絵画Ⅱ~三つの季節~(3)
いままつ
「と、いうわけで、今、困ってるんです」と、何故か由里と飛鳥先輩がいつの間にか加わっていた。
由里は高校からの友達であり、同じ油絵学科に属している。
飛鳥先輩は『絵画Ⅱ』の前段階の『絵画Ⅰ』の講義で一悶着あったのだが、それ以後は良き理解者&友人として関係を築いている。ただ一つ思うのは、飛鳥先輩は単位を落としまくってしまったため留年してしまっているのだが、本人から「ピンチ!」や「大変!」といったアクションは見聞きされなかった。厳しい目から言うと、彼女がこの大学を無事に卒業する姿が、イマイチ想像できない。
本当ならば風間カンナもいてもいいのだが、彼女は彫刻科。絵画Ⅱは履修していない。
「日本の四季と言ったら『花鳥風月』ですかね?」由里が言う。
「シンプルに『春夏秋冬』かもよ」
どちらも可能性としてあり得る。
円先輩が「提出する枚数は決まっているのか?」と、間食のくず餅を食べながら訊いてきた。
私は「そのくず餅作るのにどれだけ苦労したと思ってるねん‼」と思いつつも怒を鞘に戻し、「決まってません。指定あったっけ?」
「ううん。なかった」
「なかった」
まあ、くず餅だから大目に見て「ないようです」とまとめた。「でも流石に1枚のキャンパスを4等分して『春夏秋冬』を描くのには無茶がありますよね」
しかし、円先輩は腕組みをした。何か妙案でもあるのだろうか?
「ま、円先輩?」
円先輩は腕組みを解いた。
「喜べ。お前たちの画力次第だが、居残りしないで作品が描けるぞ」
私は驚いた。「それは本当ですか?」
「まあ、これからやって来るヤツの協力が必要不可欠なんだがな」
すると、ドタドタと足音がしたと思った途端、部室のドアが勢いよく開けられた。
「もうお腹ペコペコだよ~」というのは誰であろう石井拓哉先輩だった。
「暑いのでくず餅を食べてください」
「くず餅? 作るの大変だったでしょう」
「いえ、大福に比べたらこれくらい」
「ウマ!」
そうそう。讃えなさい。
((続)