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第32話装飾美術 ~天使の泪~(5)

装飾美術 ~天使の泪~(5)

いままつ


「分かりました!」

そう開口一番に言うと、この場にいた全員が息を呑んだ。

「何かおかしいと思ったんですよ。オーナー、その杖を調べてもよろしいですね?」

「いや、これは――」

「いいですね?」そう言うと私はオーナーの杖を奪い取り床をついた。

カツン、カシャン

カツン、カシャン……

「このカシャンという音は何ですか?」

「そ、それは……」

私は杖の柄をくるくる回し、取り外した。ひっくり返すと、中から二つのイヤリングが出てきた。『天使の泪』だ。

「これはどういうことか、説明できますよね?」

オーナーは口を噤んだ。

「言わないのなら、俺が言おう」円先輩が一歩前に出た。

「和泉さんの話だと『天使の泪』には五億の保険金がかけられていた。しかし、この保険金は本来の持ち主に支払われるものだ。だから、オーナーは個別に『天使の泪』に保険金をかけたんだ。これにより、『天使の泪』そのものと保険金の両方を手に入れられる……オーナーにとって、これ以上ないほど甘い蜜だったのだろう」

オーナーはその場に崩れた。

(続)


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