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第2話 覚醒

あのクソみたいな電子音が——


また聞こえた!


しかも、今度はやけにハッキリと!


徹はイライラしながら脂ぎった髪をかきむしり、落ち着きなく目を泳がせて周囲を見渡したが、当然そこには誰もいない。


強く頭を振り、あの幻聴を意識の外へと追いやろうとする。


何が“ポイント”だ、“ルーレット”だ。そんなもので今日のレポートは完成しない。すべて終わりだ。


ファミリーマートのオレンジ色の照明が、虚ろな温かさを辺りに照らしていた。

店内には欠伸をしている深夜勤務の店員がひとり。


徹は電源コンセントのある隅の二人がけテーブルに腰を下ろし、ノートパソコン、レンガのように分厚いファイル、安物の缶コーヒー数本、そしてパサパサのコンビニおにぎりをどさっと並べた。


ノートPCを開くと、画面の光が死人のように青白い徹の顔を映し出す。

冷え切ったブラックコーヒーを一気に飲み干し、幻聴とあの冷ややかな顔——小野理恵の顔——を一緒に流し込もうとする。

無理やり視線をデータの乱れた画面に集中させた。


タイピングと画面上のコードが時間をどんどん食っていく。


冷たいカフェインを体に流し込んでも頭は冴えず、むしろ胃の奥に冷たい手を突っ込まれたようにグラグラと不快感が湧く。


徹は痛むこめかみを揉みながら、矛盾だらけのエラー警告にイラつきを募らせた。


——くそっ、ダメだ……!


そう思った時、彼の指が無意識にマウスパッドを滑り、いくつかの無意味なデータ群をドラッグした。


《宿主の高集中状態を検出。「努力」特性に適合中……

Aランク対象:小野理恵の好感度ポイント+5点……

報酬獲得:バフ【活力増進(24時間限定)】》


ビクンッ!


徹の全身に電流のような衝撃が走った!


重く曇っていた脳が、まるで冷たい濡れタオルで拭き取られたかのように一気に鮮明になり、

視界に映るデータの羅列がシャープに輪郭を持ち始める!

肩の重さ、胃のむかつき、鉛のように落ちていた瞼——

あらゆる疲労感が、波が引くように一気に消えた!


微弱ながらも透き通った力の感覚が、枯れ果てていた血管にすうっと流れ込むように感じられる。


幻聴? 報酬? 活力増進?

あのクソ電子音のメッセージと、さっき適当に動かしたデータが……

この理屈じゃ説明できない異常な覚醒感と操作感が……?


徹の心臓が胸の中で激しく跳ねる。喉がカラカラに乾いていく。


思わず店内をチラッと見回す。レジの店員は眠そうにうつらうつらしていた。


深く息を吸って、目を閉じる。


——そして開いた時、画面に映る複雑な数式たちは、まるで解くために整列したように道筋が見えた。


彼は冷たくて不快だった缶コーヒーをはじき飛ばすと、

指をキーボードに叩きつけるように乗せた——その打鍵はほとんど狂気じみた速さだった!


カタカタカタカタカタ!!


カーソルが画面上で凄まじい勢いで点滅する!


——あのシステム……本物だ!

あのバカげた「好感度システム」、まさかの本物だったんだ!!


午前四時三十分。

レポートの最後の修正を終えた徹は、保存ボタンを押し、プリントコマンドを叩いた。


店の片隅に置かれた古びたプリンターが、ギィィ……カタカタ……とうめき声のような音を立て始める。


徹はノートPCを閉じ、熱気を残すそれを抱えたまま、ガチガチのプラスチック椅子に深くもたれかかる。


窓の外では、街の端の空にうっすらと灰色が差し込み始めていた。


——新しい一日が、三十一日連続で休まず動き続けた彼の身体に、また容赦なく訪れようとしていた。


プリンターの音が止まった。


徹は立ち上がり、レジカウンターへ歩く。

印刷物は雑に受け取り棚に置かれていた。


その紙の端に触れた瞬間——


《レポートの内容が、Aランク対象:小野理恵の潜在的な期待基準に適合と判定。

好感度ポイント+10点。現在の好感度ポイント残高:145点。》


徹の手に握られた紙がギュッとしなる。

その指先は、真っ白になるほど力が入っていた。

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