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第4話:幽霊は実在したのか

「ユーレイからメールが届くようになった」

「絶対、実在してるーーーっ! なにそれ、こわっ! 新しい展開、こわっ!」


 うちでオガショウと話していた。うちは大学にすごく近いので、授業があるときはこいつもちょくちょくうちに来てる。


 それは夏休みでもそんなに変わらない。暇だから、という理由でちょくちょくご飯を一緒に食べたりしているのだ。


 それでご飯を食べに来たオガショウに話したんだ。


 オガショウと話をした翌日からメールが届くようになったこと。多分、ユーレイからだ。今どきメール。


「どんな内容?」


 食後のコーヒーを飲みながらやつが訊いた。


 怖いと言いながらも内容は気になるみたいだ。聞いたらもっと怖い気もするんだけど。


「なんか、会話にならない。一方的に日常を送ってくる感じだな」

「例えば?」


 俺はユーレイからのメールをオガショウに見せることにした。



『咳は止まったみたいですね。風邪の具合どうですか?』



「やっぱり、幽霊は存在したのか。でも、メールって……。最近の幽霊はメール送ってくるのか!?」

「これに対して俺が送ったメールがこれ」



『看病してくれた人ですか? その節はありがとうございました。ぜひお礼させていただきたいのですが』



「誰か近所の人って前提でお礼を言ったわけね」

「そうそう。それで返ってきたメールがこれ。ちなみに、2時間後」



『今度はお掃除に伺います』



「なんだよ。微妙に会話がズレてないか?」

「そうなんだよ。そして、俺が返信する前に次のメールが来た」



『美味しいご飯が作れるようになりました』



「……? 幽霊はコミュ症か? 言葉のキャッチボールはできてないな」

「大暴投なんだよ。そこら中に俺の投げたボールが転がったまま放置されてる」


 他にも見せたけど、内容的には「外が暑い」とか「今日は晴れた」とか天気系の日常情報、「ご飯を作った」とか「豚肉が安かった」みたいな家事情報とか……。


「幽霊がストーカーだと考えると随分コミュ症だな」

「そこで考えたんだ。これはポルターガイストの一種なのでは……と」


 オガショウがピンときていない表情をしていた。


「幽霊はテレビのスイッチを入れたりできるよな」

「まあ、実際はどうか分からんけど、テレビとかの幽霊はな」


 ここで同意が取れてよかった。俺の説はここが前提だったから。


「そのテレビで番組のセリフをつなぎ合わせて、伝えたいことを言わせたりすることがあるよな?」

「まあ、そんなのを見たことがあるかもな」

「アレのメール版ってことはないかな?」

「ちょっと待て。そこが分からない」


 やっぱダメだったか。


「スマホとかパソコンのキーボードを押してメールを送ってくる……そんなイメージなんたが……」

「……たしかに、昔死んだ人はテレビとか知らんかっただろう。最近死んだ人はテレビってもんを知ってる。だから、操作できる」


 お? 理解してくれた!?


「もっと最近の幽霊なら、普通にメールを送ってくるだろうって?」

「そう! それだ! それが言いたかった!」


 オガショウは腕を組んで考えていた。


「確かに、ラップ音とか、カギがかかったこの家に好きなときに入り込めたりするんだもんな……」


 そう言いながら、オガショウは部屋を見渡した。


「幽霊は単にストーカーってことはないか!? 押し入れの中とかに入ってないか!?」

「あ、そっちは……」


 俺の静止を聞かず襖を開けた。


「はぁ!?」


 オガショウがめちゃくちゃ驚いてた。


「そっちも部屋があるんだよ」


 元々ここはルームシェアするつもりで借りた部屋だった。だから、隣の部屋がある。でも、俺の部屋って認識じゃないから全く使っていないのだ。


「空いてるのか」

「そう。無駄空間になってる。去年まで一緒に住んでるやつがいたんだけど、突然『俺は解体屋になる』って言って大学やめて実家に帰ってしまって……」


なんだそりゃ、って顔をしていたが、それよりも幽霊とばかりにオガショウは押し入れの方に興味を示したみたいだった。


「意外とこの部屋の押し入れとかに幽霊が潜んでないか!?」


 オガショウが恐ろしいことを言って空室の方の押し入れを開けた。しかし、そこには何もない。出て行った住人は完全に荷物を引き上げて宮崎に帰って行ってしまったのだから。ちなみに、大学も辞めてしまっている。念のために言っておくと、男だからそいつが「ユーレイ」である可能性はない。背は俺よりも高かったので、大学を辞めて性転換したとかも有り得ない。


「……家賃大変だな」


 空の室内に「ユーレイ」が潜んでいないことを確認して諦めたみたいだ。押し入れの天井の板が外れないかまで確認していたから。こちらも外れなかったので、天井裏に「ユーレイ」がいないことが確定した。


「そうなんだよ。引越ししようにも引越し費用がなくて……」


 切実なんだよ。


「引越しを検討するならうちが空いてるから」

「俺は男と住むのはしんどいわ」

「まあ、そう言うな」


 冗談はこれくらいにして。オガショウが真面目な顔をして佇まいを直した。


「それにしても幽霊は実在した。しかし、なんのためにお前の部屋に出るのか」

「たしかに……」

「探すか。幽霊を」


 ユーレイを探す!


 俺にはなかった発想だった。俺達は、「ユーレイ」を探し始めることにした。


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