次の日、ついに俺達は国王の居場所を占って貰う事になった。ええと、ペ、ペス……?
「ペスカトーレ五世の居場所を占えばいいのかい?」
そう、それ!(※そろそろ名前を覚えてやれ)
「頼む、父上がいないと……」
マリナードが真剣な眼差しで占い婆に頼む。うんうん、母親も亡くなったっていうし親がいなくなったらさぞ悲しいだろうな。何とか見つけてやらないと。
「妾が姉上の相手をしなくてはならなくなるのじゃ!」
……ん?
なんか想像してたのと違う心配をしている。姉上ってあの偉い人オーラを発してた美人さんか。
「あのお姫様がどうしたんだぁ?」
さすが隙を見逃さない源三郎、容赦なく立ち入った質問をする便利なおっさんだ。(※代わりにヘイトを稼いでくれる)
「うむ、姉上はな……怒ると怖いのじゃ!」
うむ。十歳児らしい率直な意見をありがとう。
「そうなの? 優しそうだったけど」
首を傾げながら聞くティラミスちゃん。そうなの? の部分で耳がピコッと動いたのがあざとカワイイ。
「姉上は外面だけは良いのじゃ! 一日に一回は機嫌が悪くなって父上を蹴り飛ばしておる。きっと父上は姉上の暴力に耐えきれず逃げ出したのじゃ!」
おおう、バイオレンス。そんな哀れな父上を連れ戻そうとする鬼畜がここにいるぞ!
「妾の身を守るためじゃ!」
マリナードにまで心を読まれた。ピエロマスクを装着しとこう。
「なるほど、第二王女自ら探しに出たのは城に二人で残りたくないからだね」
余計な考察をする雄峰。わざわざ解説しなくても分かるから!
ハゲがいなくなった分おっさん達がKY要素引き継いでない?
「ペスカトーレ五世はカルボネア城におる」
唐突に居場所をバラし……教えてくれる占い婆。城にいるのかよ!
「なんと、隠れておったのじゃな? やはり姉上を妾に押し付ける気か。許さんぞハゲオヤジ!」
こら王女様、口が悪いですぞ……って国王もハゲてるのかよ!
なんなの? ハゲの王国なの?(※まだ二人しかハゲてないから)
「……見つけても良いのか? 微笑ましい家族喧嘩で済む状態ではないぞ」
「えっ?」
深刻な顔で不吉な事を言う婆。いやまあ、娘の暴力に耐えかねて隠れる王様なんて情けない話はあるわけないのが普通だけど……。
「まさか、姉上が力加減を間違えて……」
そっち!?
「ヒッヒッヒ、それはどうかのう?」
不気味な笑い声を上げた後、真顔で一言だけ付け加える占い婆。
「当たらずとも遠からず」
それっきり、質問には答えず「これでお終い」と追い出されてしまった。
俺達はビールの村を出て、ストラグルの町へ向かっていた。
「なんという事じゃ。いつかはやるだろうと思っておったが、姉上が過ちを犯してしまうとは」
お~い、本音が混じってるぞ~。
どんな人なんだあのマリネラ王女って。おとぎ話のプリンセスなイメージしかないんだけど。
「こうなったらあのお姫様には知られないようにこっそり探さないとなぁ」
この手の話になると頭の回る源三郎。そうだな、何か関わってるかもしれないマリネラさんには秘密にしておいた方が良さそうだ。
「それで、マリネラ王女に知られずに城に忍び込むルートはあるんですか? マリナード王女」
王族しか知らない秘密の入り口とかありそうだな。相手も王族だから待ち構えてるかも知れないけど。
「いざという時に脱出するための抜け道から入れるはずじゃ。ただ、妾はその外側の入り口までは知らぬ」
やっぱりあるのか! でも外に出るための道だもんな、分からないか。
「ああ、それなら大丈夫。私にいい案があるよ」
おお、久しぶりに雄峰がやる気だ!
「まずはストラグルの町で油揚げを作ろう」
「わーい!」
喜ぶティラミスちゃんだが、このタイミングで作るという事は油揚げが重要になるのか?
「いや、材料をいつまでも持ってても仕方ないからここで消費しとこうと思って」
マイペースだなー。一応まだ生きてるかもしれないんだし、早く探してあげようよ。
「前から話しておったあの油揚げか! 妾も食べたいぞ!」
ペ……ハゲ国王は次女にとっても油揚げ以下の存在だった。
可哀想だから俺だけは無事を祈っといてあげよう、うん。