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第26話絵画Ⅱ~三つの季節~(4)

絵画Ⅱ~三つの季節~(4)

いままつ



「で、拓哉先輩がどのように関与するんですか?」

すると円先輩は拓哉先輩に「春と秋と冬の写真を貸してくれ」と言った。

春と秋と冬の写真?

「オッケー」と言うと、拓哉先輩が部室の書棚の一部から、全部で3冊のファイルを取り出した。それぞれ『春』『秋』『冬』と背表紙に書かれていた。

「円先輩、『春夏秋冬』にするには『夏』が足りないです」由里がそう言う。

「『花鳥風月』ですか?」飛鳥先輩が言う。

「う〜ん、でも、『花鳥風月』なら四季になるのでは? 何故に『夏』がないのですか?」

「いや、『夏』ても『秋』でも、そこはどうでもいい。問題は拓哉の写真の腕にかかっている」

ん? 拓哉先輩の写真の腕?

「それはどういう……?」

円先輩がポス、と辞書らしき厚手の本を私の頭に乗せた。それは国語辞典だった。

「お前ら高校の国語で四字熟語は習っても、三文字熟語は習ってないだろ」

「三文字熟語ってなに?」という女子のヒソヒソ声が聞こえた。

「まあ、国語については俺も専門外だが、知っていて損はない。なぜならーー」といいながら国語辞典を開いた。

私たちはそこに載っていた言葉に驚いた。


※※※


3ヶ月後の絵画Ⅱの講義。

鏡教授「では、3か月前に言っていた通り『日本の四季』をテーマにした作品の提出をお願いします」

私たちは作品を鏡教授の下へ持っていく。

「あら、これは『雪月花』ですね」

さすがは教授。直ぐにバレた。

「はい。『春夏秋冬』や『花鳥風月』はみんな書くと思うので、視点を変えて『雪月花』にしました」とは言うが、正直、円先輩に国語辞典に『雪月花』という言葉があることを知らされるまで、知らなかった言葉である。

1枚のキャンバスに『花』、『月』、『雪』が描かれている。これらは拓哉先輩の撮りためていた写真をもとにして描かれている。様々なアングルで撮られた写真は、選ぶのに悩むぐらいの数があった。

第一、今の季節は夏。雪など降ってないし、花も3日あれば萎びてしまう猛暑だ。唯一、月だけが煌々と空に輝いていたが、月を待っていたら居残りをしないといけない。それは色んな意味で難しかった。

拓哉先輩が色んな写真をストックしていてくれて助かった。

鏡教授は「生き生きしてますね花も月も雪も。まるでその季節にいるようです。ですが、写真を見て描くのであれば、もっと工夫をこらしてください」

「はーい……」まあ、及第点は貰えたので良しとしよう。

((続)


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