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第24話絵画Ⅱ~三つの季節~(2)

絵画Ⅱ~三つの季節~(2)

いままつ



「これから油絵学科必修科目の『絵画Ⅱ』の講義及び演習を始めます」そう、鏡教授は言った。一気に周囲に緊張が走る。1年次の『絵画Ⅰ』と同じく必修科目。今回はどんな課題が出されるのか、みなドキドキしているのが手に取るように分かった。

「みなさん、そんなにかしこまらないでください。ですが、1年次の『絵画Ⅰ』をみなさんは履修しているはずです。今回の授業は、その発展形だと思ってもらって構いません」

発展系?

とある大きなリボンが特徴の女子が「はーい、先生。発展形とはどういう意味ですか?」と、質問した。

「そうですね。あえて言えば進化です」

進化? もう私の頭の中はぐちゃぐちゃだ。

「はーい。もっとわかりやすくお願いします」

「そうですね、みなさんは高校の地理歴史やこの大学の教養科目『世界史』を履修したときに、ホモ・サピエンスやネアンデルタール人といった言葉を聞いた覚えがあるはずです。彼らは私たち人間の祖先であると言われています。でも、本当にそうなのでしょうか?」

「どういう意味ですか?」今度は平坦な顔の男子が訊いた。

「ホモ・サピエンスもネアンデルタール人も現代の『人間』に近いと言うだけで、確実に『人間の祖先』という明確な証拠はみつかっていないということです」

しーんと、一瞬だが間が空いた。

「でも、みなさんの絵画の技量は、ある意味で進化し続けることができます。それは『文化』としての『美術』という武器を手にしているからです。諦めなければですが」

う〜ん、先生の美術哲学を聞かされてるのだが、分かるようで、分からないような。

話は進む。

「『絵画Ⅰ』では個別にテーマを設定して作品を作ったはずです。この『絵画Ⅱ』では、テーマを絞ります。そうですね、『日本の四季』としましょうか。提出期限は3ヶ月後とします」

ざわっとした。日本の四季を3ヶ月で描く。これは居残り製作決定である。

((続)


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