建築デザイン論 ~瓜二つの家~ (第4話)
「湯水先輩が……ストーカー?」
一瞬、部室内が静まり返った。
「ははは、円、何いってんだよ。灯ちゃんがストーカーなわけないじゃないか。第一、証拠はあるのか?」拓哉先輩が問い詰める。
円先輩は目をつむった。「第一にあやふやなんだよ。家族4人で暮らしてるのに晩ご飯は1人でホットプレートを使って焼きそば? それだけじゃない。ごみ捨ての曜日までしっかりと覚えている。本当は一人暮らしなんだろ? そして例の製図は志村くんが作ったものだ」
「え? でも、どうやって……」と言ったところで気づいた。「合鍵ですか?」
「そうだ。おそらくいつも付け狙っていたんだろう。だから、志村くんが鍵を落としたことにも気がついた。その日のうちに合鍵を作り、本物は学生部に落とし物として届けたんだ」
「そして深夜に志村先輩のアパートに忍び込んで、パソコン内に保存されていた製図をコピーし、本物となのった……」
円先輩は静かに頷く。
私は許せないと思った。『絵画Ⅰ』で私は私の絵をコピーされた。そして、『本物』として提出された私は『偽物』の烙印を押されそうになったのだ。
「ふふふ。バレちゃった。あと少しだったのになぁ」
「どうしてこんなことを?」詰め寄る私。
「とうして? 志村くんが私に関心がないことが分かったからよ。だから、少しでも私をーー」
「ふざけないでください!」
円先輩が私の肩に手を置いた。
「あんたのやったことは卑劣だ。合鍵の無断複製、住居侵入、製図コピーの著作権法違反、ストーカー規制法違反……掘り出したらきりがないだろう。少なくても退学は免れない」
湯水灯は肩を落とした。
(終)