない崖に消えていく黒い身体は、途中から全く見えなくなっていた。


「……」


 もはや言葉を発する気力も無くなった俺達は、一路ビール村へと進む。




 そしてついに、俺体はビールの村に到着したのだった!


 あれ? もう一匹は?


◇◆◇


 シュヴァルツ:ドイツ語で黒の意味。


 カッツ:ドイツ語で猫の意味。


 黒猫のラベルが有名なワインの銘柄でもある。


 ちなみにリーゼはドイツ語で巨人の意味。

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