装飾美術 ~天使の泪~(5)
いままつ
「分かりました!」
そう開口一番に言うと、この場にいた全員が息を呑んだ。
「何かおかしいと思ったんですよ。オーナー、その杖を調べてもよろしいですね?」
「いや、これは――」
「いいですね?」そう言うと私はオーナーの杖を奪い取り床をついた。
カツン、カシャン
カツン、カシャン……
「このカシャンという音は何ですか?」
「そ、それは……」
私は杖の柄をくるくる回し、取り外した。ひっくり返すと、中から二つのイヤリングが出てきた。『天使の泪』だ。
「これはどういうことか、説明できますよね?」
オーナーは口を噤んだ。
「言わないのなら、俺が言おう」円先輩が一歩前に出た。
「和泉さんの話だと『天使の泪』には五億の保険金がかけられていた。しかし、この保険金は本来の持ち主に支払われるものだ。だから、オーナーは個別に『天使の泪』に保険金をかけたんだ。これにより、『天使の泪』そのものと保険金の両方を手に入れられる……オーナーにとって、これ以上ないほど甘い蜜だったのだろう」
オーナーはその場に崩れた。
(続)