「心配するな。そんなに難しい事ではないのでな」
俺達が困った顔をしていると、占い婆は助け船を出してくれた。さすが占い師!
「枝豆はあそこにあるぞ」
家から出て、ある方向を指差す婆。
その方向を見ると……何故か崖の上を一本の綱が渡してあり、向こう側には何故か円柱状の大地。要は360度崖に囲まれた地面の上にそれっぽい植物がもっさり生えている。
なんだその地形は。(※現実にはあり得ないのにRPGにはよくある地形)もうちょっと考えて作れよ……って言うか綱じゃなくて橋を渡せば良いだろ!?
「見ての通り、枝豆を採取するには『綱渡り』のスキルが必要でな」
分かりやすい! そして失敗すれば死!
「ちょっと待って」
いや、確かに俺は綱渡りのスキルを持ってるよ? (※「クララちゃんと一緒」参照)
そういえば地獄で鉄の塊背負って綱渡りした事あるよ? 落ちたけど。(※粉々に砕け散りました)
でも死んだら終わりのぶっつけ本番でこの崖はないだろ! なんかでっかい巨人も落ちて見えなくなったぐらい深いんだぞ!(※覚えてたのか)
「頑張れぇソウタぁ!」
おっさんの汚い声で応援されてもまったくやる気が出ない。
「父上捜索の為にも、頑張ってくれソウタ!」
マリナードが上目遣いで頼んでくる。ぐぬぬ……いや待て。
「やっぱり占いなんかに頼るのは良くないよな! トルトーネに行こうぜ、マリナード!」
そうだ、別に占って貰わなくても自力で探せばいいんだ。マリナードも最初トルトーネを探ろうって言ってたしな。よし、トルトーネを探ろう!
ガシッ!
後ろを向いて逃げ出そうとした所で源三郎と雄峰に肩を捕まれた。
「やめろ~! まだ死にたくない~!」
「まあまあ、ちゃんとスキルがあるんだから大丈夫だって。それにいい知らせがあるよ、枝豆は若い大豆の別名だ!」
大豆……つまり豆乳の材料であり豆腐の材料であり油揚げの材料である。
「油揚げの材料だ!」
食べ物の事はよく覚えているティラミスちゃんがピーンと耳を立て、キラキラと輝く目で俺を見てくるかわいい。
うっ、そんな目で見られると……いや、しかし。
「もう一声必要か」
雄峰がティラミスちゃんに何やら耳打ちする。
「えっ、ご褒美のチュー?」
さあ渡るぞ! 俺はピエロだからな!! 俺がやらねば誰がやる!!!!
「うおおおお! 崖がなんぼもんじゃーーーい!!」
俺は崖に渡された綱に向かって走り出した。
「あっ、命綱……」
雄峰がなんか言ったような気がしたが今の俺はなんぴとたりとも止めらないのだ!
うおおおお! 唸れ俺の大道芸人スキル!
『綱渡り!』
「凄い気合いのわりにソロソロと渡っていくんだなぁ」
うるさい黙れ気が散る。
俺はヨロヨロとふらつきながら綱を渡り切った。
「やったー!」
向こう岸から歓声が聞こえる。俺はやり遂げたんだ!
「これが枝豆? 大豆にするにはどうしたらいいんだ?」
確かに近くで見ると見覚えのある鞘に入った緑色の豆が沢山ついている。
「大豆はそれが成熟したものだよ。二株ほど持ってくればちゃあんと育てて大豆にしてやるからな」
占い師は俺達のニーズにもしっかり応えてくれるようだ。さすがだな。
しかしこれをもってまた綱を渡るのか。
「魔法で一気に引き寄せたりとか出来ない?」
「無理」
はい。
「はああああ! 『綱渡り』!!」
両手に枝豆を持った俺は、どこかのハゲ並みに気合を入れてスキルを発動し、ヨロヨロと帰るのだった。
「……命綱無しでよく行ったね」
帰った俺に、手に持った命綱を見せる雄峰。
最初に出せよおおおおお!!