仏教美術 ~気になる男子(あのこ)~(2)
いままつ
仏教美術の担当の多田教授が授業の終盤に「では、二週間後までに、博物館、または寺社などへ行って、どのような歴史や文化が日本に根付いていたのかをまとめたレポートを提出してください」と言って講義を締めた。
講義と関係ないけど、カンナか由里と一緒に行こうかな……。
しかし、きっと二人を誘うと「片山田くんは?」と言われる可能性が高い。
どうしようかな。一人で行こうかな。
スマホを取り出して、最寄りの博物館や寺社を調べた。ちょうど、山吹市の山吹市立博物館で仏像展をやっているようだった。
まあ、たまには一人でテクテク散歩がてら行くのもいいわね。
そう思っていると「おーい、大地字さん」唐突に廊下の奥から片山田くんが手を振って迫って来た。
「な、何? 片山田くん?」
少し声に緊張を含ませた。しかし、彼はそのことに気づいていないようだ。
「レポート出されちゃったね。一緒に博物館に行かない?」
デデデ、デート???
ししし、しかもダイレクトに!
私は否定したかった。しかし、脳裏に、あの微妙な態度の円先輩が厭にムカついた。否定するのなら否定してほしかった。カッコつけていないで、「行くな」と一言言ってほしかった。
「い、いいわよ」私のバカ。
「それじゃあね……」そう言うと片山田くんはスマホを操作した。
※※※
日曜日の午前十時。駅前の誰をモデルとしたのか分からない銅像の前で、私たちは待ち合わせをした。
へ、変じゃないよね……。
私は普段着ないスカートを身にまとってみた。スカートなど履いていたら、校舎三階にある部室までデザートを運ぶのが難しくなるからである。
ピンクを選んだのは挑戦のし過ぎだろうか? 別に「似合ってるね」などと言われたいのではない。
ただ、ただ、ただ……ただ?
自分の中でもその理由は分からなかった。ただ一つだけ言えるのは……私、『女子』になってる‼
ちゃっかり化粧もしているし……ファンデーション崩れてないよね? 今日暑いし。
慌ててコンパクトを取り出して見る。何とかセーフ。
腕時計を見る。あと五分で電車が来るのに、片山田くんは現れない。スマホを見ても連絡が来ていない。
約束の日を間違えたかな?
そんなふうに思い始めたときだ。遠くから「おーい、大地字さーん……」と、情けなく私を呼ぶ声が聞こえてきた。
振り向くと片山田くんが、へなへなとやってきた。
「片山田くん、どうしたの? 汗だらけじゃない」
「理由は後で……電車に乗ろう」
「え? うん。そうね」
私たちは急いでホームへと向かった。と、ちょうど電車がやって来た。ギリギリセーフである。
息を切らしながらソファに腰掛ける。そのとき、隣の車両にも駆け足で数人が乗り込むのが目に入った。私たちだけじゃないのだと笑いがこみ上げてくる。
「で、時間ぎりぎりだった理由は何だったの?」
すると、片山田くんは「いや、その、楽しみで、昨日の夜はぜんぜん寝れなくて――」
そう言いながらはにかむ彼が、可愛かった。
(続)