建築デザイン論 ~瓜二つの家~ (第1話)
その人を見たのは1週間前の、そう、芸犯のお茶うけにと作った抹茶プリンを落とさないように、そ〜っと、運んでいたときだった。
芸犯部室の前にいた女性。依頼人かな?いや、願いを込めて新入部員ということにしよう。
「あの〜…」と声をかけると、その女性は肩をふるふると震わせ走り去ってしまった。
そのことを大学院前期博士課程に入学した環円先輩と石井拓哉先輩、そして部員でもなく更には単位不足で卒業できなかった飛鳥先輩に話した。
「その女性、どんな人だった?」
拓哉先輩が前のめりに聞いてきた。
「え?ああ、え〜と……」私はいっとき見た女性の特徴を思い出し拓哉先輩に伝える。すると「分かった」と言うと拓哉先輩は「ちょっとまってて」と言い、部室を出ていった。
15分ぐらいすると、ガタガタとドアが震えると、ガチャッと音を立ててドアが開き、拓哉先輩が一人の女性を連れてきていた。
「この人でしょ?ミホちゃん?」
「この人です!」私は判断した。
※※※
「わ、私、建築学科3年の湯水灯といいます」湯水先輩はそう述べながら抹茶プリンを食べた。「ウマ!」と言葉をこぼした。
「ミホちゃんはスイーツを作らせたら右に出るものは居ないからね。今度教わったらいいよ」
「ほんと、教えてほしいです」
ホホホ。
「なんかねー、ミホちゃんが灯ちゃんのことを目撃したと言っているんだけど〜……」
湯水先輩は沈んだ表情になった。何かしらありそうだ。
「実は、ストーカーに遭ってるようなんです」そう前置きをして語り始めた。
(続く)