こうなっては仕方ありません。
かくなる上はプランツーです。
「陛下、陛下」
「なんだ?」
私は注目がグレーン殿下に集まっているうちにコソッと陛下に耳打ちしました。
「モルト殿下は婚約者がまだ未定だったと記憶しておりますが」
「うむ、その点は気がかりではあるが」
一人で増殖できない以上、王太子の妃は重要な問題です。単細胞生物なら必要なかったのでしょうが。
「妃候補にフェリアメーラが手を上げるか?」
なんです、陛下? その期待のこもった目は?
私に歳下趣味はありませんよ。それに、どうせメアリに邪魔をされる未来しか見えません。
ならば……
「いえ、お相手に義妹のメアリエーラはいかがかと」
私が家から出られないのなら、メアリを追い出せばいいのです。
「姉の私が言うのも身内びいきに聞こえるかもしれませんが、あの子は見ての通り容姿は愛らしく、ですが陰謀を巡らせ実行できる胆力と行動力を併せ持つ大変に有能な娘です」
陛下にメアリをお買い得ですよと売りつける算段にでました。私が嫁げないなら義妹を嫁がせれば良いのです。
我ながらナイスアイディアです。
義妹を生け贄にしようなどと……我ながらなんとも恐ろしい所業です。
まさに悪魔的発想!!!
「メアリエーラか……」
ですが、陛下は顔をしかめてしまわれました。
「何です、 私の義妹に不満でもあるとでも言うのですか!? あれほど王妃にふさわしい娘はいませんよ!」
「なぜそんなに必死に推す!?」
「国を思えばこそです。将来の王妃の選定と同義なればモルト殿下の妃選びは国家の
陛下が嘘をつけとでも言いたそうな
可愛がっている大切な義妹の犠牲さえ厭わない私の愛国心を疑うなんて!
「事故物件を押し付けているようにしか思えんが」
「それはあんまりな言いよう」
なんて心無いお言葉!
陛下、酷いです!!
「可愛い姪をお信じにならないのですか伯父様」
えぇ、えぇ、そうなのです。実は国王陛下と私は伯父と姪の関係なのです。
「だからだろうが!」
可愛い姪に怒鳴らないでください。
「あれの母親が誰だと思っている」
メアリのですか?
そんなの聞くまでもないでしょう。
「私のお義母様ですが何か?」
「とぼけるな。そんな事は聞いとらん!」
「ちっ!」
「舌打ちしたな。いま舌打ちしたよな。国王に向かって舌打ちしたよな!」
そんな程度でキレないでください。まったく、キレやすい中年オヤジですね。
「お前の母は私の妹だぞ。メアリエーラの母コニーが何をしていたか知らんわけがなかろう!」
先にも述べましたように、私の母ミニーアンは元王女であり国王陛下の妹でした。
ですから、王女時代のお母様を追っかけしていたお義母様について陛下がご存じであっても不思議はありません。
「と言うより、私はコニーの被害者だ」
いったいお義母様は何をされたのですか!?
「
「国王になれて良かったではありませんか」
王位に早くつけてバンバンザイ。
「良いわけあるか!!!」
まだロクに引き継ぎがされていない状態で国政を丸投げされた私の苦労がわかるか?って逆ギレされても知りませんがな。
「メアリエーラはその若い頃のコニーにそっくりだ」
「やはり血は争えませんわね」
何を思い出したのでしょうか、伯父様がブルリと体を震わせました。いったいお義母様は何をされたのでしょう?
「
それでお父様は私を助けてくれなかったのですね。
「みなを油断させ
「死んでもごめんだ!」
「これほどの好条件なのに何が不満だとおっしゃるのですか」
「ミニーアンもお前も正当派の才色兼備だが、コニーとメアリエーラは可愛い顔して腹黒い策謀家だぞ」
「それのどこに問題が?」
それでこそ一国の王妃に相応しいじゃないですか。
「ただでさえ公務で疲れているのに家庭でごりごり精神削られてたまるか!」
まったく国の最高権力者のくせに贅沢なことを。
「お前が家でコニー母娘から何をされているか知らないとでも思ったか」
「知っていて可愛い姪をお見捨てになられたのですか!?」
シット! 伯父様は最初から全て知ってたんかい!
「誰でも自分の身が可愛いものだ」
「ひとでなしぃぃぃ!」
「何のお話をされているんですの?」
「ひぃぃぃぃぃ!!」
私と伯父様の白熱した
「さあ、お義姉様。こんなところはもう用済みです。早く私たちの
「いぃやぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
「まあ、頑張って生きろ」
呆れ顔で心のこもっていないエールを贈る伯父様……覚えてなさいよ!