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カルボネア城

 シュバルツ・アイデクセでは長いので、アイちゃんと呼ぶことになった。


「ふむ、親しみやすい呼び名だな。気に入ったぞ」


 ナイスバディなお姉さんにはちょっと可愛らしいあだ名な気がするけど、呼びやすいからいいか。


「発作は収まったかぁソウタ」


 源三郎がニヤニヤしながら聞いてくる。こいついつもニヤニヤしてるな。


「失敬な、発作とかじゃなく美しい女性を見たら男として抑えきれないパトスが」


「そんな事より城に行くんだろう? 早く行こう」


 雄峰に背中を押して急かされ、話が中断する。油揚げ作ってたクセに!




 カルボネア城に入ると、兵士達が敬礼をしてくる。そりゃそうだ、こっちには王女様がいるんだった。


「トルトーネとの争いはどうなっておるのじゃ?」


 そういえばそんな事になってたな。ライアンは無事だろうか?


 融通が利かなくて空気が読めないけど善意の塊のような男だった正騎士の身を案じる。今まで存在を忘れてたけど。


「ライアン殿の強固な守りに敵は攻めあぐねております。さすがですね!」


 防御しかしないハゲだけど、防衛ではやはり強いみたいだ。とりあえず無事なようで良かった。


「して、国王の行方は何か分かりましたか?」


「うむ、占い師によるとこの周辺にいるそうじゃ。それで一旦城に帰って来たのじゃ」


 さすがに城の中にいるとは言えないけど、この説明なら城に戻った言い訳が立つ。もちろんこの受け答えすら雄峰が考えてマリナードに仕込んだものだ。少しのやり取りでもしっかり設定を作るのは詐欺師にとって必須事項だ。


「ところでそちらの女性は?」


 以前はいなかったアイちゃんに不審の目を向ける兵士。目ざといな。


「アイちゃんだ」


 いや、自分で愛称を名乗るのはやめよう? しかも真顔で。


「アイさんはビール村の占い師のお弟子さんでね、王様の捜索を手伝うためについて来てくれたんだ」


 雄峰が真実と嘘を混ぜて説明する。詐欺師マジ詐欺師。


 上手い事納得させてその場を離れた。


「そういえばアイちゃんはどんなジョブなのじゃ?」


 ジョブって、モンスターじゃないの?


「我はジョブとしては司祭プリーストだが、クラスは修道士モンクだ」


 司祭と書いてプリーストって読むの俺的に違和感があるんだけど、雄峰によるとこれが正しいらしい。たぶん昔のゲームとかで使われてたときは作った奴が適当に考えてたんだろうな。司祭のジョブは特殊で、クラスが枝分かれしている。修道士は素手で戦う武闘派だ。こちらはゲームでおなじみの設定だな。


 まって、という事はアイちゃんは格闘するの? そのドレスで?


「パンチやキックで戦うの? 戦いづらくない?」


 モフモフの尻尾を二本も生やしてるティラミスちゃんが質問する。おまいう。(※お前が言うなの略)


「心配は要らん。ここにスリットが入っているからな」


 と、チラリとスカートのスリットから太ももを見せるアイちゃん。ふおおおお!(※これは変質者)


「息が荒いぞソウタぁ」


 むしろなんでおっさんは息が荒くならないんですか?


「さあ、雑談はここまでだ。私とソウタの出番だよ」


 そんな俺達の馬鹿話を制して雄峰が作戦開始の合図をした。


 よし、気合入れていくぞ!

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