夜になった。さあ王様を探しに行くぞ!
「準備は出来たかな?」
「ねむ~い」
「へへっ、夜のお城に忍び込む日が来るなんてなぁ」
「我は夜の方が活動しやすいな」
「マリナード王女からレーダーをお借りした。どう使うんだ?」
思い思いの言葉を口にしながら集まる面々。ちゃんと六人いるな?
「しかし、ソウタを道化師にしておかなくて本当に良かったのか?」
何故このタイミングで不安を煽るのか。間違いなくこのハゲはライアンだな!
賢者レーダーを使って森を進む。ご丁寧に夜バージョンの遠吠えとか虫の声とかが森に入ったとたんに聞こえてきた。誰が流してるのこれ?
「しかし、あのゴリラが本当に重要な奴だったとはなぁ」
だから言っただろ?
「でも、生物を目印にして大丈夫かい? 入り口から離れてたら分からないんじゃ」
「ヒカリゴケの光が漏れているから大丈夫であろう」
雄峰の疑問にアイちゃんが答えた。うん、全く安心できないな!
アイちゃんには悪いが、方向音痴の子が言う大丈夫ほど当てにならないものは無いんだ、すまない。
「心配しても仕方がないだろう。まずは賢者の所へ行くぞ」
仕切り屋のハゲ。レーダーの光が反射して頭が光ってるけど、兜はどうした?
「あれ、兜は?」
「ああ、被っていると頭が蒸れて毛根に悪いと聞いたのでな」
手遅れだよ!!
気にしてたのか……ごめんな心の中でハゲハゲ言って。たぶんこれからも言うけど、心の中で。
「賢者がいたぞ!」
ゴリラさんちーっす! ウホッ!
「よくぞここまでやって来たな、ソウタよ」
えっ……?
シャベッタァァァァァ!!
突然喋り出したゴリラに、みんなもさすがに驚いた様子だ。呑気なティラミスちゃんやアイちゃんすら目を見開いている。
「驚くのも無理はない。時が来なければ話すことが出来ない決まりだったのでな」
まあお約束ってやつだけど、お約束ついでに聞いてみようかな。
「なんでその時が今なの?」
「お主はこの城で……いや、世界各地で起こっている異変を解決する宿命を背負っているのだ。その理由はお主自身がよく知っているだろう?」
えっ、知らない。
「……この世に一人だけのピエロ。やはり理由があってのことだったのですね」
雄峰は理解したみたいだ。後で聞こう。
「この先に進めば、探しているものが見つかるだろう。これを持っていくがよい」
なんだか分からないけど金色に輝くバナナを貰った。ウホウホ。
「何それ! 美味しいの?」
いや、これは食べられないと思うよティラミスちゃん。
何はともあれ行こうか、ハゲ王(※ペスカトーレ五世です!)が見つかるみたいだし。俺達は、城の脱出口を逆に入って行った。
ヒカリゴケに照らされ、ぼんやりと光る通路を進む。
「ここは一本道だからな! 迷う心配はないぞ!」
嬉しそうに言ってるけど逆走とかしない? 大丈夫?
しばらく進むと城の中に出た。こっちは暗い……のはいいんだけど、なんか恐ろし気な低音の音楽が聞こえてくるんだけど? ラスダンに侵入したみたいな空気出すのやめて?
「キャーーーーー!!」
ヒエッ!? なんか叫び声が聞こえてきた。マリナードじゃないよな……?
「知ってる声じゃないよ」
俺の考えを察したティラミスちゃんが、真面目な口調で言った。さすがに緊張している。しかし、今のは誰の声だ? まさかこれも環境音とか言うんじゃないだろうな?
「どうやら王様はただ隠れているわけではないみたいだね。マリネラ王女が何をしているのかわからないが、穏便には済みそうにないよ」
何だこの展開。なんでこんなホラーな感じになってるの?
くそう、ただの気ままな旅行で良かったのに、どうしてこうなった?
こんなことなら……
こんなことなら、調子に乗らないでチート能力貰っておけばよかったあああ!