俺は175センチ。だいたいの子は俺より背が低いけど、さらに低い子が好みだ。……でも、小学生とかは守備範囲外だ。
誤解が無いように、これだけは言っておきたい。俺は決してロリコンではない!
「ちなみに、お粥はどうだった?」
「朝に残りも食べたけど美味かった。念のため電子レンジで温めたけど、すげえ美味かった」
「残ってたのまで食べたのかよ! そんな誰が作ったのか分からんものよく食えるな!」
性格だろうか。既に食べたあとがあったし、腹も減ってた。置きっぱなしだとお粥の米がふやけきるとも思ったのでもったいないと思ったのもあった。
「他に幽霊の情報はないのか?」
「うーーーん……、腕にホクロがあった。特徴的な形のホクロ。ちょっとハート形っぽいやつ」
「ハート形のホクロがある幽霊……。どういう状況で腕のホクロを見たんだよ」
俺自身もう分からなくなっている。少しずつ思い出しながら答えた。
「何度か意識を取り戻したんだ。目を開けると目の前にユーレイの腕があって、そこにホクロがあった」
「目を覚ましたら幽霊の腕があるとかちょっとしたトラウマ体験だな」
「ああ……白かった。色白っていうか、漂白剤の白だった」
オガショウは部屋の中を見渡していた。
「この部屋で布団で寝ているやつに腕が見えるとか、四つん這いになって歩いていたとしか考えられない」
そうだ、考えてみれば俺は畳の床に布団を敷いて寝ている。そして、布団に寝転がった俺が軽く目を開けて見える高さなんて60センチから80センチくらいのもの。その高さに腕があったのだから、四つん這いということになる。
「本家の貞子も後の方の映画では四つん這いで歩いていたから、あり得ないとは言えないんだろうけど……」
「オガショウの話を聞いたら、思っていた以上に怖い話だった……」
ここでオガショウが立ち上がった。俺は無意識にやつを見上げた。
「結論が出た」
俺を見て決め顔で言った。これはやつが何か閃いたときによく言うフレーズだ。
「幽霊情報が分かったか。教えてくれ」
「可能性は1つ。まず、幽霊はカギがかかった部屋に入り込んでいることから人間ではない」
オガショウは玄関のドアを指さしていた。たしかに。その通りだ。窓も閉めていたし、風呂場は窓がほとんど開かない。引っ張ると倒れて来るタイプの窓で最大で10センチほどしか開かない。トイレにはそもそも窓がない。カギを持っていない人間はこの部屋に入ってくることはできないのは明らかだった。
「風呂はうち返し窓だし、トイレには窓が無い。部屋の窓は開いているのを見たことが無い。お前が換気とか考えるとは思えない。今カギがかかってるんだから、その時もカギがかかっていただろう」
言っていることは当たっているが、当たっているだけになんかムカつくな。
「お粥はお前の一人用の土鍋だし、茶碗もそうだ。考えられるのは、自分で作ったことくらいだ。しかも、熱が出ていたことから意識が朦朧としていた」
俺があの状態で無意識に土鍋を引っ張り出してきて、お粥を作った……? 俺からしたら考えられないんだけど、そうなのか……?
「いや、俺はあんなに美味しいお粥を作れないぞ?」
「それは無意識の功績というか、偶然の産物ということはないか?」
そう言われると、そんな気がしてくるから不思議だ。だいたいマンガやアニメのミステリ物は状況がしっかりしていることが多い。でも、現実ではそんなことがあるだろうか。俺の今回みたいに風邪を引いて意識が朦朧としているときに、そのときのことを明確に覚えているものだろうか……?
まあ、物語としては、その辺の大前提がしっかりしていないと話が進まない。だけど、これは現実だ。覚えていないものは覚えていない。どこに仕舞ったか覚えていない一人用の土鍋を引っ張り出して、お粥を作るだろうか。
「いや、やっぱり違う。あと、もう一つ思い出した」
「言ってみろ」
そうなのだ。俺はもう一つ思い出した。大前提をぶち壊すような事柄を。
「このアパートから向かいのマンションが見えるだろう?」
「ああ」
「翌日はユーレイがあのマンションの4階の外廊下に立っていた」
「こわっ! それを先に言えよ!」
このアパートは坂の上に建てられている。窓から見えるのは向かいのマンションとは3階と4階の間と同じくらいの高さだ。その4階の外廊下にユーレイと思わしき黒い影が立っていたのだ。
そこからこちらを黙ってみていた。あまりのことに俺はそのまま倒れたらしかった。それが昨日。そのままずっと意識を失っていたと思う。そして、目を覚ましたのが今朝の6時半ごろ。そんな時間にオガショウに電話してもいいのか、0.1ミリ秒考えてみたが緊急事態なので電話した次第。
「もう少し長く熟考してから電話してもよかったな」
もっともだな。俺も気が動転していたんだろう。朝の6時半に呼びつけても何も分からない。別に昼前に呼んでも問題なかっただろう。