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第12話:先輩はユーレイではない

「多分、『ユーレイ』の正体は、俺の幼馴染です」

「この前言ってた『大穴』のやつだな!?」


都城(みやこのじょう)とあ。俺の幼馴染の名前だ。


「西戸崎、お前がその幼馴染が幽霊の正体だと思う理由を言ってみろ」

「分かった」


俺はオガショウと先輩に俺の幼馴染のことを話した。


実家では隣に住んでた。俺の実家まで車では独り暮らしの家から電車で約1時間。俺は通学に片道1時間かかるのが嫌で独り暮らしを始めた。


つまり、頑張れば通学できる距離。俺は頑張れなかった。だって、1日2時間電車に乗ってるってことは、人生の1/12を電車の中で過ごすってことだろ!


「待て待て! お前の通学時間のことはいい。幼馴染の話をしろ」

「おっと、すまん。ここが大事なとこなんだ」


続きを話し始めた。


「幼馴染はもの頃のついたときから隣に住んでたんだ。幼稚園のときに『将来はともくんとケッコンするー』って言われたんだ……」

「なるほど、それで?」

「……」


みんな静かになった。なに?


「それだけだけど?」

「待て待て。小・中・高の間のエピソードとかあるだろ! 6・3・3で12年分の!」

「……ないな。ずっと気にはなってたけど、小学校に上がった頃からほとんど話さなくなったし」


でも、幼馴染なんだから、当たり前に未だに好きだよな? そして、あるとき突然あのときの約束を果たそうとか言って俺の前に現れるんだ。


「きっと、俺を追って近所に引っ越してきたんだろ」


昼も夜も近くにいるみたいだし、通ってるとは思えないかならな。


「違うだろ、それは。それはもう、他人! 全くの他人だよ! ある日突然現れてあの日の約束を果たそうとか言って結婚しないから!」


オガショウが俺の思考を読んだ!?


「ちょっと待て。次がもうそんなのしかいなかったら、幽霊候補はもういないってことか!?」

「小学校のときの隣の席の女子はかなり仲良くなったけどなぁ」

「うわー! もうそんな『思い出』しかいないのかよ!」


そうは言っても、そんなに次々彼女候補なんているわけない。仮にいるならとっくに彼女になってるし。


「念のために訊きますけど、先輩は西戸崎のことを特別好きってことはないんですよね? とりわけ、こいつの家に行って病気の看病とかしてないですよね?」


オガショウがダメ押しで訊いた。なんかそんなにしっかり聞いたら、ゼロか100かって話になってわずかな望みも塵と化すじゃないか!


「うーん、全く……それはもう、全然に可能性がないくらいに、気持ちいいくらいにその気はないが……」


マリオなら3機は死んだぞ!? スペランカーなら10年機は死んてる!


「でも、まあ……今の話しを聞いて良い会社に勤めるなら結婚相手として興味が湧いてきたぞ?」

「めちゃくちゃATMにしようとしてるじゃないですか!」


先輩が満面の笑顔だ。俺は完全に揶揄われている。


「先輩、お騒がせしました。この非モテ並み童貞はこっちで回収していきます」

「ひどいなっ! それはもう、単なる悪口だから!」


俺は引きずられるように先輩の前から連れて行かれた。


「じゃーな! 西戸崎くん!」


先輩に見送られた。


「そうだ、小川くん! 幽霊騒動が片付いてもしも西戸崎くんが一人だったらまた私のところに連れてきてくれないか」

「……」


少しオガショウが考えてから元気よく答えた。


「分かりました!」


オガショウは元気よく答えた。おい! 


○●○


「よし、幽霊を捕まえよう!」

「……は?」


俺とオガショウは再び俺宅に戻ってきた。


「待ってくれ。先輩がユーレイじゃなかったのは理解した。じゃあ、次は最後の『幼馴染』の調査だろう!」

「いいんだ。もう、いいんだ。西戸崎、俺にはわかったんだよ」


なんかオガショウが仏の顔をして言った。俺は畳の床にどっしりと座って話しを聞くことにした。


「オガショウはユーレイは幼馴染じゃないって思ってるんだな? しかも、かなり明確に」

「そうだな。かなり確実だ」


オガショウも床に座った。


「お前は『アレ』だな。その幼馴染の可能性もないだろう……」

「アレって?」

「そう……アレだ。詳しくは俺の口からは……」


理由は「アレ」ってことにされてしまった。「アレ」とは「絶望的にモテない」ってことだろう……。


「要は、幽霊の正体が分かればいいんだろ?」


オガショウは自信ありげに俺にユーレイ確保プランを提案してきた。


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